4. つむじ狩り

 私が小学校の塾で出会って好きになった清村しむらくんは、あれ以来ずっと私の好きな人の座に君臨し続けている。清村君は中学受験をしてこの近隣で一番頭の良いH校へ行った。H校は男子校なので私は同じ学校は受験せず、女子校のN校へ入学した。どちらも中高一貫校なので、私も清村くんもまだあと2年くらいはH校とN校の生徒の予定だ。清村くんと同じ大学に行って運命的な再会をしたい、というのが今のところ唯一の私が勉強を頑張るモチベーションになっている。私も私の友だちにも、小学生時代に男子と仲良く接していたタイプはいないので、H校に行った男友達のつて、またはH校に彼氏がいるN校生の友人を頼って清村くんの現状の情報を入手するなどということはできなかった(思いつきすらしなかった)。高校からは文化祭が大々的に行われ、外部の一般人も遊びに行くことができるので、その日は友達とH校へ繰り出し、血眼になって清村くんを探したが、はっきりと見つけることはできなかった。あの日もまさにつむじ狩りだった。それらしきつむじの目星をつけることすらできなかったが。

「あそこの整体。黒髪短髪のややマッチョ、みえる?」

「見えないね。ガラスが反射してここじゃだめだわ。近づこう」

 和歌子と私は市街地にある整体院を反対側の歩道から観測したが、道路を渡り顔割れしてない私が正面から覗くことにした。

「あ~!ドキドキするー!めっちゃすごいフェロモンなんだけど、ガラス越しじゃわからんかも!はー。どうかなー。見てみて蝶子チョコたん」

「よし任せろ。めっちゃ覗いてくる」

 私は整体院の反射するガラス張りのドア部分に顔を近づけ手でひさしを作り中の様子を観察した。受付には今は誰もいないようだが、長椅子で待っている様子の老人が一人いるので、そのうち誰かしら来るに違いないのでそれだけでも見て行こうと、1分くらいその状態のままじっとしていると、奥から整体師らしき服装の男が出てきた!こいつか!ここにいたら怪しいので私は男の姿を目に焼き付けるとすぐに和歌子の元に戻った。

「見たわ!たぶん。それっぽい黒髪短髪だった」

「どうどう!?モテそう??フェロモン見えた!?」

「わからん…。たしかに顔はイケメンじゃないね。でも整体師って制服着てるしモテそうかもしれんね。フェロモンも遠くからじゃ伝わらんかったね」

「制服のフェロモンよね!あるわ…。モテるんだろうな~!でもがんばるもん!」

「さて、ここまで来たし千鳥のたい焼きでも食べていきましょうかね」

「さてはそっちが蝶子の本命だな。行こう行こう!」

「千鳥のサラダたい焼きが大好きだよわたしは…。二個買おう」

「私はチョコとカスタードだな!!」



 

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