アイテムボックスの中に

犬屋小烏本部

第1話元・冒険者

自分、異世界転生したことがあるんですよ。その世界はゲーム設定の世界で、ダンジョンに入って冒険しようみたいなのが主流の世界観だった気がします。


…今、自分がこうしてここにいるってことは、その、つまりですね。

結局その世界でゲームオーバーになったからここにいるわけです。

なので、この世界とは全く別の世界の話だって思って聞いてくださいね。







その世界では、グループを作ってダンジョンに入ります。

グループって言っても、もはや軍隊じゃないかってくらい人数もいて、階級もありました。人種は色々でしたが、なぜか言語は統一されていました。

炎を出すとか凍らせるとかの魔法はありません。だから、ちゃんとグループの中には専門の医療班がいるわけです。

ただ、どういう理屈かはわかんないんですけど、『アイテムボックス』っていう無限ツールがありました。

個人的には鞄を背負って行動します。この鞄も中に入れれる物は個数に制限がかかりません。これを自分らは『アイテムバッグ』って言いました。

ただ、一つのグループに対して一つ支給される『アイテムボックス』っていうのが別にあって、そっちは呼び出し制でした。

モンスターとかを倒した報酬。ダンジョン内で手に入れた植物、鉱石、等々。あと、医療関係のアイテムなんか。そういうのは全部ボックスに入れられて、隊長が出し入れするんです。

何がどれだけ入るのかは知らないですけど、食料はバッグに入れてました。これは確かです。


そのボックスに入れるアイテムの中に、みんなで使うアイテムがあったんですよ。

代表的なのが寝袋。

信じられます?

寝袋はみんなで使う物だったんです。


1人1個じゃなくて、1人が入る部分があってそれが繋がっている。そんな変なアイテムが寝袋でした。

ちゃんと体力も回復できましたし、他にはなかったからそれを使うしか道はなかったんで誰も文句は言いませんでした。




そのダンジョンは洞窟で、何かのモンスターを捕まえてこいだとか、倒してこいだとか、何か持って帰ってこいっていう指令は誰からも聞いていませんでした。

だから、多分単純なダンジョン探索だったんでしょうね。

どんなモンスターがいるか、その強さはどれくらいかなんて誰も知らなかったんです。

そうそう。誰も行ったことがないダンジョンだったわけです。


その時の自分は下っぱの下っぱでした。足も遅くて、他の人に着いてくのがやっと。だから、逆に負傷もほとんどしていなくて前衛の人たちより疲れも少なかったんです。

先頭集団は真っ先にモンスターと戦闘になります。特に暗い洞窟なんかは何が何処にいるのか、あるのかなんて見えないから精神的にも疲労が大きいんです。足場もそのダンジョンは悪かった。

自分は、後からちびちびやって来る小者をやっつけたり、アイテムをボックスに放り込んだりしてました。


それが何日も続いたある夜のことです。

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