装虹のエルギア
谷橋 ウナギ
第一章『回帰』
一章 プロローグ
地震のように大きな震動が、何度も何度も何度も響く。遠く巨大樹の森の中、人型の兵器が争っていた。
操縦者の魔力で動く兵器。その大きさは10メートルを越え、迫力に魔獣さえ恐怖する。それらが木を燃やし、大地を抉り──互いに互いを潰し合っていた。
勢力は二つ。金属の兵器、木と甲殻の兵器の勢力だ。
その様子を青年は遠くから、双眼鏡を使い覗いていた。体に木の色のローブを纏い、太い枝の上で見守っている。
「なかなか楽しいことになってるな」
その青年は眺めながら言った。
兵器達は剣を振るい或いは、魔法を放って壊し合う。その様子はまるで神話の中の、壮大な戦争の風景だ。
暫くそれを観察していると、どうやら決着が──着いたようだ。
「戦力を見誤ったのか? あんな少数で仕掛けるからだ」
金属で出来た兵器の部隊。その数が遂に一機になった。
その一機も腕と足を壊され、地で仰向けになって倒れている。
「終わりだな。っておい、今は、止めろ……!」
その瞬間、青年の足下に猫が一匹ニャアとすり寄った。
青年は慌ててそれをいさめる。もし枝から落ちたら大変だ。幸いそうはならなかったのだが、代わりに一つ問題が起きた。
「あーほらトドメを見損ねた。お前のせいだぞまったく。うりうり」
青年は呆れながらその猫の、頭をうりうり撫で繰り回した。
その遙か遠く燃えさかる森で、金属の兵器は胸を突かれた。
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