死する運命、繰り返しの呪い、幾度の死を乗り越えようとも、最終的にヒロインに殺される。

三流木青二斎無一門

第1話

廃墟の屋敷。

待ち合わせがあると呼ばれた一人の男。

灰髪を持つ少年。

身長は高く、筋肉質。

彼はスマホから時刻を確認する。

彼が予想するのであれば、既に十分前には呼び出した人間が来る算段。

しかしそれが無いと言う事は。

彼にとって未知数な展開になった事を意味する。


「(あぁクソ)」


十束切久は内心そう呟いた。

脳裏に過る最悪の二文字。

暗闇の中から訪れる袴姿の少女。

片手に唐傘を掴み、引き摺りながら接近する。

だらりとした片手は宙ぶらりん。

かと思えば肩が動き腕が上がる。

手首から黒い物が握られたかと思えば投擲。

手裏剣が舞い、十束切久の足に突き刺さる。


「ッ」


太腿に突き刺さる棒手裏剣。

抜く時間はない。

両手を構えて霊気を整える。

迎撃の覚悟を宿し、迫る少女を見詰める。


「……ふふ」


少女は笑う。

頬に付着した血が印象的だ。

不意に歩みを止める。

唐傘が手から離れたと思えば。

ぱぁん、と。

音を鳴らして十束切久の体が跳ねる。


「十束さま、貴方さまは、近接が得意ですので…」


なので。

その対策の為に用意された代物。

一昔前の海外で見られる逸品。

ウィンチェスターライフル。

くるりと銃器を回して再装填を行う。

再び近づくと、銃口を十束切久に向ける。

腹部から血を流す彼に狙いを定める。

今度は外さぬ様に、きっちりと心臓部分を狙い射出。

胸に穴が開き、強烈な激痛が彼の肉体を支配した。


「が、ぁッ」


十束は既に虫の息。

銃器を捨て、少女が上に跨る。


「一人では逝かせません…私と、貴方さまは、死して永遠になるのです」


着物の帯に差し込んだ小刀を引き抜くと。

念入りに、十束切久の首を裂いた。

血が激しく吹き飛び、衣服に掛かり、指先にも血が付着する。

彼女はその血を口元に近づけて、指先に付着した血を舌先で迎えた。

甘味の様に味わい、飲み込む。

ぽぅ、と赤く灯す表情は完全に酔い痴れている。


「あぁ…貴方さまの命の飛沫が、私の中に流れていきます」


うっとりとした表情を浮かべながら。

辛抱溜まらずと言った様子で。

荒く呼吸する十束切久の唇を重ねる。


「ん…ふふ、これで、契りは結ばれました…私たちは、来世でも結ばれます」


嬉しそうに目を細めて、彼女は小刀を構えなおす。


「では…十束さま、来世でまた、お会いしましょう」


少女が自らの首に小刀の刃を添えて引く。

血が噴き出して、笑みを浮かべたまま十束の方に倒れ込んだ。

夢見心地なまま、少女は十束の血に濡れていく。

寝覚めが悪いまま、十束は少女の血に濡れていく。

薄れゆく意識。

最後に、十束切久は心の内で呟く。


「(今回も、失敗した)」


その言葉を最後に。

十束切久は死んだ。


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