あけない
拝啓 昨日の僕
大掃除はそこそこにあまり根を詰めすぎないでくれ。まず部屋の中の物を「いる」「いらない」「保留」で分別し始めたところまでは良かった。そこから何を以て「いる」のか「いらない」のかと基準を考え始めて、どうなったかは分かるだろう。「保留」がだんだん増えていき、分別の意味がまるでなくなった。
それはまだいい。「保留」の中からまた「いる」「いらない」の分別をしていけばいいだけだから、繰り返していけばいつか仕分け終わる。実際この手紙を書いている時点でそれは終わっている。
では何が問題なのか。結論から言うと、僕は基準を間違えた。「いる」ものを「いらない」に仕分けてしまった。今だから言えることだけど、それは絶対にどう考えても「いる」。売店やコンビニには絶対に売っていないものだ。だから、今一度冷静になってほしい。分別が疎かになっていないか? 途方もない仕分け作業をやっつけ仕事にこなしていないか?
この手紙を読んだら、机の一番上の引き出しを開けてくれ。その中に入ってる紙はものすごく大切なものだ。絶対に捨てないでくれ。もし既に分別してしまっていたら、袋を開けて取り出してくれ。間に合っていることを願う。
敬具
* * *
と、書かれた紙が机の一番上の引き出しに入っていた。これは絶対にどう考えても「いらない」。
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今回の使用単語
「ぶんべつ。ばいてん。はいけい」
宮城県富谷市付近だそうです。
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