2-2
ヴァルトが目の前で
ぬいぐるみのふりに
ぬいぐるみの素材を選ぶ時、最も
やはり、実物の方がよっぽどきれいだ。
( ―― って、
得体の知れないぬいぐるみなど、
しかし、一体いつまでこの状態が続くのか。
(ど、どうしてこんなに見つめるの? まさか、わたしがぬいぐるみの中にいること、バレてる!? 正直に言った方がいいの!?)
ぬいぐるみになってしまったことにも思考が追いついていないのに、ヴァルトと
パニックに
見つめられすぎて
「っと。今ぬいぐるみが勝手に動いたか?」
「ふぎゃっ!」
「……っ!?」
やってしまった。
ぬいぐるみのまま、摑まれた
フェルリナは
ぎょっとし、ヴァルトはぬいぐるみを放す。
落とされたぬいぐるみは、ぼふっとその勢いのまま
「いや、ぬいぐるみが動いて話すなどあり得ない……
「そ、そんなことはしていません!」
せっかく和平を結ぶために
フェルリナは起き上がって必死に首を振り、否定する。
「! やはり動いている!? 皇妃に似た声まで聞こえるなんてどういうことだ?」
ヴァルトは、クマのぬいぐるみに銀色に
―― ひぇっ……っ!
もう
「信じてもらえないかもしれませんが、わたしは皇妃フェルリナです!」
「……は?」
「
ヴァルトは
泣きそうになりながらも、フェルリナはぬいぐるみとして目覚めた時のことを正直に話す。
刺客に襲われて、恐怖で気を失ったこと。
次に目が覚めた時には、ぬいぐるみの体に魂が入っていたこと。
自分でも何がなんだか分からないこと。
ヴァルトはひとまず
「もしや、皇妃として私に近づき、〝
「……そんなっ」
違うと否定したいが、フェルリナはルビクス王国の真意を知らないのだ。
ただ冷酷皇帝の
自分に魔法を使う力はないし、何かそれらしいものを持たされたわけでもない。
―― けれど、知らないうちに何か仕込まれていたのだとしたら。
だがもしそうだとしても、フェルリナ自身にヴァルトを傷つけようという意思はない。
「いや、あのルビクス王国が貴重な〝古の遺品〞を自国の外に出すとは考えにくいな」
この理解しがたい状況でヴァルトが真っ先にルビクス王国を疑うのには理由がある。
数百年前、大陸には魔法が息づいていた。
中でもルビクス王国は魔法のはじまりの国であり、
しかし、変わりゆく時代の中で魔法の力は弱まり、今では失われている。
特に魔法によって権力を得ていたルビクス王国は、魔法を失ったことで一気に弱体化した―― ように見えた
たしかに魔法は失われたが、実は起源の地であるルビクス王国にのみ魔法を
――それが、〝古の遺品〞。
今や世界中で魔法を使えるのは、〝古の遺品〞を持つルビクス王国のみ。
さらに言えば、起源の
どのような魔法が封じ込められているのか。
その保有数はどれだけあるのか。
どのようにして使用するのか。
ルビクス王国が持つ〝古の遺品〞に関する情報は
他国が容易に手を出せないのも、その魔法を
ただし、ルビクス王家の生まれとはいえ、罪人の子として蔑まれていたフェルリナは〝古の遺品〞など見たこともないが。
ヴァルトはフェルリナの魂がぬいぐるみに入ったことについて、〝古の遺品〞により何者かが魔法を使ったのではないかと考えているようだ。
「だが、魂がぬいぐるみに入るなど、魔法以外に考えられないのではないか?」
「それは……」
「まさか、
ヴァルトがそう
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