79話 テンネン・ムソウ
テンネン・ムソウと名乗った死神は嬉しそうに、
「人間に会うのは生前ぶりだ。客人として案内しよう。ついてきなさい」
そう言ってふよふよと移動するテンネンの後を追うリュウガ。信用してる訳ではないがせっかく会えた会話が成立する相手なのでとりあえずはついて行く。
(罠だったとしても仕留められるしな)
先ほどは攻撃を防がれてしまったが
「どうだ! 素晴らしい拠点だろう!」
「まぁ、いんじゃね」
自信満々に語るテンネンに対して気のない返事をするリュウガ。
(アシンメトリーだし所々にある
刺さる人には刺さるんだろうデザインなのかもしれないが正直リュウガには全く刺さらなかった。ちなみにリュウガとしてはシンプルなデザインが好みだ。
「どうした? 入らないのか?」
「お邪魔します」
そう言って中に入る。中は以外とシンプルな装いであったがやはり髑髏が所々に飾ってあった。案内されるがままに骨で作られた椅子に座るのであった。
「さてと一体お主は何者だ? わざわざ冥府に来るからには何かあるのだろう?」
質問をされたので答えるリュウガ。名前と今回の目的であるギールスの討伐について話すのであった。
「地上はそんな事になっていたのか。神との戦争か。生きていれば参加したかったものだ」
「無双流なんて名乗るくらいだし相当強かったんだな」
「それはそうよ! 刀だけにとどまらず槍、斧、三節棍、弓、徒手空拳等を極めて世界の強者を探して旅をしたのだからな」
「へ〜。それで最期は冥府の門が開いて死亡したってか」
「そうなんだよ! ふざけた力だ。戦う事なく骨となって人間をやめることになるとは」
悔しがるテンネン。
(自我が残ってるだけ相当凄い事だし生きていたら相当な実力者として名前が残ってたかもな)
そんな評価を下す。そして、
「ギールスがどこにいるか知ってるか?」
1番知りたい事を聞く。
「すまんが知らん。会った事がないから姿形も知らん」
「そうか」
「ただ、以前にこの世界に穴が開いてそこから骨の龍が出た事がある。もしかしたここ冥府はいくつかの層が重なっているのかもしれん」
「成程な」
骨の龍というのは骸龍で間違いない。ギールスの創り出した龍であるのは聞いている。それが現れたのなら下にギールスがいる可能性は多いにある。
「助かる。穴を探して下層を目指すとするよ」
そう言って立ち上がり出発しようとするが、
「おいおい待て待て」
「何だよ」
「せっかくなら手伝わせてくれよ。神殺しに」
「いいけど死ぬぞ。悪いが守りながらの戦う余裕はないぞ」
「構わん。そもそも死んでるんだからな」
カラカラと笑うテンネンと共にリュウガは下層に繋がる穴を目指して進むのであった。目標に進んで行くリュウガに対して龍帝はというと、
「うぜぇな」
そう言って一足先に下層に来ていた。そんな龍帝は骸龍たちを雷で吹っ飛ばす。
(ギールスの奴はどんだけ暇なんだよ。馬鹿みたいな物量で押して来やがる)
次々と襲いかかる骸龍を難なく潰して行く龍帝。
(地上を狙うための準備か? だとしても変だな。明らかに量が馬鹿げている。地上だけでなく天界も狙っているのか?)
色々考えながらも龍帝は骸龍の大群を薙ぎ払いながらもギールスを目指して進むのであった。そして1層では、
「前に見た穴ってのはどれくらいかかるんだ?」
襲いかかる死神や骸兵を突破しつつリュウガはテンネンに尋ねる。
「すまんが時間の流れがわからんからどれくらいかかるかは知らん。ただ2度目の死をあっさり迎えたくはないから拠点からはからり離れているとだけ言っておく」
「そうかよ」
正直な話、死神や骸兵はザコなのでどうとでもなるが時間だけはどうにもならない。
(これは龍帝に先を越されるな。前に戦った神よりは強いだろうからゼーリオとのシュミレーションになると思っていたが仕方ない)
そう思いながらもしっかりと襲ってくる敵は仕留めている。案内役であるテンネンも敵を仕留めている。
(大鎌なんて使いづらい武器でよくやるな)
かっこよさはあるのだが想像以上に使いづらい武器として鎌は有名だったりするのだ。
(色んな武器を使っていたと言ってたが器用貧乏じゃなく練度もしっかりと高いな)
リュウガも認めるくらいにはしっかりと練度がある大鎌使いであった。それだけに、
(もう冥府の住人としてしか生きられないのはもったいないな)
既に死んでしまっている以上はどう足掻いたところでテンネンは冥府でしか生きられないのだ。
(冥府の神であるギールスを殺したら冥府はどうなるんだ? その事を考えずに来ちまったのは失敗だったかもな。それにテンネンはどうなる?)
色々と考えなければならない事があるのだがこればっかりはやってみなきゃ始まらないのだ。
「おそらくまだまだかかるがどうする? 休むか?」
「疲れてはないが腹は減ってるし休憩にするか」
適当にその辺にある岩に腰掛けて事前に用意していた携帯食料を食べようと取り出したら、
「はぁ!? 腐ったんだが!! どうなってんだよ!!」
腐って食べれる状態ではなくなっていた。
「お〜凄いな。ここだと食料はこうなるんだな」
「知らなかったのかよ」
「知る訳ないだろ。俺はもう死んでるから飯を必要としないからな」
「これマジでやばいな」
敵に殺されるとかではなく餓死の可能性が出てしまったのは非常に良くない。無理矢理ではあるがある一つの可能性に賭ける。
「地面をぶっ壊す!!」
刀を抜いて上段の構えを取り死の気配を視る。
(冥府という死の気配が充満した環境のせいで視づらいだけで視えない訳でないから問題は何もない)
死の気配を破壊するために刀を振り下ろす。
『
地面に巨大な割れ目が出来上がる。余裕で人が通る事が出来るだけの割れ目だ。それを見たテンネンは、
(バケモンだな。こんなバケモンが生まれるほどに地上は時間が経ってしまっていたか)
自分が生きていた時代には会う事が出来なかった実力者に出会えた事に感動する。
「行くぞ」
「おう!」
こうしてリュウガとテンネンも冥府の二層に行くのであった。
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