冷酷皇帝は人質王女を溺愛中 なぜかぬいぐるみになって抱かれています
奏 舞音/ビーズログ文庫
プロローグ 冷酷皇帝との結婚
(お父様が初めて
一歩、一歩、慣れないドレスの
純白のウエディングドレスに
そして、まっすぐに
戦場で白銀の髪に血を浴びる姿は
自分に逆らう者は親兄弟だろうと
今まさに、フェルリナはそんな冷酷皇帝の
そう。参列者の誰
愛する二人を結ぶものではなく、国と国とを結ぶ政略結婚。
それも、つい最近まで命のやり取りをしていた敵国同士の。
(
二年前―― セリス
約一年に
ところがガルアド帝国は、ルビクス王国を支配せず和平の道を選んだ。ルビクス王国から王女を
そして選ばれたのが、ルビクス王国の第三王女フェルリナだった。
元敵国から嫁いでくる王女に、人々の視線が
その中には国王である父の代わりに参列している兄王子ロイスの姿もあったが、彼の視線はフェルリナにとってはどの視線よりも痛かった。
まるで欠点を探すように、一挙手一投足を
ようやくフェルリナはヴァルトの
そして、初めて二人の目が合った。
その
(……なんて、きれいなの)
深い夜のように静かで、美しいダークブルーの
白銀の髪にダークブルーの瞳を持つヴァルトは、怪物というより神話に出てくる神々のように整った顔立ちをしていた。
まるで固まったように動かないフェルリナにヴァルトが
そうだ、今は結婚式の最中だった。
(いけない、お兄様も見ているのに。失態があってはいけないわ。だけど……)
自身を奮い立たせる一方、フェルリナは心が揺さぶられていることに
噂は
冷酷皇帝であることが
何が正しいのか分からず、フェルリナは混乱する。
それにどうしてか、彼のことが気になってしまう。
「ガルアド帝国皇帝ヴァルト゠シア゠ガルアドとルビクス王国第三王女フェルリナ゠ルビクスの結婚をここに認めます」
簡略化された司祭の言葉をもって、セリス暦一六八三年、和平のための結婚は成立した。
去り際、兄王子のロイスは声をかけてくることはなかったが、その目は冷たく、「二度とルビクス王国へ
それでも、無事に結婚式を終えたことに
そしてフェルリナは隣に立つ夫に初めて声をかけた。
「あの、陛下……」
しかし
フェルリナは身が
何も言わなくなったフェルリナから目を
「
と、ヴァルトはそれだけ言って背を向けた。
去っていく背を見つめるフェルリナの瞳から、ぽろぽろと
ヴァルトは、
いくら政略結婚であっても夫婦は夫婦だと、フェルリナは期待してしまっていた。
冷酷皇帝の噂とは異なる姿も見て、ほんの少しだけ。
しかし、その希望は
(わたし、これからどうすればいいの……?)
周りを見回すも、誰ももうそこにはいない。
見知らぬ元敵国で、
震える体を
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます