ピークエンドの法則「朱莉の場合」
鈴トラ
Prologue
さっきまで熱く重ねた肌、愛し合った余韻の残る身体。
「おやすみ、
私の頭に優しいキスをしてお別れをする、振り向くことのない彼の背中を見送った。
何度も、何度も。
許されない恋だとわかっているから、この時を静かにやり過ごした。
「帰らないで、そばにいて」
泣きついてみようと何度も思った。だけど嫌われるのが怖くていつも聞き分けのいい子でいようと決めたんだ。
・・・なんで好きになってしまったのだろう。
・・・なんで嫌いになれないのだろう。
・・・なんで、なんで
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ひとり親で育った私の家は、夜の仕事で働く母親が毎週違う男を連れてきた。
「もしかしたら、お母さん再婚するかもしれない。朱莉はどう思う?」
「いいんじゃない」
頭の中で、どの
お母さんは、高校に入るタイミングで苗字を変えよう、と言った。
高校に入学と同時に
新しい生活は今までと景色が180度変わって見えた。
お母さんが家事をするようになった。
朝ご飯の匂いで起きて、炊き立てご飯の温かい夕食。
今までの朝は、眠っているお母さんを起こさないようにそっと家を出て、近くのコンビニで牛乳を買って飲んでいた。夜は家にあるカップラーメンを一人で啜る毎日で、慣れすぎて寂しいと思ったこともなかった。
そんな過去が夢のように、いや今が夢かもしれないと思うほど新しい生活がキラキラして幸せと心の底から思った。
そしてお母さんが、前より何百倍も優しくなった事がとても嬉しかった。
昔に戻りたくない。過去を消し去れたらいいのに、、、
新しいお父さんは、飲食店のオーナーをやっているらしい。
近所の繁華街で焼肉屋とBARの経営をしてると、お母さんが言っていた。
「朱莉ちゃんもお酒が飲めるようになったら飲みにおいで」
と言ってくれた。
四十過ぎのおじさんでも、お洒落で清潔感があって、おまけにいい匂いがする。
羽振りがよくて、私にはまだ早いブランドのバッグをプレゼントしてくれたり、
新作のスマホを買ってくれたり、洋服も買ってくれた。
きっと私が年頃の高校生だからと、歩み寄りで気遣ってくれているのだろうと思っていた。
そんな気遣いをしてくれていた義父に、心を開くのに時間はかからなかった。
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