98 再会の約束
「より厳しい環境って……」
<ランベルが騎士団に入ると一年は任務をこなさねばならぬと言ったな?>
「ああ」
<絶妙のタイミングではないか。その間に各自で強くなれ。パーティではなく、個々の能力を最大限伸ばせるいい機会だ。まずランベル……主は予定通り騎士団に入るんだ。そしてランベルが目指していると言う大団長という者や、それに近い実力者達と日々訓練するんだ。騎士団にも実力者が揃っているのであろう? 下手なクエストを受けるよりそれがベストだ>
「――!」
言われたランベルはハッとした。
<そしてローラ……主はもっとウィッチとしての能力を伸ばせ。ウィッチや魔女の魔力量はそんなものではない。“身近”に本物がいるであろう>
「身近に……?」
<我も会った事がある。それに、我が封印されていると気付いた者がおるだろう。彼女も相当の実力者であるぞ>
ドーランの言葉に、今度はローラもハッと何かを思い出した様な表情を浮かべた。
「ひょっとして……“ドロン婆さん”……?」
「えー!俺の村の⁉ そう言えば元々Sランクとか言ってよなローラも」
<彼女の魔力量は我が今まで出会った人間の中でもトップクラスだ>
「ポセイドンと同じぐらい?」
<それに匹敵するな>
「マジかよ⁉」
レイ達が驚く中、リエンナだけはまだピンときていなかった。リエンナはそのドロン婆さんを知らないから無理もない。
今度はそんなリエンナにドーランが言った。
<リエンナ……主が得意とするその結界魔法や治癒魔法。その力は人間の中で珍しく希少だ。故に情報も少なく扱い方が難しいが、それを使いこなすことが出来れば敵にとってもかなり脅威となり得る>
「分かりました。頑張ってみます!」
<我とイヴは決して友達ではない。だが、イヴならその力を一番よく知っている。奴に教えてもらうのがいいだろう。我からも事情を話そう。きっとリエンナの助けとなってくれる筈だ>
「は、はい! ありがとうございますドーランさん!」
リエンナは力強くそう答えた。
<レイ。勿論主は誰よりも強くなってもらうがな>
「おう! 任せとけ!」
<その気合いが一番不安なのだがな……>
あくまでドーランの一つの提案。
だが、話し終える頃には、皆が自然とその道を決意していた。
<どうする? そうは言ったが、これはあくまで我の提案だ。無理強いはしない>
「――皆気持ちは同じみたいだな」
レイが皆を見ながらそう言った。ローラもランベルもリエンナも、全員が迷いのない表情をしていた。
「よし! それじゃあ決まりだ。一旦俺達のパーティは休憩。各自レベルアップしてまた集まろうぜ!」
「おう!」
「ええ!」
「はい!」
全員が力強く返事をした。
<(奴らとの実力差は歴然……一抹の不安が過ったが、この子達ならば乗り越えられるだろう――)>
レイ達が円陣を組んで気合入れしている光景を、ドーランは優しく見守っていた。
「――じゃあここで一旦お別れだな」
「ああ。定期的に連絡は取り合おう」
「そうね。アンタはまず入団試験合格しなさいよ。落ちたら完全に出遅れるから」
「余裕で受かってやるよ」
「フフフ。頑張って下さいねランベルさん。離れてしまいますが応援してますので」
「いつも優しいのはリエンナだけだなぁ」
「私も心配してあげてるんだけど」
「ランベル。余裕だったら次会うまでに大団長になってくれてても良いんだぜ?」
「おいレイ。お前まで俺を見くびっているな。本当に大団長になって帰って来てやるからな」
「……で? 次会うのは“一年後”って事でいいのかしら?」
「まぁそんな感じになる……のかな」
<それはあくまで目安でいいだろう。そもそも一年ばかりで急激に成長出来るとは思えぬ>
「じゃあ下手したらもっとかかるな」
<まぁその辺は主達の実力次第。それに、流石の奴らも全員がバラけて行動するとは思っていないだろうから、暫くはいい目くらましにもなるだろう。各自その辺りも注視しておく様に心掛けて置いた方がいい>
「ドーランの言う通りだ。何とかこの変化を上手く利用出来れば儲けものだしな」
「アイツら動くかな?」
<奴らがどう出るかは分からぬが、情報を掴んでいない所を見ると簡単には手を出してこないだろう。向こうもイヴを警戒している様だからな。だが、なるべく一人で行動し過ぎない方が良いだろう>
「そうね。常に警戒はしておいた方がいい。全員、常に誰かしらと一緒にいられるならそうしましょう」
「それが賢明ですね。それに加えて、先程ランベルさんが言った様に、定期的に連絡は取り合った方が良さそうですね。万が一の時を考えて」
「ああ。そうしよう」
こうしてレイ達は、強くなって再び再会する約束をし、それぞれの道へと旅立って行った――。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます