70話 神との戦闘

「最近だとフォンと呼ばれる風の神が特に信仰を集めてる。おかげで他の神を信仰してる連中は躍起になって勧誘してるんだよ」


 最近のアステラの状況をスリの少年、ジンに説明してもらう。


「納得だな。しかし、急に信仰を集めるなんてあり得るのか?」

「フォン自身が現れた・・・・らしい」

「えっ! 実在するんすか? それとも噂っすか?」

「いや、何でも新しい教祖がフォンの生まれ変わりで神の力を行使してるらしい」


 そんなジンの言葉に、


「らしいばっかりで要領を得ないな。とはいえ貴重な情報だからとりあえずそこの宗教団体に行こうか。案内頼むぜ」


 向かうのは風の神・フォンがの生まれ変わりがいるらしい宗教団体だ。


「ここだ」


 ジンに案内されたのは黄金の建物であった。そんな建物に3人で入るとそこには大勢の信者がいた。


「いつもこんなにいるのか?」

「毎日15時には教祖様からのお告げがあるらしい」

「へ〜、せっかくなら神様の生まれ変わりに会ってみるか」

「自分は怖いんすけど」

「安心しろ。何もいきなり喧嘩を売る訳じゃねぇよ」


 そう言ってはいるがあくまでもリュウガからは喧嘩を売る気がないだけで向こうから売ってきた場合はその限りではないがその事を2人には言わないでおいて信者たちに紛れる。


「あら? 見ない人たちね入会希望者かしら?」

「観光です。何でもここの教祖様は神の生まれ変わりというのを聞きまして是非お言葉を聞きたいと思いまして」


 信者のお婆さんに話しかけられてリュウガは丁寧に笑顔で答える。そんなリュウガに、


「そうだったのね。あのお方は観光客にも優しくしてくださるからきっと信仰したくなるわ」

「そうですか。それは楽しみですね」


 適度に信者のお婆さんと話していると、


(神の気配だな)


 何度か感じた事のある気配を感じる。そうして奥にある扉から若い男性が現れた。そんな男は信者たちを一望するとリュウガを見てほくそ笑むと、


「皆様! 今日も信仰のためにお集まりいただき感謝します。そんな皆様に残念なお知らせです。今この場に私を殺そうとする悪鬼がおります」


 その言葉にザワザワと信者たちが騒ぎ始める。


「これもしかしてやばいのでは?」


 汗でびっしょりになるソウとジン。そんな2人に、


「このまま戦闘が始まったらお前らは全力で逃げろ。いいな」


 ぼそっと喋る。


「悪鬼とは誰ですか!」


 1人の信者が声を張り上げる。


「着物に刀を持った白髪の男です」


 すっと指を指されるリュウガ。こうしてバレた瞬間に扉から神官やら巫女やらが飛び出してきてこの場は戦場となる。


「死になさい」


 神官が槍を振るってくる。その槍を斬って破壊する。


(ルイクラスはあるな。これが天使か?)


 リュウガの判断は正しい。この教団の神官と巫女、総勢20名は天使が受肉しておりその実力はルイクラスである。


「まぁ、関係ないな」


 攻撃してきた1人を真っ二つにするとそのまま近くにいた5人を瞬殺する。


「ふむ。流石は龍神の末裔にして訪れる殲滅戦における最大の脅威の1人ですね」


 風の神、フォンは冷静に分析する。大神ゼーリオからは龍神の末裔であるリュウガと龍帝カンムルは最大の脅威であり確実に殺すように指令を受けている。


「皆様は混乱に乗じて逃げた2人を殺しなさい」


 その指示を受けて天使たちは一切に外へと向かう。


「させるかよ」


 そう言って1人の天使を殺してそのまま他の天使が外に向かう連中を殺そうとするが、


「貴方の相手は私ですよ」


 一瞬で間合いを詰められたかと思うと軽く手を振るとフォンは突風を発生させるとリュウガを壁に叩きつける。


「なるほどな。風の神らしい攻撃だな」


 壁に激突したが全くの無傷であるリュウガ。それに対して、


「流石の頑丈さですね。面倒ですが本気でいきます」

「いずれ来る殲滅戦に備えてお前は練習台になってもらう」


 そう言って構えるリュウガであるが、


(天使を逃したのは不味いな。瞬殺したいが神が相手となると無理だな)


 本気宣言をした瞬間に神の気配がより強くなったフォン。リュウガに緊張が走りソウたちの援護に行けない焦りが出そうになるが瞬時にそれを抑える。神相手に他のことを考えるのは愚策だからだ。


(まぁ、あのスリのガキは相当デキルしソウも中々強くなったし大丈夫だろ)


 会ったばかりだがジンの実力だけは相当なものだと判断している。


「さぁて、本気の神とのガチ戦闘といこうか!」

 

 フェンリルの起こす竜巻よりも相当な風速の竜巻に囲まれるリュウガであったが、


「慣れていかないとな」


 死の気配を視て自分を囲む竜巻を殺す。


「聞いてはいたが素晴らしい力ですね確かにこれなら私たち神を殺せる力ですね(ここで殺せば雷神よりも上という事になるな!)」


 カマイタチを連発する。普通は見えない攻撃であるが死の気配を視れるリュウガにとっては視える攻撃であり回避は余裕である。


「いいのか? せっかくの拠点を破壊しまくって」

「問題ありませんよ。貴方を殺した後に建て直すだけですから」


 お構いなしに攻撃をし続けるフォン。もはや建物はボロボロで原型が残っていない。


(まぁ遠慮してる場合じゃないし建物ごと殺しちまうか)


 死の気配を視て確実にフォンを殺そうと刀を振るうが避けられる。


「貴方の攻撃は絶対に喰らいませんよ」


 そのまま宙に浮かぶ。


「(空気の流れが変わったから風を操って浮いてるな)面倒だな」


 苦い顔をするリュウガ。そんなリュウガを上空から狙い撃ちするフォン。そんな攻撃を回避もしくは刀で弾く。それを見て、


(私の強みは風という不可視の攻撃。しかし、視えてるようなら私の強みは消えるな)


 フォンは神の中での実力は上位である。しかし、リュウガが相手となると話は別だ。しっかりと対策を用意して本気で戦わないといけない相手なのだ。


(卑怯ではあるが勝てば官軍ということで)


 カマイタチの連撃を放つ。


「どこ狙ってるんだ」


 明らかに自分を狙ってない攻撃に訝しむが背後にある気配に気づく、


「ふざけた真似を!」


 リュウガの背後にいる人間たちを狙っての攻撃なのだ。


(背後にいる人間を守る俺を襲うつもりだろうがその程度で殺せると思ってるなら相当舐められてるな)


 瞬時にカマイタチを迎撃する。助けた人たちに、


「大丈夫か?」


 安全確認をする。


「えぇ! 大丈夫よ!」


 1番近くにいた女性は笑顔で懐からナイフを出してリュウガを刺そうとするがそれをリュウガは回避する。しかも周りの人達も各々手近な武器を持ち殺意を持って攻撃を仕掛けてくる。


(だから宗教が嫌いなんだよ! 狂信者共が!)


 攻撃してくる連中があまりにもウザいので殺気により気絶させようとするが、


「死ぬ! 背信者め!」

(あぁ、うぜえ! 信仰心が強くて殺気で気絶しねぇ!)


 手荒になるがこんな状況では話にならない。何せ信者もそうだが神からの攻撃も捌かなければならないのでリュウガは信者たちを殴って気絶させる。


「手荒ですね」

「信者を攻撃する信仰神に言われたくはねぇよ」


 会話をしながら、


『神挿』


 攻撃するが避けられる。


(遠距離攻撃じゃ駄目だな。直に斬らないと駄目だ。避けられる)


 そんなリュウガの考えを、


考える奴はジャンプするなり、何かしらの方法でこちらに近づいて来るでしょうが空中戦になれば宙を移動出来ない奴はこちらに対応出来ない。そんな奴の首を刎ねて終わりですね)


 リュウガの狙いに気づく。そんな事を考えるフォンの思考に気づかずに跳躍してフォンの首を狙って刀を振るう。それを回避して逆にフォンが首を刎ねようとして手刀に風を纏わせた一撃を繰り出す。


「なっ!(何で私の後ろにお前がいる??!!)」


 フォンの一撃をリュウガは空中で回避したのだ。というのも、


「さっき空中で回避したのは何なんだよ?」

「空気にだって密度があるんだから面で捉えたら空中だって移動出来るだろ?」

「何で分かってない俺が悪いみたいに言ってんだよ」


 という会話を最後の修行の際にリュウガは龍鬼としていたのだ。その時は分からなかったが龍帝との戦闘の時にリュウガは成功させていたのだ。だから出来るとリュウガは分かっていたので空中であっても攻撃を回避する自信があったので攻撃を仕掛けたのだ。そして見事に成功させてみせて、


「あばよ」


 しっかりと死の気配を殺してフォンの命を確実に奪うのであった。


「神を殺したぞ!」

「奴を殺せ!」

「バケモノめ!」


 信者たちが責め立てるがそれを無視してリュウガはソウたちの方へ向かう。


「結構時間経ったが無事か? あいつら」


 と思っていたのだが、


「神を殺したのか? 凄いな!」

「言ったでしょ! サブマスは凄いって!」


 ソウたちは無事であった。リュウガが取り逃がした天使を全員殺していたのだ。


(強いのは何となく分かっていたがここまでとはな)


 ジンの強さに感心と若干の不安を感じるが、


「感謝する。世話になったな。報酬の金だが」


 と報酬を払おうとするが、


「いらねぇ。ただお前らのギルドに俺も入れろ。天使を殺した以上この国に入れないだろ」

「絶対戦力になるっすよ!」


 2人の言葉に、


「まぁ連れて行くだけ行くか。最終判断はギルマスがするだろ」


 神の手がかりは掴めなかったが神を1人殺して新たな

仲間候補も手に入ったのであった。



 


 

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