DisÜtopia
ODN(オーディン)
プロローグ「理想郷――2621」
モノローグ
「どうしたんだよ。おまえ…」
青年が一言。教室に現れた友人へと問いかける。
〝髪を切った〟
〝いつも掛けている眼鏡がない〟
〝大きな怪我をした〟———など。
「テンプレ通りで、お行儀が良い」とまで褒められるような
…仮にこれがゲームや小説などの創作世界における
あの青年の台詞に続く友人の言葉も、その後の周囲の反応も。
彼(もしくは彼等)の『日常』という枠を薄く色づけるだけで、いずれは日常の彼方に溶けていくのだ。
「じつは昨日死んじゃって…」
大きな制服に着られた
先週の金曜まで青年であった彼———児童は間違いなく死を迎えたのである。
それを証拠に、児童は首元の白帯に触れながら自らの死んだ経緯について語り始めていた。
〈田舎の爺ちゃん家に行ったら蜂に刺されちゃって…アナフィラキシーショックってやつかな。巣をつついた弟を庇ったら―――〉
それは涙を隠すために
もしくは初体験を自慢する青年等のように…。
問われたわけでもないのに語り続ける児童の姿は、
初めて攻撃魔法を覚えた勇者のように純粋で、
同時に二度と使われなくなった〝銅の剣〟のように
〈———あのときはマジで死ぬかと思ったわ〉
〈いや…お前もう死んでるじゃん〉
ハハハハハ‥と示し合わせたように二人が笑い出すと、
いつしか周囲の観客たちが傷だらけの勇者を囲み、
その雄姿と英雄
【・・・頭が痛いな】
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