闇深女子大生Aちゃん

つむぎ

第1話 Aちゃんの夜

深夜2時のコンビニ。

もちろんお目当てはストゼロのレモン。

おともに唐揚げが欲しいところだけど、この時間は揚げ物は終了している。

するめで我慢するか。

ついでに明日の朝のパンも買って、レジ袋はケチらない派なのでしっかり3円払い、無事帰路についた。


家はアパートの3階。

エレベーターはないので階段を駆け上がり、ドアをあける。

急いでエアコンとこたつをつけ、温まるまでコートは脱がない。

寒いならストゼロじゃなくてココアにするべきなんだろうけど、私が求めているのは甘くてほっこりするものじゃなく、冷たくてガツンとするものなのだ。

プシュッ

一日の疲れを吹き飛ばしてくれる気持ちのいい音が深夜無音の部屋に響く。

「今日もお疲れ、私。」

喉を通る冷たい液体は9%のアルコールで私の喉を熱くした。


私はこの時間が一日のなかで一番好きだ。

大学で友達と騒いでいる時間、サークルで先輩に絡まれる時間、バイト先でお客さんと話す時間、どれも楽しいけれどなんか落ち着かない。

楽しまなきゃ、笑わなきゃ、愛想よくしなきゃ。

どの自分も確かに自分なんだけど、それはいろいろなルールのうえの自分。

だって楽しまなきゃ相手も楽しくないでしょ、笑わなきゃ構ってくれないでしょ、愛想よくしなきゃ嫌われるでしょ。

でも、この時間、一人でお酒を飲む時間はルールなんてなんにもない。

楽しけりゃ笑えばいいし、一人で踊ったっていい。

悲しけりゃ泣いていいし、裏垢で病みツイートをしたっていい。

むかついたら怒っていいし、ノートに呪いの言葉を書きなぐったっていい。

全部全部、自分の感情のまま。


冷蔵庫からマヨネーズを出して、するめにつけて口に運ぶ。

うんまい。無心で食べる。

ああ、お風呂入るのめんどくさいなあ。

明日でいっか。

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