美容室は深夜営業致します 【壱】
高峠美那
第1話 失恋は次の恋をする準備
「今日も、疲れた〜」
大学を出た後、念願だったアパレル業界に就職したが、人間関係が理由で退職。昼はカフェでバイト。夜はコンビニ。こんな生活が半年以上続いていた。
ふと
「レストランか、何かのお店屋さん?」
奥を覗き見ると明かりが灯った木目の扉がリンと涼やかな音と共に開いた。
「ありがとうございました。お気をつけて」
背中に楽器を背負った客が頬を
あっ目があっちゃった!
「あっ、えっと、こんばんは。ここは…」
しどろもどろに挨拶する
『
美容室か…。 こんな時間まで営業している店もあるのかぁ。古民家を改築したような和風モダンで好みな外観。何より最近はバイトとの往復でオシャレから無縁の生活をしていたため、明るく華やいだ雰囲気に麗奈は普段からは考えられない行動をとってしまった。
「あっあの! 予約、してないけど入れますか?」
美人さんは、又ニッコリ微笑むと、扉を大きく開け麗奈を中へ招き入れた。
「「いらっしゃいませ~」」
店内は想像以上に奥行きが広く明るい雰囲気。いい感じ〜。好きだなぁ。浮上する気持ちに大声が耳に入り
「オーナー! この人またキズ増やしてる」
えっ、何?
丸メガネにバンダナを頭に巻いた男性スタッフが客を指差す。すると美人さんは客を
「又、自分で切ったの?! 痛いでしょ? 生きてるって感じるわよね! それだけの勇気があるなら、他に使いなさい! あー、まずそのボサボサ頭何とかしなきゃね。女の子だって寄って来やしないわよ! 失恋はね、次の恋をする準備なのよ。ほら前を見て!」
彼女は歌でも歌うかのようにその客を
すごい! 魔法みたい! 別人みたいに顔付きま変わってる。
「ほら、キミは今から新しい恋の準備を始めたの。胸張って、前を向いて、いっぱいドキドキして、生きてる!って感じてちょうだい!」
手首に包帯を巻いたお客は、見違えた
「初めてのお客様ね。あたしが担当してもいいかしら?」
クスクス笑いながら、着流しの和服姿の男性が、
改めて店内を見渡してみると、ハリネズミみたいに短髪をたて、長い片耳ピアスをキラキラ揺らして歩くイケメン。
床を
スタッフさんはみんな個性的……。
着流しおネエサマがニッコリ笑った。
「
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