84話 冥府の死闘決着!!

 フルールドリスとギールスは生と死で真逆の性質を司る神だ。そんな真逆の性質を司る2人は当然といえば当然であるがとても仲が悪い。生きているのだから死は絶対に訪れるものであり逃れられないものである。それは生を司るフルールドリスも理解している。しかし、ギールスは自分の持つ力の象徴である死の気配を地上にばら撒いて死の都を作ろうとしていたのだ。


「やめなさい! 何故無闇に死の気配を地上にばら撒く必要があるのですか!?」

「うるせぇ!! どうせいつかは死ぬ連中なんだ。今殺しても問題ないだろうが!!」

「問題しかありません!! このままでは地上に生きる生命がなくなりますよ!!」

「いいじゃねぇか!! 新たに神の住む領域を作ってやろうじゃねぇか!!」

「この事はゼーリオ様に報告します!!」

「はっ!! 他人任せの腰抜けが!!」


 立ち去るフルールドリスにギールスは吐き捨てるように悪態を吐く。その後、フルールドリスはギールスのやっている事を報告し、その事態を把握したゼーリオはギールスにやめるように言うが、


「最高神だからって命令すんな!!」

「逆らうのか? この最高神に?」

「逆らうね。何せ俺はお前が気に食わないからだ!!」


 死の気配を神域全体に漂わせようとするギールス。近くにいたフルールドリスはを防ぐ。


「くっ!! すみません。死の気配を防ぐので精一杯です!!」

「充分だ」


 ゼーリオは魔力を解放して臨戦態勢となる。


「お前を殺して最高神の座は俺が貰う!!」


 こうしてギールスとゼーリオの戦いの火蓋は切られるのであった。戦いは三日三晩続きゼーリオの勝利に終わったがゼーリオも深傷を負ってしまった。その後、


「お前には今まで支配者のいなかった冥府にて支配者になってもらう。これは永遠の罰だ」


 ギールスに罰を言い渡してそのまま永久追放するのであった。こうしてギールスは冥府の王として今まで大人しく君臨し続けるのであった。それも全ていずれ来るゼーリオへのリベンジのために。


(こんなものは前哨戦ですらない。圧倒的な勝利を持って俺はゼーリオへのリベンジを果たす!!)


 目の前に立ちはだかるリュウガ、龍帝、フルールドリス、グレーストを見る。龍神の末裔、最強の龍、生命の神、岩神がんしん。相当な戦力であるがゼーリオを殺すならの敵は圧倒しなければならない。


(龍神の末裔も、龍帝も俺に攻撃を当てれるがそれだけだ。俺を殺すなら即死させるしかない。しかし、それが出来るほどの技が一つだけ。どれも構えで丸分かりだ。脅威にはならない)


 冷静に分析するギールス。この程度とは思ってはいるが油断はしない。圧倒的に勝利するためにも冷静な分析は必要なのだ。


(龍神の末裔の死双閃は独特な構えから放つから防ぐのは簡単。龍帝の豪雷一閃も抜刀術の構えを取るが奴は雷速で動くから防ぐのは龍神の末裔よりは簡単にはいかないが何の問題もない)


 リュウガと龍帝のそれぞれの技が自分を死に追いやるだけの力を持つのは認めているがである。どんなに強力な技であっても発動すれば必中であっても発動させなければいいのだ。そんな事はリュウガも龍帝も分かっている。


(死双閃は必中にして絶殺の最強の技だ。だが構えでバレバレだ。龍帝は真っ向から勝負してきたがギールスは戦闘狂って訳じゃないから構えを取ろうものなら確実に構えを崩しに動く)

(豪雷一閃をに使うなら雷速で動くオレ様なら問題ない。だがギールスに攻撃を通すには空間ごと破壊しないていけない。それをやるにはタメがいる。高速戦闘においては致命的だ)


 自分たちの技を決めるのが難しい理由を理解していた。しかしそれでも、


((決めてみせる!! 死双閃/豪雷一閃を!!))


 そんな2人の決意に気づかないがフルールドリスは2人の集中力が上がってるのは感じる。


「グレースト。分かってると思いますがこの戦いはあの2人を上手く活かさないと勝てませんよ」

「勿論です。自分はギールスに有効打を打てませんし。貴女様は出力が足りませんからね」


 こそこそ会話する。正直2人はギールスと戦うには実力不足だ。しかし、全く役割がない訳ではない。フルールドリスしかギールスの全力の死の気配を防ぐ事が出来ないからだ。そんなフルールドリスの護衛、いや肉壁としてグレーストはいるのだ。各々が出方を決めると一気に動く。


(間合いを詰めるもクソもないな)


 空間転移により瞬時に詰めて来るギールスに毒づくリュウガであるがそれを前提としていた。


(空間転移を使うのを理解して防御に回ったか)


 ギールスは間合いを空間転移で詰めるとそのままリュウガの首を掴んで死の気配を全身に浴びせて殺すつもりだったが首を掴もうとしたがその手を弾かれてしまった。そうして出来た隙にフルールドリスはギールスの纏う死の気配を打ち消す。その瞬間をリュウガと龍帝は見逃さずに強襲する。


「ちぃ!!」


 左手をリュウガが、右手を龍帝が斬り落とす。


「リュウガ!! このまま攻めるぞ!!」

「分かってる!! 指図すんな!!」


 2人の連撃は止まらない。通常なら死の気配による防御は一瞬で回復するがフルールドリスの生命の力により回復が遅い。その上リュウガの死の気配を視る力による死の付与による即死を防ぐのに力を使い余計に死の気配の防御の回復が遅くなる。


(このまま押し切る!!)

(反撃の隙を与えない!! このまま殺し切る!!)


 怒涛の連撃によりズタボロになっていくギールス。


(個々の力だと俺に劣るくせに)


 ギリィと歯軋りする。


「足掻くんじゃねぇぞ! ザコ共ーーーー!!!!」


 死の気配がギールスを中心に一気に放出される。しかも、


(さっきの全力のはずじゃねのかよ!! これは死ぬ)


 フルールドリスが防いだものよりも強烈な死の気配が4人をいや、今いる冥府の三層全体を襲う。


(全魔力を使い切る気だな!! 確かにこれを防げるのはフルールドリスだけ。そのフルールドリスは攻撃能力が低い。オレ様とリュウガを殺しちまえばどうとでもなるってか)


 龍帝の考えは一部当たっているがフルールドリスであってもこの死の気配は完璧には防げない。ここに来る途中に消耗したグレーストの回復、ザコの一掃、そしてギールスの攻撃と防御の死の気配を打ち消しのに魔力を半分以上使用している。そして今、


(どうする!? 防ぐ事は出来るけどそれはあくまでも私だけ。他3人は確実に死ぬ。そうなったら勝つために必要な有効打を打てる者がないくなる)


 死の気配が目前まで迫っているにも関わらずに数秒思考してしまった。瞬時に判断するだけの戦闘経験のなさがここで出てしまった。結果としてフルールドリスの生命の守りの完全展開は遅くなりそのまま死の気配に飲み込まれる。


「守ったか。だがフルールドリスが残った所で俺の勝ちは揺るがん」


 死んだように見えたフルールドリスであったが、


「グレースト、、、、申し訳ありません」

「構いません。犠牲もなく勝てる相手ではありせんからね」


 グレーストは土による壁を展開して更には自分の残った魔力全てをフルールドリスに渡して死の気配からフルールドリスを守ったのだ。しかし、


「自分はここまでです。後は任せました」


 死の気配に侵食された土地を使う度にグレーストは命を削っていたのだ。おまけに魔力を全て渡したグレーストは命が尽きるしかなかった。グレーストが死にフルールドリスを守っていた土の壁がガラガラと崩れる。


(グレーストの命を無駄にしたくはない。ですが私では、、、、無理。頼みの2人は死んでしまった。これでは敗北しかありえない)


 土壁が崩れて視界が開けて見えた光景にフルールドリスは目を見開く。


「ど、どうして!? ギールスが死んでいるんですか!?」


 フルールドリスの眼前に広がった光景はギールスが両断されて地に伏せているというものであった。生命を司るフルールドリスはギールスが完全に死んだ事を確信させる。


「あ、あなたたちは死んだのでは??」


 ギールスの近くにいるリュウガと龍帝に問いかける。自分の守りがなければ死んでしまうほどの死の気配を2人は確実に喰らったはずだからだ。


「勝手に殺すな」

「潜って来た修羅場がお前らとは違うんだよ」


 勝手に死んだ事にされてキレるリュウガと龍帝。そんな2人が無事だったのは死の気配が当たり一面を包んだ瞬間にリュウガは、


『死双閃』


 の一撃目で前方の死の気配を斬り払い、二撃目でギールスを両断した。龍帝はリュウガの二撃目に合わせて豪雷一閃を放った。これにより2人は決め技を使ってギールスを仕留めてみせた。


「し、しかし何故あの状況で突っ込んだのですか?? あれだけの死の気配私のサポートがなければ確実に死ぬんですよ!!」


 フルールドリスの言う事に間違いはない。2人ではあれだけの死の気配は防げない。それにも関わらずに2人は、


(死を前にして何故前に進める? 恐怖はないのですか?)


 そんな事を思うフルールドリスに対して、


「あそこで引いたら負け確だったからな。引くのはありえねぇんだよ、、、、あぁ、だからといって死ぬのが怖くない訳じゃねぇぞ。生きるためには前に進まないといけないから進んだ。それだけの簡単な話だ」

「そ、そうですか」


 命のやりとりというものをして来なかったフルールドリスにはその考えが及ばなかった。


(この2人ならゼーリオ様を、、いやゼーリオを殺せる!!)


 最高神であるゼーリオはこの世界において最強である。それは同じ神である自分だからこそ分かっているがそれでも2人なら殺せるとフルールドリスは強く思うのであった。


「それにしても私の事は信用しないのに2人は信頼し合ってるのですね」

「「してねぇよ! あくまでこいつの強さを信用してるだけだ!」」

「息ぴったりじゃないですか」


ふふっと笑うフルールドリスであった。

 

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