76話 レイvsレオナ
平野にてリュウガはウェンとスイを同時に相手していた。スイは白兵戦が苦手ではあるが龍だけあって膂力はリュウガを余裕で凌駕している。それをリュウガは技量で捌く。ウェンは積極的には仕掛けてこない。あくまでもスイの肉弾戦での実力を高めるためだからだ。しかし、それではリュウガの訓練にならないので時折殺す気で斬撃を放ってくる。以前までならヒヤリとするレベルの攻撃だが今のリュウガはそんな攻撃でも捌けるようになっているのであった。
「ウェン! 攻撃する頻度を上げてくれ!」
「分かりました。スイも頑張りなさい」
「はいっ!」
3人の攻防はどんどん激しさを増していく。最初の段階で人間にはついていけないレベルであったが今は龍であっても厳しいレベルまで上っていくのであった。
「Sランクの依頼があってもレベルアップには繋がりませんね」
「本当にそれよね。あたしとレイでひたすら手合わせしても限度があるしね」
ギルドでため息を吐くレイとルイ。そんな2人に、
「しょうがないですよ。2人は人類では最強なのですからそう簡単に強くなる機会は訪れませんよ」
ゴウの言う通りだ。リュウガは神の末裔。剣聖は神の器として神となっているので2人は人間という括りから外れているのだ。そんな2人を除けばルイとレイは最強であり強くなる機会に恵まれないのだ。
「だからといって手をこまねいてるのは良くないでしょう。誰か良い相手はいないですかね」
と考えていると、
「あのう? それでしたらこちらはどうでしょう?」
と受付嬢の1人が話かけてくる。
「何です?」
「今年からの試みであるようですが強く、美しい女性冒険者を決める大会を開催するようです」
「あまり惹かれませんがただ悩むよりはマシですね。参加希望を出しておいてくれませんか?」
「あたしもあたしも!」
「あっ! その〜ですね」
ルイも参加を希望したら苦い顔をする受付嬢は意を決して答える。
「参加条件は20歳以上の女性冒険者です」
言われた事を理解するのに暫く時間を要してしまったルイ。ようやく理解してから、
「何でよ〜〜〜〜!!!!」
というルイの大絶叫がギルドに響くのであった。
「20歳以上の女性冒険者限定の大会ね。それで
修行から帰ってきたリュウガは大会の話を聞いてルイが不貞腐れてる事に納得する。
「何で20歳以上なんて制限があるのよ〜!!」
文句を言うルイ。自分が出られないので怒り心頭といった様子だ。
「落ち着いて落ち着いて。改めて内容を見た所だと審査は2つあって1つ目は容姿判定がある。これは美しさを来場した一般客の投票で上位4人に絞るんだが最低限大事なところを隠しているとはいえ大胆な露出衣装もOKとの事だから20歳以上になったんだろう」
大会内容が細かく記載されたチラシを読みながらルイに納得してもらうように優しくゴウが語りかける。
「はぁ〜! 今時露出多めの衣装なんて未成年でもやってるわよ! 納得いくか〜!!」
まだ納得いかない様子のルイ。
「そもそも四大貴族の令嬢が参加して勝ち上がったら不正がどうだの言われるだろうからお前は出るな。つ〜か俺らのギルドがお前の親父さんに怒られるだろ。大事な娘を晒し者にするな! ってな」
とリュウガは言う。忘れてる人もいるかもしれないがルイはこの国の四大貴族との1つの令嬢だ。そんな彼女がこんな浮ついた大会に参加したとなれば確実に怒りを買うだろう。例え本人が乗り気であってもだ。
「正直まだ納得いかないけどしょうがないか。レイさんに出番は譲ります」
「ありがとうございます。ルイの分まで頑張りますよ」
「つっても今のレイの相手になるのなんてルイくらいだろ?」
「いえ、レオナがいます」
リュウガの疑問にレイは答える。レオナ・ドルド、薔薇の花園のエースである彼女はダンジョン攻略において最奥にあった鞭により更に実力を上げた事により男嫌いの問題を帳消しにしてSランクへと昇格した実力者だ。
「人形の骸龍の時にチラッとしか見てないうえに敵に集中してたから良く見てないんだがそんなに強いのか?」
「すごいわよ。鞭を手に取ってすぐにあたしが聖槍を扱う姿を見てるからか瞬時に新しい鞭を使いこなしてたんだから」
「たった一瞬で私たちの領域に入った彼女は紛れもない天才です」
「へ〜そりゃ戦う姿を見るのが楽しみだな」
とリュウガは思っていたがそこにウェンが口を挟む。
「ですがまずは一次審査を通過しなくてはですね」
そういえばただの力比べの大会ではないのを忘れていた。
「レイは美人だし大丈夫だろ」
「そうですよ」
「そうっすよ」
「そうそう」
メンバーたちはそう言ってるが、
((((目つきが鋭くて怖いんだよな〜〜))))
と心の中で呟く。レイは美人だ。そこは間違いない。スタイルも出るとこは出て引っ込むところは引っ込んでいる。そんな容姿端麗でスタイル抜群の彼女だが生まれた時からなのか長年修行してきたせいなのか眼光が鋭い。周囲に緊張感を与えてしまうほどにはピリついた表情をいつもしている。もちろん全く笑わない鉄仮面というわけではないのだが。そんな彼女に容姿の審査は厳しいのではとメンバーたちは思うが、
「問題ないだろ。普段通りにいろよ。まぁ取り敢えずはこれだけはやっておけ」
そう言ってリュウガは何やらアドバイスをするのであった。そうして、迎えた大会当日行われる場所はステゴロ最強決定戦が行われた場所と同じだ。参加者は8名とステゴロ最強決定戦よりも少ない。
「新しい大会だしこんなもんだろうな」
新しい大会で8名も参加してれば上場だろう。そんな大会の会場に観戦に来たのはリュウガ、ゴウ、ルークの3人だ。他のメンバーは未成年だったり依頼があるので来ていない。ウェンは、
「スイの肉弾戦の強化があるので結構です」
との事で来てない。
「結構女性も来てるな。てっきりスケベな男どもだらけになると思ってたが」
「それだと俺たちもスケベ男の仲間入りになるからその言葉訂正しろ」
「そう言って〜、サブマスだって目の保養って思ってるでしょ?」
「・・・・」
ゴウの言葉にリュウガは訂正を求めるもルークにちゃかされる。言い返すのも面倒なのでだんまりを決め込む。するとスタジアム中央に司会者の女性が登壇する。
「お待たせしました。それでは今回が初めてとなる女性冒険者限定の美しさと強さの両方を決める女傑決定戦を行います!!」
うぉーーーー!!!!
と会場が盛り上がる。そのまま最初の容姿審査が始まる。順番に参加者が入場してスタジアムを一周して退場するだけ。シンプルだか歩く姿や中央でする決めポーズが大事になってくる。
「初手レオナって運営ミスだろ。ど本命だろ」
ゴウが運営に指摘する。レオナは女性冒険者として元No. 1冒険者のレイよりも人気を博している。そんな女性を初手に持ってくると他のハードルが上がり過ぎる。
「確かに美人だな(それに強い。ルイ、レイと同格ってのは確かだな)」
リュウガもレオナの強さと美しさを認める。
「おっ? やっぱりサブマスも気になるんじゃないですか!」
「まぁ、有名人だからな。つっても俺好みではない」
「気になりますね。サブマスの女性の好み」
「黒髪ロングのスレンダー美人」
「レオナはニアミスだな」
「それでもスレンダー体型の美人だとレオナかウェンですね」
「まぁな(ウェンは龍だと知ってるからあれだが髪色は別に黒だったら嬉しいだけで絶対条件じゃないからストライクなんだがな)」
とリュウガはウェンに対して思ってたりする。まぁ、今は恋愛にうつつを抜かす事など出来ないのだが。そうしてくだらない会話をしながら続々と歩いてくる参加者たちを見る。中にはかなり際どい衣装を着た女性冒険者もいたりして、
「未成年組連れて来なくて良かったな」
「ですね」
「性癖歪むだろうな」
と語っている。ルークに至っては鼻血だらだらなので説得力がないが。ルーク同様に鼻血を出して興奮している者が大勢いる中でトリはレイであった。衣装は普段の着物を着て堂々と歩く様は決まっていて様になっている。しかし、目つきが鋭いので威圧感がある。そんなレイは中央で立ち止まるとニコリと優しく微笑む。それだけでドキッとした男女が大勢いた。
「ヒカリに優しくする時みたいに微笑め。それだけで充分だ」
前にリュウガはレイにそうアドバイスしていた。普段鋭い目つきをしているレイが微笑めばとんでもない威力になると思ったのだ。ようはギャップだ。
「あいつあんな風に笑うんだな」
元暗闇の一等星のルークは驚いた表情をしていたがその顔はほんのり赤くなっていた。
「子供相手には優しく笑ってますよ」
「そうだったのか」
新しい一面を見れたな〜とルークは語る。こうしてトリであるレイが退場して参加者全員のアピールタイムが終わった。審査は一般投票で観戦者に応募用紙が配られている。組織票がないように参加者と同じギルドの観戦者には配られてない。そうした投票により最後の決闘に進む4人の冒険者が決まる。
「妥当っちゃ妥当な感じになったな」
「だな」
選ばれたのは総本部のアイドル冒険者と薔薇の花園のNo.3の際どい衣装で男たちを興奮させた女性と、レオナ、レイであった。
「トーナメント形式でレイの相手は薔薇の花園のNo.3か」
「あ〜あの女性エロくて好きなのにここで消えるのか〜」
レイの相手に同情するルーク。そんなルークの言うようにレイは勝ち上がるのであった。
「ぶっちゃっけSランク冒険者で女性限定となったらルイとウェンがいないならあの2人の決勝になるのは確定だろ」
「ですね」
レオナも当然のように勝ち決勝はSランク冒険者同士の戦いとなるのであった。
「どっちが勝つと思います?」
「レイと言いたいが武器を持ってない状態でそこらのSランクより強いようだし武器持って強化するだろうからマジで互角だろうな」
「つまりは分からないと。でも気になりますね。あの2人はライバルですからね」
楽しみにするルーク。
「それでは決勝戦です!! 薔薇の花園よりレオナ・ドルド! 運命の宿木よりレイ・カグラザカ! それでは試合〜開始〜!!」
司会者の声で試合が始まると同時に居合い斬りでレイが仕掛けるも鞭でそれを止めるレオナ。
「あれを止めますか」
「普通は無理だろ。俺だったら首を飛ばされてる」
ゴウとルークが言うようにそれだけレイの居合い斬りは速い攻撃だったのだがそれを難なくレオナは止めたのだ。その状態から、
「ふっ!!」
刀を奪おうと力を入れるレオナであるがそれをさせないために踏ん張る。
(鞭の効果で基礎能力が上がって筋力は私より上になってますね)
引っ張り合いは部が悪いと判断して逆に引っ張られる力を利用して突っ込んで蹴りを叩きこもうとするも足を上げてガードする。
「流石ね」
「そちらもです、、ねっ!」
そう言って鞘で攻撃する。至近距離というのもありレオナは避けきれずに攻撃を喰らいよろける。鞭の縛りが緩んだ刀で追撃を行う。レイの攻撃は鋭く速い。それでも、
「致命傷だけは避けてるな。鞭使いに会った事がないが近距離も戦えるもんなのか?」
リュウガは2人に聞く。
「基本は中距離に強くて近距離は人によりますね」
「だとしてもレオナは異常なんだけどな。Aランク冒険者であっても近距離で余裕でしばけるくらいだからな」
「納得(レイの弱点は筋力不足。それを速度で補っているがレオナはその速度を最低限の傷で凌いでいる。さてどうする?)」
攻撃してるレイもそれを最低限の傷で済ませるレオナも、
((拉致があかない))
考えが一致した2人は距離をとる。両者の間合いは中距離で鞭を活かせる最高の位置だ。そこで自分の全魔力を鞭へと注ぐレオナであるが、
「レイの勝ちだな」
リュウガは確信した。レオナが鞭に魔力を注いでいる時間はレイが構えをとるのに余裕で攻撃を仕掛けようと動く前に、
『死閃』
神速の攻撃をレオナは避けきれずに直撃してスタジアムから吹き飛ばされるのであった。
「速っ!! ダンジョンでも見たが異常だろ!!」
「レオナですら避けれないのか」
「魔力を注いでる間無防備だったからなそれでもバックして攻撃位置をずらしてたのは流石だな」
レオナはバックステップで避けようとしたがそれでもレイの攻撃を避けるには遅すぎたのだ。
(殺し合いじゃないから峰でやったから速さが落ちてたがあれに少しでも反応出来るあたりまだまだ強くなるな。あの女は)
リュウガはレオナの
「初代最強女傑決定戦の優勝者はレイ・カグラザカに決まりました!! おめでとうございます!!」
大歓声が巻き起こり大会は幕を閉じるのであった。
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