10. 反省しました。

 それから私はなんだか気持ち悪くなっちゃって、しばらく清村くんのことは封印した。いつも心のお花畑で清村くんのことを考えていたのだけど、そのお花畑を封印した。落ち着いてから和歌子にことの顛末を全部電話で話したら、仰天された。でも笑ってくれた。和歌子が笑ってくれたから私は、やってよかったかな、と思えた。無茶なことをしたな、と反省してたんだけど、和歌子が笑ってくれたからいいや。清村くんへの気持ちもなんだかすっかり…。

「蝶子も、合コン…は合わないな。バイト先をイケメン店員がいるオシャレカフェとかに変えて彼氏つくろ!現実の男子と関わろう!」

 たしかに、私は大学に入っても、8割近くが女子しかいない文学部。バイト先も、店員もお客さんもほぼ女性しかいない雑貨店。もっと積極的に彼氏を作れそうな場所へ行かなければならないかもしれない。でも私はバイト先の雑貨店を気に入っていた。私の毛糸やフェルトで作ったファンシーな動物を店に飾って宣伝用POPを書かせてくれたりするので楽しいのだ。私は清村くんのお花畑が使えなくなった心の穴をファンシーな手芸動物たちで埋めていった。タコやチョウチンアンコウなどの深海魚を細かく作るとお客さん達の反応も良くて嬉しかった。私の腕はどんどん上がっていった。正直なところ、私は現実の男の人と付き合ったりデートしたりということにはそんなに興味がないのかもしれない。清村くんのことだって、現実の清村くんへの欲求よりも和歌子たちと盛り上がることが主にたのしかったのだ。清村くん、長年あなたの存在を利用してしまってごめんなさい。

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