陣馬山・景信山・高尾山 三山物語

 相模湖さがみこからまずは陣馬山じんばさん。最初の登りがやたらキツくて、すぐにヘトヘトになる。先週も登山していたので、筋力は上がってるつもりなのだが、なかなか楽には登れない。


 最初のいただきとして孫山まごやまという山につく。登頂したことをひとしきり大喜びしたのち下山。道を間違え登りなおす。陣馬山方面に降り始めたところで孫山頂上の立て札を撮ってなかったと気づく。三度目の登頂である。


 吉野よしのおとに続く急坂の立て札があった。地図にも乗っていない道だ。

 本当に急だったが、せっかくなので登ることにする。あまりの急さに普段使ってない筋肉を使うことになる。長い三百メートルだった。


 明王峠みょうおうとうげまで着くと、もう難所というほどの難所はなかった。なんなく歩いていたら、陣馬山の山頂に辿り着いてしまう。

 謎の像が建っている。どう見ても、四つ足に陰茎が生えているとしか思えない。まさしく謎の像だ。


 ベンチでいったん荷物を整理し、山小屋を見に行く。うっかりストックを置き忘れてしまった。

 しばらくして気づき、ベンチに戻る。登山者のじいさんが私のストックを手に取り、まざまざと眺めていた。私は「ありがとうございます」と礼を言い、ストックを取り戻す。

 はたと考える。果たして、礼を言うようなことだっただろうか。


 山小屋は清水茶屋と信玄茶屋が開いていた。どちらにも陣馬そばなるものが売っている。後に行った方の信玄茶屋で陣馬そばを注文し、持ってきていたビールを飲む。

 陣馬そばは山菜と椎茸、なめ茸が入っており、とても美味い。最近、立ち食いそばのそばが不味く感じるようになってしまったのだが、美味しく食べられるそばだった。

 そばを食べ終えると温かいお茶が用意されていた。とてもサービスがいい。店員の接客も丁寧で和やかだ。鍋割山なべわりやまのガミガミじいさんを見た直後なので、山小屋の接客がこんなに良くていいものなのかなと思ってしまう。


 陣馬山からはそのまま明王峠に引き返し、景信山かげのぶやま小仏城山こぼとけしろやま高尾山たかおさんを目指す。陣馬山をメインと思ってたせいか、そこからの道程が消化試合のように思えてしまう。

 高尾山まで来ると本格的な登山者がいなくなるので、少し場違いな気がしてしまう。いや、私が間違っているのではなく、軽装で来ている彼らが間違っているのだと思おう。

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