memory

かわら なお

 

思い出に愛がある

それは当たり前のこと

拙い文でも書けば言葉になることを俺は知っていた


いく年か前に殺した声はあの日に置き去りにされて

今も僕はあの声に囚われている


殺された声には魂が宿り

僕を締め付けて許さない

あの日のことは忘れないと呪いのように唱えながら僕を見ている

憎らしいんだろう 僕のことが


あんなに耐えてたのに

あんなに苦しんだのに

あんなに殺してきたのに

置いていくのか

忘れるのか と縋りつく


殺した俺の声を

苦しんだ俺の声を

耐えた俺の声を

お前は忘れて幸せになるのか

俺だけを置いていくのか

苦しい

辛い

悲しい

全てを飲み込んだ俺は

もういらないのか

俺がいたらお前は幸せになれないのか

俺を置いていかないでくれ

俺も幸せになりたい


でもお前は置いていくんだろう

幸せになるために

俺を見捨てるんだろう

みっともなく今に縋りつく俺を

お前は見てくれないんだろう

俺が捨てきたたくさんのものをお前は持っていて

俺にはそのどれも持ち合わせてない

俺にはあってお前にないもの

なんだろうな

わかんないな

お前はいつだって俺より持って生まれてきたんだよ

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