第15話 懇願

長老のニギニギさんはそれを受けて


「ババリウム/Vavarium は昔から、

この星でしか採れない希少な鉱物なんですじゃ

なんでも素子つうもんに使うと性能が

爆アゲのアゲアゲつうことで

他の星からもずいぶんと高値で

買い取ってもらっとったんですわ」


(これは意外な村の収入源の話を聞いてしまった

他の宇宙人たちと交易してたなんて、

村は見かけによらないんだなぁ・・)


「では 村の人たちはその鉱石を掘る為に

拉致されたんですね?」


そう聞くと、ニギニギさんは頭(かぶり)を

振ってこう答えたんだ。


「それもありますじゃ じゃがのぉ 

本当はそれよりもっと恐ろしいことがあるんですじゃ」


若い連中の多くが連れていたかれてから暫くして

村の外れに連れだされた若者の遺体が転がっとったんですよ


ワシ それ見てビックリしましたんじゃ


なんにもなかった! その遺体は空っぽでしたんですじゃ!


目ん玉やら心臓やら、他の内臓もなんもかんも

全部がくり抜かれて

血まで抜かれて空っぽで棄てられておりましたんじゃ!」


うっ うう~く~っ・・・


それを横で聞いていたポレポレさんが嗚咽をあげた


メメケさんがポレポレさんの肩に手を

置きながらこう言葉を添えた。


「あいすまんこってす 

死んでたのはこのポレポレの姪っ子だったんです

まだ17才になったばかりだったんですよってに・・」


「酷ぇ! なんてことしやがるんだ・・」


俺は怒りを感じずにはいられなかった。


「あなた様に授けられた、そのお力で

どんかあいつらを追い払ってくだっせぇ

この村を いんや この星を救ってくだっせぇ!」


三人は皆一様に、頭をさげると俺を拝むように言ったんだ。


(えっ!? この星を救えだってっ! 

なに言い出してんのこの人たち・・

いや~ ムリムリムリ ダメダメダメ ムダムダムダ


だって、それは無理しょ 

俺はサバゲやシューティングゲームの延長みたいな

ノリで、こっちの世界に来てるだけなんだからねぇ 


だいたい世界を救うってのは、有名政治家ファミリーのJrとか

数千万ドルの大金をポンと出せる社長さんとか 

あるいは宇宙(そら)の戦場で、一人で5隻もの戦艦を沈めるとか

そういう人がやるべきポジションだもんなぁ

俺なんか絶対に無理ゲーだよ うんうん・・)


「う~ん それはちょっとどうなんですかねぇ~」


煮え切らない俺の態度を見て、ポレポレさんは

床に額をこすりつけながら


「どんか お願げぇですじゃ! 

ワシはあなた様がチャンシーどもの空飛ぶ乗り物を

叩き落とすとこを木の影から見とりました


そのお力で何卒 皆を助けってやってくだっせぇ!」


そう力んで 哭いて訴えてきた。


(まいったなぁ・・気持ちは解るよ、

解るけど俺一人の力でなにができるんだろ

そのチャンシー星人だって何十万

いや何百万っていう部隊かもしれん


だけど、その一方でこの魔銃を使って暴れて

やりたいという気持ちも正直なところ、

まったく無いわけではないんだけどなぁ・・)


グゥッ ググゥ~!!


その時だった、俯いて迷っている俺の

お腹が大きな音で鳴ったのは


それを聞いて緊張しきっていた三人の顔が少し緩んだ。


「おんや~ これは気づきませんで、すまんこってす

早速に飯の支度をしますよってちょっくらお待ちくだっせぇ」


メメケさんは慌てて厨(くりや)のほうに駆けていった


「わしらも膳の支度をしよりますよって、どうでしょうか?

それまで庭など見ていてくだっせぇ」


俺はその申し出にホッとして、大きく頷いた。



「はい ぜひそうします」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る