30. 文化祭2日目

「美蘭おはよー!」


「おはよう!」


「着替え行こ!」


「うん!」


学校に着き、早速結衣と着替えをしに更衣室へいく。


「美蘭…」


「どうした?」


「キスマ見えてるよ…。」


「え!?」


鏡を見てみると胸元が大きくあいたチャイナドレスからキスマークが見えていた。結衣には、昨日制服に着替えているときに気付かれてしまっていた。


「どうしよう…。」


「とりあえず、コンシーラーで隠す?」


「何それ?」


「メイク道具。ファンデーションみたいな。」


メイクはいつもほくにやってもらってるから全然わかんない。


「ほく持ってるかな…。」


「もう外にいるかも。聞いてみたら??」


「うん。」


更衣室の外を覗いてみるとほくがいた。


「ほく、コンシーラーある?」


「教室にあるよ。」


「持ってきて。」


「今?」


「うん。」


「分かった。」


更衣室の扉から頭だけ出してほくに頼んだ。


「美蘭、私ちょっと呼ばれてるから先行くね!なんかあったらメッセージ送って!美蘭はちょっと遅れるって皆んなに言っとくから!」


「結衣、ありがとう。」


結衣が教室に戻ってしまい、更衣室にいるのは私だけになった。キスマーク隠せるかな。


「美蘭、」


「はぁい。」


ほくの声が聞こえ、更衣室から出る。


「ほく、キスマーク。」


「あ。」


「これ消せる?」


「うーん、どうだろ。やってみる。」


「やって。」


「とりあえず、空き教室行こ。」


「分かった。」


ほくと2人で空き教室に行く。


「みぃ、おいで。」


「うん。」


ほくに胸を直視される。恥ずかしい。


「こんなん俺襲いたくなっちゃうんだけど。」


「えぇ。」


「何これ、罰ゲーム?」


「はやく消してよ。」


「はい。」


「どう?」


「うん。ほとんど分かんない気がする。」


「良かった。」


隠せたみたい。


「ほくっ、やだ」


ほくに深いキスをされる。ここ学校なのに…。


「んっ…」


「ごめん。」


「もう。」


「今日の衣装エロすぎ。男と喋るの禁止。」


「無理だから。」


「えぇ。」


「あ、ほく浴衣はだけてるよ。」


「直して。」


「はい。他の子の前で見せちゃダメだからね。」


「分かった。」


「そろそろ行こ。」


「うん。」


2人で教室に戻る。


「あ、北斗くんちょっといい?」


「はい。」 


教室に戻るとほくがメイク係の美咲ちゃんに呼ばれていた。


「美蘭!大丈夫だった?」


「なんとか隠せた。どう?」


「うん、全然分かんない!」


「良かった。」


「もう、北斗あとでお仕置きだね。」


「だね。笑」


これで安心して、接客できる。


「美蘭お待たせ。」


「遅い。」


「ごめんね。メイクしよっか。」


「うん。」


美咲ちゃんと話してたから嫉妬して八つ当たりしてしまった。


「はい。できたよ。」


「ありがとう。」


準備がすべて終わった。


「はい、じゃあもうすぐ始まるので準備してください。」


接客は不安だったけど、今日で文化祭が終わってしまうのは少し寂しいなぁ。


「美蘭、行こ。」


「うん!」


今日はほくと2人でクラス展を回ることになった。結衣たちも2人で回るらしい。2人の距離が縮まるといいな。


「最初どこ行きたい?」


「ここがいい!」


最初はミニゲームができる2年生のクラス展に行くことにした。


「こんにちは~!2名様ですね。どうぞ~!」


「ありがとうございます!」


クラスに入ると元気な先輩が出迎えてくれた。


「え!1年生にこんな可愛い子いたの!?」


「やば、めっちゃ可愛いね?」


「…ありがとうございます。」


男の先輩に話しかけられる。ちょっと怖い。


「男の子イケメン!!」


「分かる!美男美女すぎる。」


ほくも女の先輩に話しかけられていた。


「名前は何て言うの?」


「美蘭です。」


「可愛いー!あの男の子彼氏?」


「違います。」


「えっそうなの?付き合ってないけど、一緒に回ってるの?」


「…えっと、宣伝係やってて。」


「なんだ、そういうことか!じゃあ、美蘭ちゃん連絡先交換しようよー!」


「SNSならできます。」


「しよしよ!」


「俺も!」


「はい。」


男の先輩怖い…。ほくは女の先輩に絡まれてて助けてくれないし。


「美蘭ちゃんクラスは?」


「国際学科です。」


「そうなんだー!何やってるの?」


「コスプレカフェです。」


「そうなんだー!だからチャイナドレス着てるんだね!」


「そうです。」


先輩に胸元をすごく見られている気がする。もう、ここから出たい…。


「すみません、ちょっと一回出ます。また来ますね。」


ほくが助けに来てくれた。


「美蘭、大丈夫?」


「うん…。」


「ごめんね、すぐ助けられなくて。」


「うん。大丈夫。」


「どっか、他のところ行こっか。なんか食べる?」


「うん、食べる。」


食べ物を売っているクラス展に行った。美味しそう。


「みぃ、アイス食べる?」


「食べたい!」


アイスを食べて、元気が出た気がする。

その後は、クラス展を回ったり、吹奏楽部の演奏を見たりすることができた。


「ほく、次どこ行く?」


「んー、ここは?」


「いいね!行こ。」


「…北斗くん?」


次に行く場所を決めていると、ほくが女の人に話しかけられた。制服が違うから他校の人みたい。


「…こんにちは。」


「北斗くん、久しぶり!覚えてる?」


「…はい。」


「まぁ、忘れるわけないか!笑」


誰なんだろう。なんか嫌な予感がする。


「なんか用ですか?」


「冷たいなぁ。笑 …あれ、」


その女の人が私に気付き、じっと見つめられる。


「北斗くん、もしかしてこの子美蘭ちゃん?」


突然自分の名前が呼ばれて驚いた。なんで私の名前知ってるんだろう。


「先輩には関係ないです。」


「こんにちは。美蘭ちゃんだよね。」


「…こんにちは。」


中学の先輩なのかな。


「山田瑠奈です!」


その苗字を聞いた瞬間、嫌な予感が当たっていることに気がついた。

ほくを脅していた先輩だ。そしてほくが初めてエッチをした先輩。


「北斗くんがこの高校にいるって聞いて文化祭来ちゃった!美蘭ちゃんも一緒だったんだね。」


「先輩もういいですか?」


「待ってよー!ハジメテの相手に冷たくない?またエッチする?私まだ北斗くんのこと好きなの。」


「無理です。さようなら。」


ほくに手を引かれ、先輩から離れる。

そのまま空き教室に連れてこられた。


「美蘭、ごめん。嫌な気持ちにさせて。」


「…。」


「ごめん。」


ほくに強く抱きしめられる。涙が止まらない。過去は変えられないけど、でもすごく悲しい。


「美蘭、大好きだよ。」


「うん…。」


「笑った顔めちゃくちゃ可愛いし、甘えん坊なところとか、」


「…うん。」


「数学苦手でも頑張ってるところとか、純粋で何事にも一生懸命で、」


「うん、」


「誰にでも平等に接して、優しくて、俺にめちゃくちゃ頼ってくれるところとか、寝顔可愛すぎるところとか、」


「もう。笑」


「俺、美蘭のこと絶対幸せにする。」


「うん。」


「好きだよ。美蘭しか見てない。」


「うん。」


ほくにこんなに愛されてたんだ。先輩のことなんかどうでもよくなってしまった。


「ほく、」


「ん?」


「…美蘭、ほくとエッチしたい。」


「えっ。」


「ダメ?」


「ダメじゃないけど、どうしたの?先輩のせい?」


「ううん。ほくが大好きだからもっと近づきたい。ほくのこともっと知りたい。」


「本当に?先輩に嫉妬してとかじゃないよね?」


「嫉妬はするけど、でも違う。ほくと一つになりたい。」


「もう、そんなこと言ったら俺止められないからね。」


「うん。」


今までは、先輩や他のほくとエッチした人達に嫉妬して、負けたくないと思っていたけど、今はそんなことより、ほくにもっと近づきたいという気持ちが大きくなっていた。


「嬉しい。みぃ、ありがとう。」


「うん。ほく大好き。」


「俺も。文化祭が終わったらシよっか。」


「うん!」


「もう、可愛すぎる。」


「今日エッチする?」


「どうかなぁー?笑」


「今日がいい!」


「今日かもね?」


「うん!今日!」


「かわい。みぃ落ち着いた?」


「うん!」


「じゃあ、お昼ご飯買いに行こっか。」


「買う!」


ほくが彼氏でよかった。すごく幸せ。


「みぃ、そろそろ教室行こっか。」


「はーい。」


「メイクもちょっと直そっか。」


「うん。」


お昼ご飯を食べ終わり、教室に行く。


「美蘭ちゃん、まだちょっと早いよー!」


「理沙ちゃんお疲れ様!裏でちょっと待ってるね!」


教室は、カーテンで仕切られていて、調理している様子が見えないようになっている。そこで、メイクを直したりもできるようになっている。


「みぃ、おいで。」


「うん。」


教室の隅でほくにメイクを直してもらう。みんな忙しそうで、見られてないみたい。


「できた。」


「ありがとう。」


「あ!美蘭と北斗!」


メイクが終わり、少し休憩していると結衣と寛太が入ってきた。


「美蘭、楽しめた?変な人に絡まれなかった?」


「大丈夫だよ!結衣も楽しめた?」


「うん!楽しかった!」


結衣も楽しめたみたいで良かった。


「結衣、これ膝にかけな。」


「あ、ありがとう。」


寛太が結衣にパーカーを渡していた。なんか、2人すごくいい感じな気がする。


「4人とも、そろそろ接客お願いしまーす!」


『はーい。』


13時になり、接客を交代する。4時間頑張ろう。


「いらっしゃいませー!何名様ですか?」


「2名です。」


「あちらの席どうぞ!」


昨日のように、デザートを運んだり、写真を撮ったりしながら接客をする。今日は文化祭が一般公開されているから、昨日と比べ物にならないくらい忙しい。


「美蘭、北斗ー!」


「ママ!」


ほくと一緒に名前を呼ばれて振り返ってみると、ママパパ、麻美ちゃん北斗パパがいた。


「めちゃくちゃ忙しそうだね。」


「忙しい…。」


「北斗かっこいいね。」


「実紅さんありがとう。笑」


「美蘭も可愛いー!!」


「麻美ちゃんありがとう!」


「文化祭とか学生に戻った気分。」


「懐かしいねぇ。」


「注文決まったら教えてねー!」


「はーい。」


4人でクラス展を回ってきたみたい。4人とも高校の同級生だから、文化祭の雰囲気をすごく懐かしがってた。


「美蘭のお父さんと北斗のお父さん初めて見た!2組とも美男美女すぎるね。」


「確かに初めてだよね。きっとみんな喜ぶよ。笑」


伝えたらみんな喜ぶだろうなぁ。


「美蘭ー!」


「はーい!」


「注文いい?」


「うん!」


「パンケーキ4つとツーショット4つお願いします!」


「えっ、ツーショットするの?笑」


「うん!私と麻美が北斗とで、パパと隆史が美蘭と!笑」


「もう。笑 ちょっと待ってて。」


4人とも文化祭楽しみすぎてる。笑


「ほく、こっち来て。」


「うん。」


ほくを呼ぶ。


「じゃあ、美蘭からね。まずパパ、ツーショット撮ろ。」


「やったー!美蘭、可愛い!」


「もう、うるさい。はい、チーズ。」


「これ額縁に飾ろうかな。」


「やめて。次、北斗パパね。」


「美蘭、モテモテだなぁ。」


「そんなことないよ。笑 はい、チーズ。」


「ありがとうー!俺も額縁に飾っていい?」


「やだ。笑」


もう、パパ達ふざけすぎ。笑


「次、ほくね。」


「はーい。じゃあ、母さんから。」


「はーい!」


「はい、チーズ。次、実紅さんね。」


「はーい!」


「はい、チーズ。できた。」


「ありがとう。北斗、浴衣似合ってるわね。」


「ありがとう。」


ママ達、すごく楽しんでくれたみたいで良かった。この後も他のクラスを回って帰るみたい。


「北斗くん!」


ママ達が帰ってしばらくすると山田先輩がお友達と一緒に私たちのクラスに来た。


「え!瑠奈の言ってた子めちゃくちゃイケメンじゃん!」


「でしょ!」


「いらっしゃいませ。2名様ですか?」


寛太が代わりに接客をした。寛太は山田先輩のことを知っているみたい。


「私、北斗くんと知り合いなんで、接客北斗くんにしてもらってもいいですか?」


「すみません、いま北斗忙しくて。」


「まぁ、いいや。壁ドンとかできるんだよね。北斗くんで。」


「すみません、接客した人が壁ドンすることになってるんです。」


「嘘でしょ。さっき指名してる人いたもん!」


「…えっと、」


「先輩もう帰ってもらえませんか?」


寛太の嘘がバレてしまい、ほくが先輩の所へ行く。


「美蘭、あの人誰?北斗の知り合い?」


結衣に事情を話す。


「え!?あの人やばすぎ。」


「怖すぎる…。」


教室も少し変な空気になってしまっている。


「北斗くん、壁ドンしてよ!」


「無理です。」


「なんで?お金払うよ?」


「先輩、ちょっと教室出て話しませんか?」


「えっ。あ、うん!話そ!」


ほくが先輩と教室から出て行ってしまった。でも、きっと大丈夫。


「美蘭、大丈夫だよ。北斗は美蘭のことしか見てないから。」


「うん!大丈夫。」


自分でもこんなに落ち着いていることに驚いた。


「ごめん。お待たせ。」


ほくは、思いの外すぐ戻ってきた。

先輩はもう戻ってこなかった。


「みんな、お疲れ様ー!!これでクラス展終了です!」


『お疲れ様でした!』


あっという間にクラス展が終わった。すごく忙しかったけど、楽しかったな。


「美蘭、お疲れ!」


「結衣もお疲れ様!」


「今日忙しすぎたね…。」


「うん…。早く座りたい。」


「後夜祭まで休憩しよ。」


「そうだね。」


クラス展終了から1時間後の18時から後夜祭が始まる。


「美蘭、お疲れ様。」


「ほくもお疲れ様。」


「夜ご飯何か買ってくるよ。何がいい?」


「おにぎり。」


「だけでいいの?笑」


「うん。疲れすぎてあんまりお腹空いてない。」


「分かった。ちょっと待っててね。」


ほくに頭を撫でられる。


後夜祭が終わったら文化祭が終わる。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る