4話 リヴァイアサン討伐

 遣いの者にグランドマスターの部屋に向かうよう言われ部屋に入るとガン、それにソウと同い年位の美少女がいた。金髪のセミロングに紅色べにいろの槍を持っている。しかし、他には冒険者がおらず、


(品定めの良い機会だと思ったんだかな)


 とガッカリするリュウガの内心を他所に、


「来たな。では今回呼んだのは」

「ちょっと、まだ全員いないじゃない。それに今来たこいつ誰?」


 ガンの話を少女が遮ぎる、


「他のSランク冒険者は皆仕事で手が離せない状況だから仕方ないだろう」

「はぁ〜、なら良いけどこいつは?」

「彼は初のSランク試験合格者のリュウガ・レンだ。リュウガ、彼女はルイ・ダグラスだ仲良くしてやってくれ」

 

 リュウガは握手しようしたがそっぽを向かれた。それを見てガンはため息を吐くが、


「まぁいい、今回呼んだのはリヴァイアサンがダイダラ海域に現れた。被害は漁船が3隻にうちの船もやられた。2人にはリヴァイアサンの討伐を依頼する」

「ちょっと、何で新参者と2人でなのよ! 1人で十分よ!」

「駄目だ。相手は伝説のモンスターだ。ランクはSを越えてSSランクだ。2人で行け。いいな」


 ルイはまだ不満がありそうだがさっさ出て行ってしまった。


「すまんな、あいつは16歳で Sランクになった聖槍を使う天才児なんだが、まだ若く経験が浅い面倒見てやってくれんか?」

「俺もまだ若いんだが」

 

 皮肉を込めて言うと、

 

「お主の実力なら問題あるまい」


 と、返されてしまい。結局は、


「報酬の上乗せ頼むぜ。ジジイ」


 軽口を叩いてリュウガは総本部を後にした。


 

「そんな訳で明日リヴァイアサンの討伐行くから留守番よろしく」


 と、軽く言ったら


「いや、軽すぎるよ、相手リヴァイアサンだよ。伝説の。そもそもリュウガはワイバーン討伐したばっかりなんだから休めばいいじゃん」

 

 マイに止められたが、


「いや、面倒ではあるけど行くしかないんだよなこれが」 

「何でですか?」


 と、ソウが聞く。


「今行ける冒険者が俺とルイって奴なんだよ」

「それなら、彼女に任せれば良いじゃん。天才児だよ!」

 

 マイが食い下がってくる。ソウも、

 

「そうですね、この国じゃ知らない人はいない有名人ですよ」


 そうなのである。彼女ルイ・ダグラスは最年少Sランク冒険者として知らぬ者がいない程の有名人なのだが、リュウガは、


「いや、あいつじゃ討伐は無理」 


 断言した。


「流石に死なせるのはしのびないんで俺も行く。ワイバーンを殺して確信したが伝説のモンスターも討伐は余裕だから」


 なんて事を言っている。これにマイは、呆れてしまったが、


「分かったよ、それじゃこっちはソウの指導やっておくから気をつけてね」

「了解、ギルマス」



  翌日馬車に乗ること3時間、リュウガとルイはリヴァイアサンが現れたダイダラ海域に面する港町サーマに着いた。サーマは港町というだけあって魚介系の飲食店が多く立ち並ぶのが特徴的な町だ。馬車を降りて町に入ると直ぐにギルド総本部サーマ支部の人間が2人を出迎えてくれた。

 

「お待ちしておりました。ルイ様、リュウガ様。長旅でお疲れでしょうから今日は休んで明日」

「何言ってんの? 今日やるわよ!」

「確かに早期の討伐が町の意見ですが」

「なら良いじゃない! 安心しなさい。このわたしがリヴァイアサンを討伐するから!」

「分かりました、船を手配しますのでお待ちを」


 支部の人間の姿が見えなくなると、


「いい、あんたの出番はないから。足手まといにはならないでよね」

「了解」


 こんな調子である。 


(楽するに越したこたはないが無理だろうな)


 リュウガはルイの実力を信じてないのだ。支部の人間が呼びに来たので案内に従い港に向かうとそこには手漕ぎボードが1隻あった。


「ちょっと、どう言う事?」


 ルイが詰め寄ると、


「それがリヴァイアサンが怖くて誰も船を出してくれなくて」


 しょうがない漁師にとって船は命。その上総本部の船はリヴァイアサンによって破壊されてるのだから。それを理解してリュウガはさっさと乗り込んでオールを手に取り、


「ほら、乗れよ。俺が漕いでやっから。討伐するんだろリヴァイアサンを?」

「あたしに指図すんな!」


 文句を言いながらもルイも乗り込み、いざ出発。


 

 サーマの港からボートを漕ぐこと1時間でダイダラ海域に到着した。海域に侵入したら問答無用でリヴァイアサンが襲ってくるとルイは予想していたのだが一向に現れる気配がない。


「あぁ、もう! さっさと出てきなさいよ!」


 イライラして聖槍を海面に叩きつけるがそれでも現れない。


「おい、あんま暴れんなよ。転覆してそこを襲われたらどうすんだ? 水中じゃ流石に勝てないだろ?」


 リュウガに苦言を呈され、


「うっさいわね。分かってるわよ!」

 

 更に不機嫌になった。このままでは良くないと思い、


「まぁ、いい加減漕ぐのも飽きたし、ちょっと島でも散策しようぜ」

「はぁ? 何言ってんの? リヴァイアサンは水中のモンスターよ、島に行っても現れないでしょ」


 ルイの反論を無視して海域内にある島にボートを停めた。未だに文句を言うルイをひたすら無視して砂浜を散策する。リュウガにまだ文句を言うためルイも後を追う。

 

「そろそろだな」


 リュウガはルイに聞こえない位小さく呟くと、


 ゴゴゴ!


 と地響きが起こる。ルイは驚いた様子だが、すぐさま臨戦態勢をとる。

 

 ザッパアーン!!


 とうとう現れた。リヴァイアサンだ。海蛇のような見た目に前脚が2本あり水色の鱗がヌラヌラと妖しく光っている。何よりデカイ。体長20mはある。

 

 リヴァイアサンがこちらに気づく前にルイは走り出していた。そして渾身の突きを放つ、その突きはワイバーン相手にはオーバーキル出来る程の威力があり、ルイ本人も、

 

った!!」


 そう確信したが、


「いや、無理だろ。それじゃ」


 リュウガはそう呟いた。


 ガキン!


 という音共に聖槍が弾かれた。リヴァイアサンの鱗が弾いたのだ。ルイは自分の突きが弾かれたことに驚き、それが隙となった。リヴァイアサンの前足によって岩壁に叩きつけられた。頭から血を流すも、立ち上がりもう1度突きを放つが痛みで最初程の威力が出ずにまた弾かれる。今度は前足による攻撃を避けれたがリヴァイアサンの攻撃は止まらず口から高圧水流が放たれルイの腹に直撃した。


「ゲホッ、なんで効かないの」


 血を吐き朦朧とする意識で、


(これが伝説のモンスター、才能だけで勝てる相手じゃなかったんだ)


 そうなのである。彼女の強さは才能と聖槍による身体強化なのである。たったそれだけの事で彼女は数多のモンスターを討伐してSランクに上がってしまったのである。しかし、今回の相手はそれだけでは勝てない。伝説の存在。リヴァイアサンが彼女を飲み込もうと高速で突っ込んで来る。


(あ〜、ここで死ぬんだわたし)


 諦めて、目を閉じて死を覚悟する。しかし、彼女は忘れていた、彼の存在を。そしてリヴァイアサンも気配を完全に殺した彼の存在に気づけずにいた。一向に訪れない痛みに目を開けるとそこには刀を抜いているリュウガと首と胴が別れているリヴァイアサンの姿があった。


「嘘」

「残念ながら本当だよ」


 そう言い、ルイにデコピンをする。


「痛いじゃないのよ!」

「そんだけ元気あんなら大丈夫だな」


 リュウガは浜辺で何かを探し始める。


「何してんのよ?」


 リュウガの行動を疑問に思い尋ねる。

 

「そもそもリヴァイアサンは何で現れたと思う?」


 ルイは分からずに悩んでるとリュウガは砂浜から何かを取り出す。


「答えはのためだよ」


 彼の手には2個の卵があった。リヴァイアサンは100年に1度産卵のために深海から現れるのだ。リュウガは本でそれについて知っていた。海域に侵入しても直ぐに襲われなかったのは卵を産んだ島周辺を守っていたためであり、リュウガ達が砂浜に上陸したためリヴァイアサンは現れたのだ。しかしダイダラ海域には複数島が存在していた。その中から一発で見抜けたのはリュウガの異常な視力にあった。ボートから島を眺めていたら砂浜に妙な跡がありそれがリヴァイアサンのモノだと判断したのだ。途中飽きたなどと言ったのは出まかせで確実にリヴァイアサンが現れる自信があったのだ。

 

 港に戻りリヴァイアサン討伐を支部の人間に伝えるとあまりのスピード解決に驚かれ追加でリヴァイアサンの卵を見せると驚きのあまり目が飛び出そうになっていた。リヴァイアサンの死体は後日漁師さんの手も借り支部の人間が回収し卵は総本部にあるというモンスター研究機関に送られるそうだ。

 

 町の人間は、リヴァイアサン討伐の勇者2人のために宴会を開きたいと言ってくれたが、リュウガはギルドに早く帰りたいからパスし、ルイも自分は何も出来なかったからとパスし2人は馬車で街に帰った。



 リヴァイアサンの討伐を報告しに総本部へと来た2人をガンは嬉しそうに迎えた


「もう、帰ったのか。流石だな。2人共」

「いえ、わたしは役立たずでした」


 ルイは悔しそうに言った。


「どうなんだ、リュウガ?」

「正直、まだ弱い。才能と聖槍に甘えてます。その分伸びしろはあると思うが、まぁこいつの努力次第だな」


 言うだけ言って、帰っていた。


「どうする、ルイ?」


 ガンは優しく孫に話すかのように問いかけた。


「グラマス、あいつはどこ所属ですか?」


 ルイの目には確かな決意があった。絶対に強くなってあいつに認めてもらうために。その問いに対し、嬉しそうに、


「奴の所属するギルドはな・・」

 





 


 



 

 

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