デュエル
@sakakiuraotu
デュエル
冷蔵庫の前に鬼神が立つ。
未だかつてないほどの憤慨に俺の胸中は満ち満ちていた。
それは烈火の如き怒り。
冷蔵庫に本来ある筈であろうある物がなくなっていたことによる怒り。
昨日買ってきて冷蔵庫で冷やすという名の熟成を経て最高の状態で邂逅しようと時が経つのを待っていた俺の楽しみを奪われたことへの怒り。
そして、俺から奪った者への激しい怒りィ!!!
そうだッ! 俺は決して赦さないッ! ヤツがどんなに泣き喚こうと、許しを請おうとも、どんな賠償をしようとも絶体に殴るのをやめないッ!
そうだろ?
「弟よおぉぉおおーーッ」
「え? 何?」
ヤツは・・・・・・弟は、怒りに打ち震える俺を嘲笑うかのようにソファーに寝っ転がっていた。しかも見せつけるかのようにテーブルには俺のプリン! それこそが俺が求めていた物だ!
「なぁなんで食べたんだ俺のプリン? なぁ何故だ・・・・・・」
「え? これ兄ちゃんのプリンだったの?」
「あぁそうだ俺のプリンだ。俺は昨日から楽しみにしていたのにお前はそれを奪った・・・・・・」
「え? ちがっ」
「この期にも及んで言い訳か、いいだろうお前を倒した後で聞いてやる・・・・・・構えろッ!」
俺と弟の左腕にデュエル〇ィスクが出現する。さぁ戦おう。己の全てをかけて、今からここは決闘の場と化す。
「「デュエル!!」」
数分後・・・・・・
「俺はモンスターでダイレクトアタック!」
モンスターが弟のライフを削り、勝利のファンファーレが俺を祝福する。
「さぁ答えて貰おうか何故俺のプリンを食べたのか!」
「兄ちゃん食ったの俺じゃない」
「お前ッ!」
白を切る弟に対し再び怒りの炎が燃え上がるが、弟がある方向を指差す。そこには・・・・・・
ドアに半身を隠しこちらを除く妹の姿があった。
「お兄ちゃんごめんなさい」
「へ?」
俺のプリンを食べたのは弟ではなく妹だった。
その後弟へ疑った謝罪と妹の俺への謝罪としてそれぞれプリン二個が冷蔵庫へと納品された。
今度から名前を書くというルール付きで。
デュエル @sakakiuraotu
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