第17話 悪夢
寝室に用意されたところは10畳以上もあるような、
だだっ広い部屋でそのど真ん中に敷物が敷かれていた。
「う~ん 広すぎて落ち着かないなぁw
これじゃまるで貸し切りの旅館状態だな」
それと問題は身に着けているコンバットスーツだった
こんな堅くてゴツゴツした物を着けてちゃ寝れるわけがない
「これ、どうやって脱ぐんだろ? そういや特撮とかの
ヒーローって元に戻るシーンてほとんど無いよなぁ・・」
仕方ないないけどともかく寝てみたんだ すると
シュッ! シュッ~!
そうしたら、驚いたことに横になってみると
コンバットスーツの背中のところに空気が入って、
エアバッグみたいにちょっと膨らんだんだ。
その他にも、首のとこもエアバッグが広がって支えになり、
ちょっとした簡易ベットみたいになったんだよ。
「へ~ これは便利な機能だな
堅めのソファで寝ているような感じだね
これなら着たままで砂地や荒れ地なんかでも
なんとか眠ることができそうだぞ
あっ! これはもちろんリクライニング機能
なんかじゃなくて、元々は爆風なんかで
吹っ飛ばされて叩き付けられた時に、瞬間的に
エアバッグが広がって体を守る仕組みなんだろ
それがこんな風にも使えるわけだな、助かった」
そうして、暗い部屋の中でゴロンと横になっていると
攻撃ヘリとの戦闘や村に迫る大部隊のことがのしかかってきた
えらいことになったなぁ だけどさぁ
いくら、この銃が強力でもたった一丁じゃ勝てるわけないよ。
とは言え、ただのバックパッカーの旅行者ならともかく
なんか銃持って使命持ってきたみたいな感じなのに
このまま逃げるのはあまりに卑怯だよなぁ
それに悪事が行われているのを知ったのに黙って
見過ごすのは加担したのも同じって言葉もあるしなぁ
やっぱり、ここは逃げるしかないかな?
村の周りは、こんなに広いジャングルだし遺跡なんかも
たくさん点在しているから隠れ場はいくつもあるはずだし、
こうなったら長老たちには逃げてもらおう。
「よし! 決めた! そうだよ、そうすればいいんだ
安全な所まで警護すれば、俺だって卑怯者とは
言われないはずだしね」
よかった、そう思ったらなんか急に眠くなってきたぞ
ウトウトしかけて、俺は急に大事なことを思い出して
ガバッっ!と身を起こした。
「待てよぉ 俺はいま異世界の村にいるんだぞ
こういう処には必ず美しい精霊とか 女神とかいるはずだよ
異世界の村に女神がいなかったら他に何処にいるっていうんだよ
だってお約束だもの、これは仕方ないよねぇ。
人気アニメ 嗚呼~! 大神(アマテラス)様~!に出てくるみたいな
ちょっとムッチリした女神がピカ~ッと旭光と共に現れて
"其方(そなた)は選ばれし勇者
妾(わらは)と共に闇祓いて、世界に光を灯しましょうぞ"
なんて手と手を取り合って、これは闇を払う、
イイ汗かいちゃうかもしれんなぁ~ プフフフ!」
そう思うと俺は急にウキウキして眠りについたんだ。
暗いところで目が覚めた
向こうに明かりがチラチラと瞬いている
なんか人影も動いているように見えるぞ。
「なんだろ あれ? なんかいい匂いがするぞ!」
俺は明かりの方に急いで近づいていった
すると景気よく薪を焚べて、焚火をやっていたんだ
しかも、その火でバーベキューをやってるんだよ!
ジュウジュウとお肉の焼けるいい匂いがプンプンしている
暗いのでもっと傍に寄ってみてビックリした。
サバゲチームのみんながいるじゃないかぁ!
佐野さんは笑いながら、豪快にビールを飲んでいる。
小野寺君は焦げすぎないように肉を
こまめにひっくり返してる。
手前にいる源さんは通らしく、鳥レバを塩で焼いて
日本酒の小瓶でグビグビとやっていた。
「なんだ! みんなもこっちに来てたんですか
聞いてくださいよ
俺 すっごい攻撃ヘリを撃墜したんすよ
ほんとあの戦いを見せたかったなァ
あとお肉ください」
俺は三人に話しかけたんだけど、なんかおかしいんだ
皆は俺のことにまるで気が付いてない。
耳元で話しかけても まるで無視されてる
いじめがはじまったのかと思ったけどそうじゃなくて
なんか、まったく俺が見えてない感じなんだよ。
その内、肉の焦げる臭いがすごく強くなってきた。
「ちょっとちょっと! 佐野さん、肉焼きすぎだって!
焦げてる焦げてるよ!」
その時だ、バァっと火が舞い上がって三人の体に燃え移った。
ボワーッ! ジュゴゴゴゴッ!
佐野さんも小野寺くんも まるで松明みたいに火に包まれた。
「わー 大変だ どうしたらいいんだ 早く早く消せ~っ!」
燃えながら、源さんが立ち上がるとゆっくりとこっちを振り向いたんだ。
炎に包まれて髪も焦げて、裂けた服の間からだらりと
焼け爛れた肉見えた
蒸発する油まではっきりと見えたんだ!
源さんはなにか言いかけながら、恨めしそうに俺を睨むと
ドサッと地面に崩れ落ちていった。
「うわーっ!!」
俺は叫び声をあげながら、目を覚まして飛び起きた。
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