第16話 「聖女様と捜索依頼を」

(ふぅ……滝にうたれて何とか、クレア様とは、普通に喋れるようになったぞ……)

 

 今日は、ウルバルト樹海という場所に来ていた。どこを見渡しても緑。

 流石は、樹海。地図と方位が確認できるアイテムは持っているが、念のため、スタート地点からしっかりと目印もつけてきた。中に入って思ったが、地図とアイテムを持ってきておいて良かった。間違いなく、迷っていただろう。


「凄いところだな……だが、討伐じゃないだけあって今日は少し気が楽だな!」


「確かにそうだね。最近は、討伐依頼が多かったし」


 そう、今回受けた依頼は、いつものような討伐依頼──ではなく、

 ギルドが承認し、危険生物ではないと判断された魔物の捜索である。


「皆さん、いくら討伐依頼ではないといっても魔物はいますから……油断は禁物ですよ?」


「クレアは、ほんと隙がないっスね!! でも、ウルバルト樹海ってあんまり

 危険な魔物はいないって噂っスけど?」


「うん、ギルドの情報によればそうなんだけど……まぁでも何があるかわからないし、クレア様の言う通り、用心しておいて損はないと思うよ。僕たちは、冒険者だからね」


「ま、二人の言う通りだな! 油断はしないでおこうぜ、ユニ」


「いや今日は気が楽だな……とか最初に言い出したのは、ガレアスっスけどね」


「そういえばそうだったな! がはははは!!」


「笑い事じゃないっスけど……」


「おっと……だが、一番最初に魔物を見つけたのは、どうやら俺みたいだぜ?」


 ガレアスは、一本の大木を指さしながら言った。

 その木を見ると、葉の部分が少し揺れている。


(姿は見えないけど、何かいるのは確かだ……)


「だが、どうする? かなり高い位置にいるぜ……」


「そうだね。じゃあ、僕がひとまず風魔法を使って、木から落とすから、落としたところを3人にお願いしていいかな」


「場所はわかるのか?」


「うん。索敵スキルで大体の位置はわかるから……」


「ユウタ様は、索敵のスキルもお持ちなのですか?」


「はい、一応……クレア様みたいな強い魔力は持っていませんが……あはは」


(やだ……!! 謙虚!! そんなところもカッコいい……!!

 L! O ! V! E! ユウタ様ー!! きゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!)


「じゃあみんな……行くよ、生存感知イキルモノ!」


 先ほどまでは見えなかった草木の中が、徐々に、見え始める。


(うーん……意外と小柄の魔物だな……もしかしてこの魔物……。

 まぁ……とりあえず、場所はこの辺か……)


風刃ウインドショット!!」


 ビュンッ。


 一本の刃のような衝撃派が先程、魔物がいた場所にあたる。


 ドサッっという音と共に、何かが落ちてきた。

 ただし、今回、威力は抑え目にしておいた為、ダメージはほぼないはずだ。


「み、見えたっス!! けど、結構小さいっスね……それに」


 落ちてきた、魔物は、警戒しているのか、僕らをじっと見つめていた。

 その姿は、小柄な耳の生えた四足歩行の動物に見えた。

 フサフサの茶色の毛に覆われていて、可愛らしくも見える。


「ウーーーーーーー」


 小さく吠えるその魔物に対して、クレア様は呪文を唱えようとする。


「来ましたね……! 氷結魔法……!」


「あっ!! ク、クレア様!! ちょっと待ってください!!」


「え……?」


「この子が、今回の捜索していた魔物、イヌッコロリンです!」


「ワンワン!!!!!」





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