第28話 エネルギー問題とレベル上げ
「スフィンクスユーシャ、凄い力だったな」
戦いを終えた輪人、ジーラベースの司令室で呟く。
「いつもより疲れたよ~!」
ヒナミが疲れたという割には元気よく叫ぶ。
「確かに、これまでの戦いに比べると疲労感が違うな」
純子が腹を鳴らしながら呟く。
「じゅ、純子さんが戦いの後でお腹を空かせるなんて!」
ヴィクトリアが純子の様子を見て驚いた。
「私も、初めて見ました」
桃花も驚く、純子が戦いの後で腹を減らすという事は相当なカロリーが消費されていると仲間達には見えた。
「皆、私を腹時計扱いしないで欲しいけどお腹が減ったよ」
純子は少し落ち込み、そして空腹でへたりこんだ。
「じゅ、純子姉さんがやばい! エレトさん、ご飯お願いします!」
輪人が純子を抱えて叫ぶと、タイミングよくエレトが巨大な握り飯を積んだカートを運んで司令室に入って来た。
「はいは~い! 輪人ちゃん以外は、おにぎりを食べて回復してね~!」
エレトが輪人以外のメンバーに巨大おにぎりを配ると、仲間達は一気におにぎりを食べだした。
「いや、皆どうしたんだ?」
ガツガツと巨大なおにぎりを食う仲間達を見て輪人が驚く。
「スフィンクスちゃんが皆のエネルギーも吸って、敵を倒したからよよ~?」
エレトが説明する、スフィンクスユーシャは輪人以外のユウキエネルギーとカロリーを吸収して戦っていたと聞かされた。
「マジですか、俺はスフィンクスに乗っていたから減らなかったと言うか俺も仲間達のエネルギーを吸ってたって事ですか?」
輪人が驚く。
「私のわかる範囲だとご飯を食べれば問題ないけど、長丁場の時の為にどうにかしないとね~?」
エレトも心配になった。
「確かに、強敵とロボに乗っての長期戦になった時がやばいよな」
輪人はこの件は、他の仲間達とも相談する事にした。
「……取り敢えず御馳走様、これで普通に食事ができる」
サッカーボール大の握り飯を食っても、まだ食えるという純子。
「私も、これで普通の空腹状態です」
冷静に桃花が呟く。
「うん、私も本当にカロリー使い切ってたよ」
ヒナミも同様の感想をもらす。
「レディとしてはどうかと思いましたが、命の問題ですから」
ヴィクトリアが溜息をついた。
「皆が、元気になって良かった♪ じゃあ、食堂でごはんにしましょうね♪」
エレトが優しく微笑んで食堂へと向かう。
それに続くように仲間達は司令室を出て、食堂へと向かった。
「俺も、軽く食うか」
輪人も仲間達に続いて食堂へと向かった。
食堂では、待機していた追加戦士組が輪人達を待ていた。
「皆さん、お帰りなさい♪」
シルバーナが微笑む。
「お疲れさまでした、スフィンクスユーシャも問題なく動いてましたね」
ジーラが微笑む。
「いや、問題は仲間のカロリーが吸われちまうってのが出て来たんだが?」
ジーラに起きた事を話す輪人。
「なるほど、皆さんのカロリーを吸ってしまったと」
考え出すジーラ。
「カロリーまで吸わせないようにするか、エネルギーの補給装置を作るか? はたまた俺達が機体から吸われないようになるか、吸われても問題なくなるようにするか? いずれかにしても対策を取らないと持久戦に持ち込まれたらまずい」
仲間の身を案じた輪人が思いつく改善策を挙げて見る。
「ユウキスフィンクスに乗った輪人様は、一緒に吸い取る側に泣てしまったのが心苦しいと思われてるのですね?」
ジーラが尋ねる。
「ああ、仲間の命を喰らうのと同じだし勘弁して欲しい」
申し訳ない気持ちと表情になる輪人。
「先輩、そんな顔をしないで下さい!」
桃花が巨大な丼に持った赤飯を食べる手を止めて叫ぶ。
「そうだよ、私達は大丈夫だから♪」
ヒナミもバリバリ肉を食べながら元気に叫ぶ。
「ええ、食事量がとんでもない事になってますがお気になさらず♪」
ヴィクトリアも肉も野菜もバランスよくモリモリと食べていた。
「私達にはスフィンクスの声が聞こえたんだ、僕とパパとママ達がもっと強く大きくなる為にエネルギーを分けて欲しいって♪ ならば、幾らでも与えよう♪」
大食い柱の純子が食べる手を止めて語る。
ちなみに、今も彼女達が食べているエネルギーはユウキスフィンクスにも流れているらしい。
「マジで? ていうかパパとママ達ってちょっと待って!」
パパ呼ばわりされてる事に輪人は驚いた。
「私達が皆のユウキエネルギーで作ったんだから、我が子も同然じゃない♪」
酔ってるケトが輪人の背中をはたく。
「そうですね、我が子も同然ですよね♪ 私にとっては、子供と言うよりは弟のような感じですけれど♪」
シルバーナも笑顔で納得する。
「いや、俺にもきちんと言って欲しいんだが?」
ユウキスフィンクスと対話が必要だなと輪人は感じた。
「そう言う事なので、特に心配はいらないと思いますよパパ♪」
ジーラが輪人に微笑む。
「いや、そう呼ばれるのはまだ早いから!」
輪人はジーラにツッコんだ。
「あらあら、輪人ちゃんの外堀はもう私達で埋まってるのよ~♪」
エレトが輪人にも丼で赤飯を出してくる。
「地球に帰れるようになって、皆の家族にきちんと挨拶とか筋道を通し終わってからにしてくれよ~!」
受け入れるとは言ったが、輪人としては段階や筋道を大事にしたかった。
「輪人って、挨拶や筋道とか守ろうとする所は真面目だよね~♪」
ヒナミが笑う。
「ええ、先輩の魅力の一つです」
桃花が眼鏡を光らせる。
「うん、輪人君の気持ちはわかるよ家の祖父も婿に相応しいと太鼓判を押していたからね♪」
純子が微笑む。
「そう言う誰に対しても、誠実に全力で向かおうとする所が却って人たらしになってるんですのよ?」
ヴィクトリアが溜息をついて小言を言い出す。
「お人柄から女難な人生になると思いましたので、私が確保しようと」
ジーラが本音を言い出す。
「その人柄が、あの人も魅了したんだと思います」
シルバーナがムーナの事を思い出して呟く。
「大丈夫よ、私達以外には手出しさせないから安心してお嫁に貰ってケロ♪」
ケトは酔って輪人に絡み酒をしてきた。
「皆で子沢山な明るい家庭を築きましょうね~♪」
エレトが保母さんのようなノリで言うと、輪人を除く皆がは~い♪ と返事をした。
そんな混沌とした食事を終え、輪人はユウキスフィンクスの格納庫へ向かった。
輪人が来ると、ユウキスフィンクスが口を開けて待ていたので乗り込む輪人。
「ユウキスフィンクス、俺にもお前が何を考えているのか話してくれ」
シートに跨り手綱を握手語りかける輪人。
すると、手綱が金色に輝き輪人の頭に女性が演じる美少年役のような感じで語りかけて来た。
『……やった、やっとパパの精神とパスが繋がった♪』
「ユウキスフィンクス、お前なのか?」
自分の頭の中を越えて魂に語りかけてくる声に返事をする輪人。
『……うん、そうだよパパ♪ それと、お話しできなくてごめんなさい』
「いや、俺もお前をきちんと仲間として受け入れらてなくてごめんな」
輪人も謝る。
『それは仕方ないよ、ママ達のあの様子だもんね? けど、パパにはママ達と力を合わせてこれから本当に頑張って神様になってもらわないといけないんだ!』
ユウキスフィンクスが溜息をついた後、切実に叫ぶ。
「神になる? 将来的にはなる気だが、もしかして急ぐ必要があるのか?」
ユウキスフィンクスの言葉に何かを察した輪人が尋ねる。
『うん、まだ準備をする時間はあるけれどエレトママのご飯を毎日食べてのんびり神様になって行く時間はないんだ』
ユウキスフィンクスの言葉に輪人は何かを察する。
「もしかして、近い内にとんでもない敵との戦いが待ち受けてるのか?」
魔王軍かムーナか、どちらかに強敵がいるのだろうと輪人は考えた。
『ムーナ、あいつがこの先とんでもない存在になる未来が見えたんだ!』
ユウキスフィンクスが手綱を通じて輪人に映像を見せる。
それは宇宙空間に巨大な闇が女の形を取った姿をしていて、輪人達がいる世界を取り込もうと巨大な魔手を伸ばす光景であった。
「……マジか、魔王軍だけでも厄介なのにあいつがあんな化け物になるってのか?」
輪人が全身から冷や汗を流す。
『そうだよ、だからパパ! 僕と一緒に育って神様になって! そして、皆を助ける為にママ達と皆で一緒に戦ってあいつをやっつけて欲しいんだ!』
ユウキスフィンクスが輪人に訴える。
「そうか、だから皆のカロリーも吸い取ったのか? わかった、引き受けた!」
ユウキスフィンクスの願いを了承する輪人。
『ありがとうパパ♪ 一緒に頑張ろうね♪』
ユウキスフィンクスが喜ぶ。
「ああ、その為には皆でエレトさんの食事をガンガン食ってお前に乗って敵を倒しまくってレベル上げすれば行けるんだな? 世界の命運をかけたレベリングの周回か、やってやるぜ!」
敵が待ち構えている未来、対抗する為の方法を知ったなら後は実行して行くだけだと輪人は思った。
『……その認識で間違ってはいないんだけれどもパパ、パパもママ達と似たような考え方してるよ?』
自分が信じて頼んだとはいえ、生まれて間もない身でありながら不安を覚えたユウキスフィンクス。
「それについてはごめん、だがそれが家流のスタイルと言うか家風とでも思って慣れて行ってくれ」
詫びながらも笑う輪人。
『……わかったよパパ、僕が家族皆の為にしっかりしなきゃいけないよね? 弟や妹達が無事に生まれてくる未来を守るためにも』
ため息交じりにしょうがないなと受け入れたユウキスフィンクス。
「ああ、宜しく頼むぜユウキスフィンクス♪」
シートを撫でる輪人。
『パパも、ママ達に振り回されすぎずに手綱を握ってよね? パパは未来の主神として、一家だけでなく世界の家長になってもらうんだから?』
ユウキスフィンクスにジト目で睨まれたような感覚に襲われる輪人。
「……悪い、俺はあの面々の尻に敷かれる未来しか見えないから尻に敷かれて世話を焼いてもらいながら最強を目指して頑張る」
自分を想ってくれる仲間の女性陣に対して、勝てないなと思いながら答える輪人。
『わかった、面倒見て上げるから頑張ってねパパ?』
ユウキスフィンクスは、自分を生み出した輪人に不安を抱きつつも支えて行こうと思うのであった。
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