81 オルソ族の先祖
「どうするの? このままじゃ本当に埋もれて死ぬだけだわ」
一難去ってまた一難。危機迫る状況に焦りが生まれる。
しかしレイだけは何故か自信ありげな表情を浮かべていた。
「焦らなくても大丈夫だ。俺に任せてくれ」
「どうする気なのこの状況で!」
「今助けてもらったから次は俺が皆を助ける番だ」
レイはそう言うと、魔力を一気に練り上げた。
「落っこちてる最中じゃなけりゃ、集中して魔力を高められるからな!……ドーラン! 俺が何するか分かるだろ。時間ないから手伝ってくれよな!」
<毎度毎度勝手な奴だ>
文句を言いつつも、ドーランはレイに手を貸すべく魔力を高めた。
<半端な威力じゃ全員助からんぞ>
「分かってる……いくぞドーラン!」
練り上げられた膨大な魔力。
レイは両手を前に突き出しその魔力を一気に圧縮させるや否や、そのまま洞窟の天井目掛けて極限まで圧縮した魔力弾を放った―。
「“
――スンッ………………ドガァァァァァァンッッッ!!!!!!!!!!
放たれたレイの攻撃は、一瞬の静けさの後、まるでミサイルかの様な凄まじい速さと威力で洞窟天井を木っ端微塵に吹き飛ばした――。
「すげぇ……」
レイとドーランの強さを理解しているランベル達でも、その光景に目を奪われてしまった。
薄暗い闇に覆われ、命がけで動いていたのが嘘かの如く、吹き飛ばした洞窟の外からは眩し過ぎる日差しが降り注いだ。
いつの間にか揺れや地響きも収まり、グニ―島は静かな無人島に戻っていた。
「ふぅ~。上手くいって良かったぜ」
「相変わらず馬鹿げた魔力だぜ」
「フフフ。でもそれで皆助かりましたね」
<リエンナは良く分かっている。我の力があれば、こんなものピンチでも何でもないわ>
一件落着。
目まぐるしい宝探しも一先ず落ち着いた様だ。
「あ~あ。せっかくお宝見つけたのに全部“沈んじまった”な」
「しょうがないだろあの状況じゃ。命があるだけ良かっただろ」
「ねぇ、宝が沈んだってどういう事? 逃げたアイツらが宝も一緒に持っていったんじゃないの?」
「ああ。俺もアイツ等が消える瞬間を見たからそう思っていたんだけど……岩と一緒にお宝もそこら中に散らばって落ちていったし、海に落ちた時も岩とお宝がどんどん沈んでいくのが見えたからな」
跡形も無く吹き飛んだ洞窟。落ちてきた岩とお宝は海深くに沈んでいってしまった様だ。
「所で、もう話してもいいよな? ズロースさん」
取り敢えず事態が落ち着いたタイミングで、レイはずっと気になっていたズロースに話しかけた。
ズロース、そしてローラとリエンナは、レイ達と別れてからの事を一通り説明してあげた。
レイとランベルは、「へぇ~」、「そんな事があったのか」、「大変だったなぁ」と合いの手を入れては頷きながら話しを聞いて経緯を理解するのだった。
「――まぁお互いに色々大変だったみたいだけど、何はともあれ全員無事で良かった」
「そうね。結局はそれが全てだわ」
「君達には本当に悪い事をしたな。すまなかった」
「そんな事ないですよズロースさん! 助けてくれたじゃないですか」
「そうだぜ。俺なんてただたた助けてもらっただけ。こっちこそ感謝し切れないよズロースさん」
レイは改めてズロースにお礼を言った。
「それにしても、最低な野郎だなそのボスとかいう奴らは。ズロースさんの娘を出しに使うなんてよ。あの時確実に斬れば良かった」
「娘の為とはいえ、私はとんでもない奴に手を貸してしまった。一族にも顔向けが出来ん」
「今さらだけど、ズロースさんって人間じゃないよね?」
「ちょっとアンタ聞き方」
「ハハハ。構わないよ。君の言う通り僕は人間ではなく、オルソ族という獣人だ」
「すげぇ、初めて見た!すげぇ」
獣人族と聞いて興奮したレイは兎にも角にも語彙力がない。
「ズロースさんのオルソ族とあの宝って何の関係があるんですか?」
ローラの疑問にズロースが答える。
「ああ。この洞窟のお宝は、遥か昔、私達オルソ族の遠い先祖が有名な海賊だったらしくてね。何百年も前から語り継がれているお伽話だよ。その先祖はオルソ族の魔力でしか開けられない場所に莫大なお宝を隠したとね。嘘か本当かも分からない話だし、私達が住む村からこのグニ―島は結構離れているから滅多に来られない。
それに、昔からこのお宝には絶対に手を出してはいけないとも語り継がれていたからね。何でだろうと思っていた事が今日遂に分かってしまった。
私達の住む村にはこの洞窟とよく似た絵が描かれた古い本があったんだ。それはまるで宝の地図。子供の時はワクワクしたよ」
「やっぱ宝探しは男のロマンだよな!」
「そこだけは全く理解出来ないわね」
「驚いた事に、奴らに連れられこの洞窟に入った時、まさか子供の頃に見たあの本の地図と凄く似ていると思ったんだ」
「だからあの時逃げ道を教えてくれたのね」
「目を疑ったよあの宝には。本当に存在するのかってね。恥ずかしい事に、僕はもしその宝が見つかれば、ウニベル草を手に入れる為の資金を手に入れられるかもと思ってしまった。
でもやっぱり、お伽話の通り開けてはいけないものだった。まさか洞窟が崩れて、全く関係のない君達まで巻き込んでしまった。皆が守っていた一族の約束も破ってまでね」
「でも、それは娘さんの為にした事じゃないですか」
「そう言えば聞こえはいいけどね。だからって他の人を裏切ったり危険な目に遭わせていい訳ないだろう?」
「それは……」
「出会えて良かった。純粋な君達を見て、もう取り返しがつかないけど、最後の最後に踏み止まれた。本当に助かったよ。あのままアイツ等と手に入れたウニベル草じゃ、それこそ娘に合わす顔が無かったからね」
ズロースは優しく微笑みながらそう言った。だが、その表情はどこか儚げも感じさせた。
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