器のはなし

げせわ注意















「あー!!」

プラスチックが床にぶつかる乾いた音。

そして怒りを込められた足音はだんだんとこちらへ近づいて。

「もう! 俺のプリン食ったでしょ!」

あいつが俺の前に仁王立ち。

涙目、プリン1個にどれだけの思いだよ。まあ、人のものを盗った俺にそんなことを言う資格はないけど。

「美味しかった。ありがと」

「ありがとじゃないんだよ! ちゃんと俺の名前書いてたじゃん!!」

「くれるんやなかったん?」

「そら一口ちょうだいって言ったらいくらでもあげるよ?」

「あーんしてくれるんや」

「もう! 茶化さないでよ」

「ごめん」

「これからもらうときは、ちゃんと言ってね?」

「そしたらあーんしてくれる?」

「・・・・・・いいけどさ」

「やった」

「とにかく! もう次はしないでね? 僕もそんなに器大きくないから」

「え、それは困る」

「? ちゃんと約束守ってよ」

「いや、そうじゃなくて」

「?」

「器が小さいことをけつの穴が小さいって言うだろ?」

「けt・・・!」

「あんま小っちゃいと俺が突っ込めないからな」


無言で走り去ったあいつの耳は真っ赤で。




明日プリン買ってくるか。

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