最終章 戦隊、神となる

第35話 揃うオーブと帰還の話

 基地に帰って来てから、まるでギャルゲーの主人公の如く仲間達との絆を深める事となった輪人。

 「言い訳を用意してもらえないと仲間と話せないって、駄目だな俺」

 基地の私室にこもり、一度一人になって考えてみる。

 太陽が沈むように、輪人も気を静めて考えていた。

 「あれだ、これは皆がくれたチャンス貰えるもんはきっちりもらうぜ」

 皆から貰って来た物を返して行く方法は、これから手探りでやって行く。

 輪人はそう決めて立ち上がった、すると彼の左手が光りを発しその手の中には小さいレッドバイソンが入ったオーブが握られていた。

 「自分のオーブは、こうして出すのか」

 自分のオーブが、ユウキブレスに吸収されたのを見た輪人は、自室を出た。

 「輪人様、大丈夫でしょうか?」

 輪人の部屋の前でジーラはおどおどしていた、自分の権限を与えて他の仲間よりもつながりを深めていた彼女には輪人の気持ちが上下しているのが感じられたからだ。

 そして、天岩戸が開くように輪人の部屋のドアが開き彼が出てきた。

 「悪い、悩んでたけど無理やり解決させた♪」

 ジーラに微笑む輪人。

 「はあああっ♪ 輪人様のその笑顔だけで、私はもう満たされました♪」

 「いや、早えよ! 俺はまだ何もしてないから、ちょっと何お腹さすってるの!」

 うっとりしながら己の腹に手を当ててさするジーラに輪人は慌てた。

 「はい、これはもう花粉をいただいたのではないかと思いまして♪」

 「俺は植物じゃないから! 戦いと結婚式とまだ段階残ってるから!」

 ジーラに待てと言う輪人。

 「もう、段階をすっ飛ばして私だけ先にゴールに至りたいです!」

 背中から白い根を生やして輪人に迫るジーラ。

 「根っこ出さない、ステイ! 悪いが、今はこれが精いっぱいだ」

 ジーラの手を取り、その甲に輪人は口づけした。

 「は、はわわ~~~っ♪」

 ジーラが頬を染めて、頭に向日葵の花をハートの形になるように咲かせた。

 そして、二人の間に光が発し小さなゴールドファルコンが入った絆のオーブが生まれた。

 「輪人様、結婚のお約束はしっかりと言質をいただきましたからね♪」

 ジーラが輪人にいたずらな笑みを向けた。

 「いや、前から言ってるっての!」

 自分の発言を思い返して恥ずかしくなる輪人。

 だが、そんな彼に迫る六つの影!

 「先輩、私もお願いします♪」

 自分の手を差し出してくる桃花。

 「輪人君、お姉ちゃんはほっぺにして欲しいな♪」

 両手を広げた待ち構える純子。

 「輪人~? ジーラにだけサービス過剰じゃない?」

 ジト目で彼を見つめるヒナミ。

 「当然、私にもしていただけますわよね♪」

 優雅に手を差し出してくるヴィクトリア。

 「私は、おでこにチューして欲しいです♪」

 笑顔で語るシルバーナ。

 「……うん、お前ら俺に対して何かセンサーでも付いてるの?」

 自分の所に現れた仲間達に唖然とする輪人。

 「当然です、私は出会った時から先輩に対するセンサーが体に生まれました!」

 桃花が力説した。

 「お姉ちゃんセンスも反応するよ♪」

 純子が笑顔で語る。

 「幼馴染センサーもキャッチするよ!」

 ヒナミも力説した。

 「魚群探知機ならぬ輪人様探知機が私にもございます♪」

 ヴィクトリアが自慢げに胸を張る。

 「私も、輪人さんとリンクしてますから♪」

 尻バーナの言葉に、輪人がそう言えばそうだったなと思い返す。

 かくして、仲間達に平等に掌や頬や額にキスをして彼女達の要求に応じて行った輪人であった。


 「いらっしゃ~い♪ お疲れね~♪」

 輪人がドアを開けて入ったのは学校の保健室のような場所、ケトの診察室であった。

 「いや、皆から貰った愛情はをこっちも愛情で返さなきゃ駄目だから」

 椅子に座りケトと向き合う輪人。

 「当然、それは私にもそうしてくれるのよね?」

 ケトが微笑む。

 「はい、ケトさんも俺にとっては大事な人ですから」

 輪人が真面目にケトを見つめた。

 「……うん、ありがとうね♪ 私も今のはお腹に来たわ♪」

 自分の腹をさするケト。

 「いや、あんたもかい!」

 ケトにツッコみを入れる輪人。

 「まあ、神様ジョークはさておきお茶でもどうぞ♪」

 ケロケロと笑いながら席を立ち部屋の棚から茶碗と茶葉を出すケト。

 「ケロケロ~♪」

 適当に茶葉を茶碗に入れたケトが、呪文を唱えて指から水を出して茶碗に注ぐ。

 「……え、マジ?」

 その光景を見た輪人は唖然とした。

 「も~♪ 今更、魔法使ったくらいで驚かないの~♪」

 ケトがケロケロと笑う。

 「いや、その? 何というかまともにわかりやすい魔法を見たんで」

 「も~♪ 本当に、君は面白い子ね~♪」

 輪人のリアクションを見てカエルのようにケロケロと笑うケト。

 「いや、なんかすみません」

 あやまってしまう輪人。

 「まあ、こんな蛙女だけど末永く宜しくね♪」

 ケトがベロンと長い舌を出し、舌でハートマークを作りてへぺろする。

 「うっす、有言実行します」

 冷静に頷く輪人、二人の間に絆のオーブが誕生した。

 「ケロケロ♪ オーブも無事にできたわね♪」

 「このオーブ、九個集めるとどんな力が得られるんですか?」

 輪人が尋ねてみる。

 「そうねえ、私達皆の絆のエネルギーで凄いブーストがロボに掛かるの♪」

 「その凄いブーストが気になるんですが?」

 「それは秘密、ムーナとの決戦でのお楽しみ♪」

 「わかりました、凄いブーストは楽しみにしてます」

 輪人はケトを信じる事にした。

 「あ、そうそう♪ 輪人ちゃんのアバターボディ作りたいから採血させて♪」

 「いや、唐突だな! 何ですかそれ?」

 突飛な事を言い出したケトに輪人が叫ぶ。

 「地球での活動用の輪人ちゃん達の複製された体、子供も問題なく作れる体よ♪」

 「いや、何でそんなのがいるのかと?」

 「神様になると神になった体でそのまま地球に行くの、ちょっと地球の神々のルール的に問題なの」

 「何か知らない情報が出て来たんですが?」

 「まだ、輪人ちゃん達は神様候補だから詳しく説明できないけど信じてくれる?」

 ケトが真面目な目つきで輪人に尋ねた。

 「了解です、んじゃさくっとお願いします」

 ケトを信じて腕を差し出す輪人、ケトが自分の指を彼の腕に当てると輪人は何かけだるい感じになった。

 「はい、採血終わり♪ このお茶は回復効果があるから飲んでね♪」

 「あざっす、いただきます」

 輪人は苦みを我慢しながら茶を飲んで、ケトの診察室を出た。

 「ふう、どうやら戦いが終わってからの方が面倒が多そうだな」

 自分でやると決めた事とは言え、少し億劫になる輪人。

 「最後はエレト参加、食堂で何か食わせてもらおう」

 そう言って、輪人は食堂へと向かった。


 「いらっしゃ~い♪ ご飯できてるわよ~♪」

 食堂に入ると、テーブルの上に料理を並べ終えたエレトが彼を出迎えた。

 「あざっす、もしかしてケトさんから連絡行ってたとか?」

 椅子に座りエレトと向かい合いつつ尋ねる。

 「ええ、そうよ~♪ お話しながらご飯にしましょ~♪」

 エレトが頷き微笑んだ。その笑顔に輪人は心が癒される感じがした。

 「ステーキに鍋に炒飯にと豪華ですね、いただきます♪」

 「うふふ~♪ 頑張って作ったわ~♪ はい、いただきます♪」

 挨拶をして食事を始める二人、食事をする輪人をエレトがッ見つめる。

 「懐かしいわ~♪ 輪人ちゃん、飼育員さんにそっくり♪」

 エレトが語り出す。

 「えっと、エレトさんは日本の動物園か何かの出身ですか?」

 「そうそう、私も地球から来たの♪ 日本の動物園で生まれたの~♪」

 エレトが輪人に自分の過去を語り出す。

 「ケトも私も、地球で死んじゃって魂をジーラが引き上げてくれたの♪」

 「ジーラも俺が育てた向日葵だったな、そう言えば」

 転生と言うのが実在するんだなと感じる輪人。

 「ごめなさいね、普通に地球に帰してあげられなくて」

 エレトが輪人に謝る。

 「……まあ、俺らも自分でやるって決めましたから戦う事も神様になる事も」

 料理を食いつつ語る輪人、覚悟はできてると告げる。

 「ありがとうね、私も戦いもお世話もがんばるわね♪」

 エレトが喜ぶ。

 「そういや、なんで神様になると帰るのが難しいんですか?」

 ケトは詳しくは語れないと言っていたがエレトはどうだろうかと尋ねてみる。

 「うん、詳しくは言えないけれどわかりやすく言うと種族のレベル制限って言うのかしら?」

 エレトが可能な範囲らしい言葉で答えてくれた。

 「ああ、それを聞いたらわかりました」

 地球では普通にRPGなどのゲームを遊んでいた輪人は、レベル制限と聞いて納得した。

 地球をオンラインゲームのサーバーに例えれば、PCにレベルキャップが掛ってるサーバーだと言う事になる。

 「地球でも魔法とか超能力とか使えるのはいっぱいいましたけど、何か世界のルールってのがあるんですね」

 輪人は納得が出来たので呟いた。

 「わかってもらえて嬉しいわ~♪ そう言うルールとかを平気で破るからムーナは倒さないと駄目なの、いっぱい食べて力を付けてがんばりましょう♪」

 エレトが輪人の皿にステーキを重ねて段にして行く。

 「え? ちょっと、そんなに食えないはずなんですけど腹が減ってきました!」

 急に空腹感に襲われ、食べる量と速度が増え出す輪人。

 「ケトのお茶の効果ね♪ いっぱい食べて~♪」

 「あのお茶、そんな効果が! と、止まらねえ!」

 心の中で驚きつつ、箸を進める手が止まらない輪人。

 食えば食うほど力が湧き、空腹になる感覚を輪人は感じていた。

 「……ふう、ごちそうさまでした!」

 どれだけ食べたのかわからないが、輪人は全ての料理を平らげた。

 「はい、お粗末さまでした~♪」

 笑顔で返事をするエレト、食事を終えた輪人の皿の上に最後の絆のオーブが載っていた。


 勇者達が基地で休息をとっていた時、魔王領にある工場ではスカルマとランゾーンが大笑いしていた。

 「がッはッは♪ これが私の専用の巨人か、ランゾーン博士?」

 「イエ~ス♪ これが魔族巨人試作第一号デスナイトだよ、スカルマ殿♪」

 スカルマとランゾーンが、目の前に聳える五十m級の黒い騎士型のロボットを見つめて語り合う。

 「見ておれ勇者共め、今度こそこのデスナイトで目にもの見せてくれる!」

 拳を握り気合を入れるスカルマ。

 いよいよ、魔王軍側もロボを出しての巨大戦がユウシャイン達に待ち受けていた。

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