第2話不死身編その2
不死身編その2
最初はまだ確信が持てなかった。不死身の女の噂。体を傷つけても大した傷じゃなければ傷は全くつかず、致命傷の場合は徐々に回復するらしい。
そんな普通じゃない常識から外れた人物。それが目の前にいるこの少女かもしれない。そう。まだあくまで、かもしれないだった。だが彼女の発言。これですべてを確信した。
この少女が、不死身の女だと。
目の前の少女は俺をじっと見て言ったのだ。自らを殺してくれと。こんなこと言う人間は普通はいない。仮にいたとしても間違いなく普通の人間ではないはずだ。精神的に参ってしまっているような人しかありえないと。
「えっと、ちょっと待ってくれよ。い、いきなり殺してくれなんて言われてもな……俺を犯罪者にするつもりなのか⁉︎」
万が一ということもある。この場合でいう万が一とは、彼女がもしかしたら冗談で言っただけかもしれない。またはただの聞き間違いかもしれない。と、淡い期待を持っていたのだが。
「あ、ああ。ごめんなさい。そりゃそうよね。いきなり見ず知らずの女に私を殺してなんて言われても困るよね。私もだいぶ焦っちゃってね。申し訳ないことをした。謝ろう。うん。謝ろう。ごめんなさいね! 言い方を間違えてしまったようなのよ!」
先程より声のトーンは高くなったが喋り方が安定しない。アタフタしている証拠とも言えるが。
「いや、謝る必要はない。とりあえず話を聞かせてくれ。ここじゃなんだ。あそこのファミレスにでも……」
「何を言ってるの? ファミレスなんて公共の場でそんな物騒な話できるわけないでしょ?」
なんで俺は今逆ギレされた?
「あなた非常識なんじゃないの? ファミレスなんかで殺しの話なんかできるわけないじゃない!」
「非常識なのはあんただろ! そもそもなんだよいきなり体当たりしてきて第一声が殺してくれなんて! 俺が非常識だっていうならあんたは超弩級の非常識だなっ!」
超弩級とかどこぞのヘッドホンみたいなこと言ってしまったな。
「は、はぁ⁉︎ あなた、それがレディに対して放つ発言とは思えないわね。なんでこんなやつに頼らなければならないんだか……」
「おい。俺は助けるなんてまだ一言も言ってないんだぞ? そっちの態度次第では考えてやらんでもないが、そのままの態度だというのならな! 夜な夜な路地裏に体当たりしてきて胸を押し付けるど変態だってお前のこと広めてやるからな!」
「む、胸を押し付けっ……! あ、あれはそんなつもりじゃっ……く……わかったわ。私が悪かった。ヘルプを求める人間の態度ではなかった。謝ります」
「わかればいいんだよ。とにかくここじゃ話づらいだろ? ファミレスが無理ならどこに行くんだよ?」
「私の家よ」
「は?」
こいつは何を言っているのかと思った。
「だから、私の家よ」
「えっと……正気か? いくら相談して欲しいとはいえまだ初対面だっていうのに家なんて……」
「そうね。確かに正気ではなかった」
さすがに焦りすぎだろう。いくらなんでも年頃の女の子の家に男を連れ込むなんて。友人ならともかくまだ初対面だというのに。
「ではあなたの家に行きましょう。案内してくれるかしら?」
「バカなのか?」
それじゃあ家が変わっただけで状況はなにも変わってないだろ!
「何か心配ごとでもあるの? あなたの家、両親はお父さんだけなんでしょ? それに仕事で今日は帰りが遅いんでしょ?」
「いやまあそうなんだけどさ……」
いや、待て。今この女はなんと言った? なぜ俺の家庭事情を知っている?
「ちょっと待った。それ、どこから聞いた?」
「あなたの担任からよ。あなたのことを聞いた時に教えてもらったの」
なんだ。そういうことならそうと言って欲しいものだ。まさか変なストーカーではないかと疑ってしまうところだった。
「しっかしわざわざ担任に聞いてまでして俺に会いたかったのか?」
「え? なにそれ、俺に会いたかったとかナルシストかよ」
「おい」
「謝ります」
初対面で延々と路地裏で話していても埒があかないので本当に俺の家に行くことに。
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