ネコむす

玉露でんちゃ

第1話 うらわまし猫

 わたくしは、猫娘。今はミューニーと呼ばれている。

 めでたいことに飼い主の少年に初めての彼女ができた。


 あれは、10月の中頃のことだったと思う。

 暇を持て余したわたくしは、飼い主の一人である佐藤勝(14歳)の学校を見に行った。

 劣化か汚れか、クリーム色になった校舎。隙間なくつまった駐輪場。グラウンドには青いジャージまたは半袖か、体操服を着た人間がボールを追いかけている。

 その集団のなかに佐藤勝はいた。

 ジャージを上下完全に着込み、ゼッケンは緑。ボールの駆け引きから遥か後方で突っ立ている。

 前線の攻勢は逆転したようで、赤いゼッケンの男がボールと共に駆ける。

 このままいくと、佐藤勝と赤ゼッケンは対面することになるだろう。

 案の定、一瞬で突破され、

 赤ゼッケンは調子よくゴールを決めた。

 そして、チャイムが鳴った。

 …

 全く面白くなかっただろう。

 そういう男なのだ。佐藤勝は。

 

 その後は、ぞろぞろと校舎から大量の人間が出てきた。

 これに入れ替わるように、わたくしは校舎にはいった。

 みつかるかもしれない。予想以上にまだ人間がいた。

 しかし、わたくしは猫娘。猫から人に、人から猫に自由に変身できる。服装もそれっぽく再現することが可能だ。

 そういうわけで、人に変身した。

 それでも一応、人間に近づきすぎないようにしながら、なにくわぬ顔で探索する。

 校舎二階。

 夕日の照らされる教室に佐藤勝が一人、残っていた。なにやら書類をまとめているようだ。…

 すると、もう一人、女子が戻ってきたのか教室に入っていく。

 そして、何事もなく、二人は別々に帰っていった。


 わたくしは、二人であそぶことにした。


 まずは探る。

 さっきの女の名前は鈴木華。教科書が机に入っていた。

 やることは単純なもので、鈴木華と佐藤勝に相互でラブレターを書くのだ。

 内容は適当に、字体はまねしない。いたずらであることを示す。すると、知り合いにはなるだろう。

 うまくいき、その後ラブコメのような展開を用意してやり、恋仲になってくれればなおよい。

 引き裂くところまで持って行きたいところだ。

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