6. お弁当のエビフライ

 2年でも和歌子とは同じクラスになった。和歌子と同じバスケ部のルゥちゃんとは今回初めて同じクラスになった。

「お弁当にそんな立派なエビフライが入るんだね。おいしそう。ときメモのイベントCGに出てきそうなおいしそうな手作り弁当だ…」

「ほんとだよ。ルゥちゃんのママすごいよね。部活の試合のときのお弁当もいつもめっちゃおいしそうだもん!プロ級」

「やあやあ。どうもどうも。食べる?てか蝶子ちゃんイベントCGって…。ウチ、きゃるBのタリィくんがめっちゃくそ好きなんだけどわかる??」

「わかるよ!ゲームやったことはないけどさ、髪青い子だよね。短パン白ハイソってのが清村くんとかぶってるからチェックしてたのよね…」

「清村くん?」

「清村くんっていうH校の子のことを小学校からずっと好きなんだよ蝶子は」

「まじか!小学校からずっとか!」

「そうなのだよね。もう今年で8年目か…。H校2年清村くんの情報求む。」

「H校かー…。知り合いいないなぁ。なんか聞いたら教えるわ!」

「どこの大学受験するのかを受験までに突き止めないと同じ大学で運命の再会ができないんだよう」

「ちょこたんは運命の再会を狙っているのだ。H校だし、東大行けるくらいがんばっとけ!」

「うう…。がんばる…」

 私は具沢山タルタルソースとキャベツの千切りと白身魚フライをコッペパンに挟んだものを頬張った。売店の新商品だ。前からあったと思ったが、タルタルが具沢山になったところが新しいらしい。私が遠慮したルゥちゃんのエビフライを和歌子がおいしそうに尻尾まで食べている。

「ルゥちゃんは好きなひといる?」

 私が聞いていいのか様子を見ながらストレートに聞いてみた。

「ウチはいまのところ二次元専門だなぁ。毛穴とかニキビとか、なくていい…!タリィ!タリィがミュージカルになったら2.5も考えるかも」

「は~…!なんでうちの売店には若いイケメンの店員がいないんだ。つまらん」

 ため息をつく和歌子。整体院だか整骨院だかの、以前一緒につむじ狩りをしたあのタカノとかいう若い男のことはもうすっかりどうでもよくなったようだ。


 こうして私たちは日常の話とか趣味の話とか好きな男の子の話とかをして日々過ごしていた。それぞれの好きな男の子をBLのカップリングにするなら誰が受けで誰が攻めかとかどの組み合わせが似合うかとかの議題はよく盛り上がった。だから会ったこともない友達の好きな人も、ずっと会ってない私の好きな人のことも、会ったことのないアイドルとか漫画のキャラクターと同じくらいの存在感でずっと私の近くにあったのだ。(とかく和歌子は手持ちのカードがすぐ増えるので新キャラが出るたびにつむじ狩りをするなどして皆で共有イメージを高め、新しい組み合わせや受け攻めを考えて皆で検討し合うのが楽しかった)





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