深東京仮想首都圏

ねむる

プロローグ

プロローグ

人は誰しもが悩み、憂い、葛藤、何かしらを抱えて生きている。


大人か子供か、男性か女性か、そんなものは関係ない。


誰一人として自身と全く同じものを抱える他人は存在しない。


私たちは一人しかいないのだから。




人は誰しもが誰かに憧れる。


憧れた人の背中を追う、憧れた人の真似をする。


でも、こんなことをしたって無駄なんだ。だって、


僕たちは何にだってなれる。でも、何者にもなれないのだから。


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大人になるということは現実を知ることだ。

現実を知って、諦めて、腐って、そして枯れていく。

大人とはそういうものだ。


夢を見ていた少年は今日、現実を知ってしまったた。

幾ら努力しても評価されず、報われない。目を背け続け、頑なに認めなかった、そんな現実を。


少年は家を飛び出した。このまま部屋で腐っていくことが耐えられなかったから。


少年は走った。現実を認めたくなかったから、まだ目を背けていたかったから。


少年は耳を塞いだ。今だけは何も聞きたくなかったから。


こんなことに意味なんてないのに。


心の奥底でドス黒いものが湧き上がってくる。苦しい、とても、とても。


そして少年は気付く。


「俺が欲しかったものは―。」

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