第68話 分断 (蓮桜視点)
「ニン、ゲン……。ニンゲン……。」
黒いマナを浴びせられたノアの様子が、段々とおかしくなっている。
それと同時に、白髪が赤黒く変色し、ノアの周りに漂う気も、ピリつき始めた気がする。
何をされたかは分からないが、マズイ気がする……。
そう察したオレとロキは、それぞれ紫光の札と、大剣を構え、女性陣の前に、護る様に立ちはだかる。
「……ノア……?」
背後から、凛花が声を震わせながら、ノアに呼びかけるも、返事はない。
「無駄。もうこの子には、あなたの声は届かない。」
「ノ、ノアに何をしたの!?」
「この子に眠っていた、人間に対する復讐心と、極限の力を引き出させた。」
「人間に対する、復讐心?ノアに、それがあると言うの!?」
「ええ、そうよ。この子は、母親を人間に惨殺されたみたい。人間が好きだった母親の為に、自ら暗示をかけて、記憶を封印していたみたい。」
「そんな……。」
凛花が、ショックのあまり、ヘナヘナと力なく座り込んでしまった。
「……ノア。凛花を殺して、鍵を奪いなさい。それが、主の仲間にする条件。」
黒魔女が、ノアに命令した、その時だった。
「ニンゲン。よくも……。」
ノアが、両腕をブランとぶら下げ、前屈みになったかと思ったら、バッと顔を上げ、
「よくも、母ちゃんを殺してくれたなっ!!!」
鬼の形相になりながら、そう低い声で一喝すると、跳躍し、一瞬で目の前まで迫ってきた。
「っ……!!」
オレは、その速さに驚きつつも、数枚の札を、瞬時にノアに貼り付け、動きを封じた。
しかし、動きが鈍ったのは、一瞬だけだった。
「うおおおおおおおおっ!!!」
ノアは、筋肉を膨張させ、気合と共に、全ての札を剥がしてしまった。
そして、黒いマナを纏わせた拳を、構えると、再びこちらへと跳躍してきた。
「はあっ!!」
ロキが、大剣を地面に突き立て、結界を張り、ノアを食い止めたが、すぐに、ピシッという音が聞こえ、結界に亀裂が生じた。
「なっ……!」
ロキが驚いた刹那、結界は、パリンッと音を立て、粉々に砕け散ってしまった。
「ニンゲンめ!!!」
ノアは、呆然と見上げている、凛花の顔面に目掛けて、何の躊躇いもなく、拳を振るった。
「ノ、ノアさん!ダメなのです!!」
凛花の頭上にいるルナが、必死に呼びかけるも、ノアは止まりそうにない!
「させないわよ!」
その時、アリーシャが咄嗟に、バチッと音を立てながら、雷を飛ばしたが、ノアは瞬時に察知し、空中旋回すると、少し離れた距離に、ストンと着地した。
「……やっぱり、大勢いると、邪魔ね。」
そう呟いた黒魔女が、右の掌を、凛花とノアへと向けると、漆黒の結界が現れ、一瞬で2人を飲み込んでしまった。
「っ!凛花が!!」
それに気付いたアリーシャが、瞬時に結界を切りつけようとしたが、刃が結界に触れた瞬間、勢いよく跳ね飛ばされてしまった。
「ぎゃあっ!!」
「アリーシャさん!!」
ロキが、咄嗟に受け止めてくれたので、幸いにも、アリーシャは無傷だ。
「……無駄。その結界は、内側からじゃないと、破壊は不可能。」
そう言い放った黒魔女に、アリーシャは、体勢を整えると、負けじと、閃電を帯びた刃を向け、
「……それか術者である、あんたを倒せば、結界は解けるはずよね。なら、あんたを倒して、さっさと凛花を解放してやるわよ!!」
と、閃電を写す瞳を、鋭くさせながら、黒魔女を睨みつけた。
オレも紫光の札を、ロキも大剣を長剣へと変化させ、黒魔女へと構える。
「……そうね。だけど、無理よ。あなた達には、この子の相手をしてもらうから。」
黒魔女は、相変わらず表情を変えないまま、そう言うと、大きな湖へと手を向け、下から上へと、まるで軽い何かを持ち上げるかの様な仕草をした。
ザアーーーーーーーーッ!!
すると、水が天に向かって吸い上げられ、唸りをあげると、やがて、一頭の巨大な龍へと形を変えた。
水で出来ているはずなのに、まるで本物の様な見た目と迫力だ。
「サクラの国にあった、大きな龍の置物。アレを参考に作ってみた。」
これだけの再現をするには、相当なマナを消費するはずだが、黒魔女は、何て事ないと言う様に、無表情で呼吸を乱さずに、そう言った。
グオオオオオオオオッ!!!
龍が、地を揺るがす様な咆哮を上げ、オレ達を鋭く睨みつける。
「……さっさと終わらせるぞ。」
「ええ!」
「分かっています。」
オレたちは、龍の迫力に負けない様にと、キッと睨み上げた。
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