2. 塾が同じだったの。
彼は、小学校の頃に通っていた塾で一緒だった。
成績順でクラスが分けられ、席順も前から半分までは成績順で座るようになっていた。彼は、この近隣で一番入塾テストが難しいといわれているこの塾の中でトップの成績だった。私も成績優秀だったので、彼とはよく隣の席になった。彼は遠いところから自転車で通っていたので、いつもギリギリの時間に塾に入ってきて、ハァハァと顔を赤くして「間に合った…」と小さい声でひとり言を言っていた。今思えばその言葉に対して「ギリギリセーフだね」とか「よかったね」とか、明るく答えてあげればよかったのかもしれない。けれども私は卒塾するまで一度も彼と話すことはなかった。
私はいつも成績一番で、色が白くて、遠いところからも自力で(私は親に車で送ってもらってた)がんばって通っている彼のことが気になって、いつのまにか好きになっていた。彼の隣の席を手放さないために、また、彼より良い成績を取ったら、彼に意識してもらえるんじゃないか?なんて期待して、クラスと席替えのかかった塾のテスト勉強には精を出していたっけ。
彼とは小学校が違ったので、私が彼と会っていたのは小4から小6の週2~3回の塾のある日だけだった。毎年冬になると彼はよく鼻水を出して休み時間にティッシュで鼻をかんでいた。それも私はなぜだか気に入っていた。頭いいのに鼻の粘膜が弱いなんて、なんだかかわいい。あと鼻のかみかたにとても品があったのだ。彼のぼっちゃん刈りのような髪型に似合う品のある鼻のかみかた、寒いのに半ズボンでひざ下までの長靴下。彼のそういうところが全部私は気に入っていた。
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