第2話
次に目覚めた時。
其処は来世などでは無かった。
今世。正確には五か月前に遡っている。
首元を抑えながら体を起こす十束切久。
部屋の一室。
ベッドの上で彼は目を覚ます。
「…あぁ、クソ、たまんねぇな」
十束切久は悪態を吐いて体を起こす。
彼が見た光景は夢ではない。
現実で起こった事であり、実際に彼は死んでいる。
だが、死ぬと同時に、時間が遡っている。
そして最終的に規定された時間軸へと戻るのだ。
五月十七日。
それが、十束切久がループを開始する時間帯。
喉が渇いた為に、ベッドから起きて冷蔵庫を確認する。
「(これで何回目だ?…百、いや、二百を超えたか…何時になったらループを脱する事が出来るんだ?)」
何故彼がこの様な目に遭っているのか。
それは、彼が呪いを受けた為だ。
『
一般的に悪霊や妖を祓う専門家であり、時には魔道に堕ちた人間すら祓う。
退魔の血筋を持つ十束切久。
彼は『覡祁』としての役目を全うし。
五月三日。彼は祟神に遭遇した。
神に該当する相手と戦い、瀕死の重傷を負った十束。
本来ならば死は確定的。
されど、彼は死なずに呪いを受けた。
その呪いこそが、彼を苦しめるループの原因であった。
数週間もの時間を眠りに費やし。
其処で延々と祟神の呪いの内容を聞かされ続けた。
次に目が覚めた時、彼は自室で横たわり。
其処からループの開始地点が決まった。
「…あぁ、駄目だ。忘れた」
何度も何度もループを経験する。
しかし、百や二百を重ね続ける。
すると記憶の良い人間でも順序を忘れてしまう。
そして記憶は、直前に至らなければ蘇る事は無い。
精々、覚えているとすれば、前回のループでどのように死んだかくらいだ。
「クソ、さっさと、終わらせねぇと」
十束切久はうんざりとした口調で呟く。
祟神から与えられた呪い、それを解く方法。
『一年、死なずに過ごせ』
ただ、これだけだった。
けれど、何故か生活をしていると、不自然な死に恵まれてしまう。
祟神が、運命を操作しているかの様に思えた。
「…腹減ったな」
朝起きて、数百を超えた空腹を感じる。
身体を起こして部屋を出る。
『覡祁』育成をする機関。
関係者はその施設を『神薙塾』と呼んだ。
「何処に行くか…」
今の時間は明朝六時だ。
食堂が開くのは七時から。
一時間の間、空腹で居続けるのは難しい。
だから、外に出て食事をする事にする。
「(この時間帯なら、牛丼屋か?…関係者は居ないと思うが…いや、無駄だろうな)」
無駄だと、そう十束は思った。
何故ならば、基本パターンが通用しない。
今の時間帯には誰かが居る。
何度も時間を繰り返す彼にとっては特定の人間の移動も理解している。
だが、時間を繰り返しているのに、その時間に特定の人物が居ない事が多い。
つまりは、前回で経験した行動パターンが読めないのだ。
始まりの朝でも同じ事だった。
「…誰にも会いたくねぇな」
そう呟いた時だった。
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