19話 転移できることを明かす俺

乗合馬車の止め所に向かっていたのだが、ふと足を止める。


「あ。」

「どうしたタケル?」

「どうしたんだタケル?乗合馬車の出発時間ギリギリらしいから急がねえと…」


急に足を止めた俺に2人が不審な顔で聞いてくる。

ちょっと迷ったけど、やっぱり話してしまおうか。


「実は…お二人に隠していたことがあります。」

「隠していたこと?」

「はい、クリスさん。実は僕…転移魔法も使えるんです…」

「え!」

「おい、タケルそれ絶対ここ以外で言うなよ。それが知れたらお前は貴族に拘束されるぞ。」

「はい。なのであまり人には言わないでいたんですが、ちょっと気になることもあって…」


驚くクリスと、ひそひそ声で注意してくるベレッタ。

急な暴露だが、俺にも考えがあって話している。どうにか二人には納得してもらいたい。

ここじゃなんだからということで、街から少しでた郊外の開けた場所まで3人で歩いて移動した。


「ここなら人がいてもすぐに気がつくし大丈夫だろう。」


クリスが内緒話をするなら街よりも見開きのいい郊外がいいと提案して、ここまで連れてきてくれた。


「それで…先程の話の続きなのですが、僕は転移魔法が使えます。多分3人同時に王都まで移動できます。」

「なるほどねえ…他人まで一緒に移動できるとは相当だね。あたしゃ都市伝説か何かだと思っていたよ。でもね。そんな便利な魔法が使えると知れ渡ってごらん。アンタを自分で使いたいってやつは五万といるんだ。あたしも離さないけど、アンタも絶対秘密にするんだよ。」


確かに転移魔法を過去使えた人はほんのひと握りだ。だが、いないわけではない。

ベレッタの優しさはありがたいが、今回は事情が事情だけに移動に時間をかけずに王都まで移動したい。


「実は我が家に代々秘密裏に伝承される魔法でして…まあ、それは置いておいて、王都にいく前に少し修行したいと考えているんですが、お二人はどうですか?」

「修行!?クリスはAランクなんだろ!?」

「いやベレッタ。魔族も絡んでいるなら修行しておくに越したことはない。」

「そんなに強いのか!?」


ここで俺とクリスでベレッタにウーヌス村を襲撃したモンスターの話をした。


「帝国にしかいないモンスターが襲ってきた~?そして剣も槍も聞かないだと?」

「嘘かも知れないが本当だ。実際神の奇跡がなければ村は全滅していた。」


二人にはレベルの話は省いている。レベルなどの数値表現は当然この世界の人たちには全くわからないことだし。

それでもクリスは自分のレベル不足が気になっていたようだ。


そうなのだ。クリスは未だレベルが20しかない。

平和なこの世界ではこれまでそのような強力なモンスターはいなかったので、このレベルでも十分にAランクに昇格できてしまう。

でも帝国と対抗するにはこのレベルでは全然足りない。


帝国の幹部クラスだって最低レベル100はないと瞬殺されてしまう。

俺自身は自分で自分のステータスはいじり放題だが、生身のクリスやベレッタはそういうわけにはいかないだろう。

だから色々な問題を解決しつつ、レベルアップも促していかないといけない。


「なるほどな。そしてこの事件にも魔族が絡んでいるなら、少しでも実力を伸ばしておかないと危ないというわけか。」

「そうだな?タケル?」

「そうなんです。相手はきっとこの大陸でやっていける程度の実力より遥かに上です。ですから少しでも移動時間を省いて修行した方がいいんじゃないかと。」


「よしわかった。そういうことなら、ちょうどいい修行場があるからそこにいくか。」

「そんなところあるか?」

「掲示板にあったの読んでないか?ちょうどカツールと王都の中間地点あたりで大蜘蛛が大量繁殖してるっていう。」

「ああ!1パーティではどうにもならないから騎士団が投入されると聞いていたが確かにあれならいけそうだ。」


ベレッタが言うにはちょうどこの街カツールと王都デレトニアの中間地点にある森で大蜘蛛が大量繁殖していて、その討伐に騎士団で編成が組まれているとか。

その大蜘蛛を全て自分たちで殲滅できれば、確かに経験値にはなるな。


「クリスさん、ベレッタさん。フォローは僕がしますから大船に乗ったつもりで暴れてください!」


俺はそう意気込んでその森にクリス、ベレッタと3人で転移した。

転移魔法は本来なら行ったことがないと使えないのだが、俺は座標さえわかればどこにでも移動できる。

俺が神ゆえのチートなのだが、2人には一度行ったことがあると説明しておく。



森の入り口に転移してから、俺たちはまずベースキャンプの設置に動いた。

すっかり野宿のつもりでいたベレッタにマジックバッグのことを説明していなかったので、俺がバッグからポンポンいろんな道具を出したのに驚いていた。

しまった。説明するの忘れてた…。


今日はベースキャンプの設置と森の入り口周辺の様子を伺うだけして、大蜘蛛の集団を発見した時の対処について3人で話し合った。そのうちに俺の話に飛び火してしまった。


「大蜘蛛の弱点は火だから、火炎による攻撃がメインになる。クリスは魔法剣は使えるか?」

「火を帯びさせるくらいなら。」

「十分だ。あたしは火炎魔法は得意だが、森の中であまり使うわけにもいかない。アンタへの攻撃力向上と熱線魔法で焼き切るのが中心になるねえ…タケルはどうする?」

「僕は各種補助魔法と回復。それと大蜘蛛の動きを鈍らせます。」

「え!?そんなに魔法連発して大丈夫なのかい?」

「ベレッタ。タケルは補助魔法と回復魔法のエキスパートなんだよ。」


補助と回復というかなんでもできるんですけどね。そういうことにさせてもらおう。


「タケル…あんた何者だい?教会にだってそんな術者はいないし、そんな実力者だったら絶対有名になっているはずだ。それにマジックバッグに転移魔法…あたしゃ今日1日で魔法の常識が覆された気分だよ。」


えっと…返答に困るな。

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