第46話 一件落着!……かと思いきや

 スノーフィリルへと戻ると、雪の妖精達が、外で待っていてくれていたみたいで、皆、私たちの姿を見ると、ホッとしていた。


 私に抱っこされていたルナは、ピョンと飛び降りると、真っ先に妖精達に頭を下げた。


「心配をかけてしまって、ごめんなさいなのです!!」


『いやいや!謝るのは、オラ達ズラよ!不安にさせる様な事を言ってしまって、申し訳ないズラ!』


 逆に頭を下げられたルナは、びっくりして飛び上がっている。


「ええ!謝らないでなのです!逆に、そのお陰で、オリジン様が生きている事が、分かったのです!」


『オ、オリジン様が、い、生きているズラか!?』


 兎の様な耳を、真っ直ぐピンッと伸ばしながら驚愕する、雪の妖精達に、ルナが説明した。


 雪の妖精達は、終始、口をあんぐりとしながら聞いた後、パアッと、嬉しそうに顔を輝かせた。


『……そうズラか!オリジン様が生きているズラ!なら、他の使徒の妖精さん達も、きっと生きているズラよ!』


「はいなのです!私も、そう信じているのです!」


 お互い、ニコニコしながら、頷き合った。


 その様子を見て、私達は一安心した。これで、一件落着かな。


 ……でも、オリジン様や、使徒の妖精達は、今どこに居るんだろう。


 それに、何で、ルナだけ……。


『そうズラよ!お近づきの印に、雪のアイスサンドは、いかがズラか?』


「お!そういえば、そうだったな!皆で食おうぜ!」


 雪の妖精達が、まるで雪玉を挟んだかの様な、丸くて真っ白なアイスサンドを差し出してくれた。


 甘ったるい匂いに、鼻孔をくすぐられたせいか、思考が止まってしまった。


 ……ここでいくら考えていても、真実は分からないだろうし、今は、これを食べたら、グラン様を目覚めさせに行かないと。


 それに、もしかしたら、グラン様なら、オリジン様の行方を知っているかもしれないし。


 私は、そう思うと、笑顔でアイスサンドを受け取った。


「ありがとう!いただきます!」


 本来なら、寒いから、外では食べられないけど、私の炎の魔法のお陰で、身体がポカポカとあったまっているので、全然食べれる!


「ん〜!甘くて、とろけるのです〜〜!」


 ルナが、表情も、とろけさせながら、アイスサンドを美味しそうに食べている。


 その隣で、アリーシャも元気よくパクパクと食べている。


 さらに、その隣では、ノアが食べているんだけど────、アイスなのに、1個どころか、10個も食べている。雪の妖精達も、目をまん丸にしながら、ノアの食べっぷりを凝視している。


「ちょっと、ノア!さすがにお腹壊すよ?」


 そう注意したけど、ノアは、へっちゃらだと言う様に、ニッと笑った。


「平気だ。オレ、腹壊したこと無いしな!」


 ノアが、余裕そうにそう言ったので、私は口をあんぐりと開けて、驚いてしまった。


「嘘でしょ!?白魔って、皆そうなの!?」


「ったく、どうなっているのよ。ノアの体は!」


「あ、あはは……。そうですね。」


 呆れるアリーシャの横で、ロキさんが苦笑いしている。


 ……本当に、どうなっているんだろう、白魔の身体って……。


『……ところで、あんたら、次は何処へ行くズラか?』


 雪の妖精の問いに、ロキさんが地図を広げながら答えてくれた。


「そうですね……。まずは、この先にある、情報都市、“マギオン”へ向かいます。」


 あまり聞き慣れない単語に、思わず首を傾げる。


「情報都市?ただの都市ではないの?」


「ええ。マギオンは、エルラージュ中の、あらゆる歴史や、膨大な情報が集まる都市と言われています。よく学者さんが通われていますね。」


「へーー!」


 世界中の情報が、一つの都市に集まるなんて!そんな都市があるのね、この世界には。


「そして、マギオンの次に、グラン様が、いらっしゃる霊地、“アースベル”へと向かいます。ここから、かなり遠いですね。」


 意外と、遠いんだ。マギオンも気になるけど、あまり長居は出来ないかもしれない。


「まあ、とりあえず、これ食ってから行こうぜ!」


「……今食べてるの、ノアしか居ないけどね。」


 ノアは、もう30個目に突入している。本当に、どうなっているのかしら。その胃袋は。羨ましい様な、そうでもない様な……。


 複雑な気持ちで、ため息を吐きながら、ふと村の奥の方に視線を向けると、人影らしき姿が、こちらに歩いてくるのが見えた。


「……ん?」


 けど、違和感があった。


 目を凝らして、よく見てみると、その人は、防寒具を着ておらず、腕も足も、さらけ出していた。


 そして、当然の事ながら、寒そうに両腕を抱き締める様に抱えて、ガクガクブルブルと震えながら歩いていた。


 私は、驚いたが、もしかしたら遭難者かもしれないと思い、すぐに駆けつけた。


「大丈夫ですか!?」


 近くで見てみると、ウェーブが、かかった長髪が、綺麗な萌葱色をしている女性だった。


 その女性は、真っ白な息を吐きながら、私に何かを訴えた。


「…………さささぶ……、お、腹が…………。」


「え?」


「さ、さささささぶい………!!お腹、空いた………。」


 女性は、歯をガチガチしながら、やっとの思いでそう告げると、私にもたれかかる様にして、倒れてしまった。


「ちょっ……!しっかりして下さい!!」


 すると、異変に気付いた皆が、駆けつけてくれた。


「凛花!いつでもハウスに運ぶわよ!」


 私は、アリーシャに頷くと、急いで、いつでもハウスを展開させた。


 雪の妖精達が、いつでもハウスを見て驚いていたが、説明は後!


「私が運びます!」


 その中へ、ロキさんが女性を、スッと抱き抱えると、運んでくれた。


 私たちや、雪の妖精達も、その後へ続いて入っていった。


 

 


 


 


 



 




 

 

 


 

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