14. 苛立ち

あっという間に5日間のゴールデンウィークが終わり今日からまた学校が始まる。


『行ってきます。』


「行ってらっしゃい!」


また、今日から授業か…。やだなぁ。


「ほく、今日学校休んで遊ぼ。」


「無理。」


「学校行きたくない。」


「なんで?」


「授業受けるの疲れるし、…先輩怖い。」


「俺がずっと一緒にいるから大丈夫。」


先輩にこの前呼び出しをされてから特に何もなかったけど、また学校が始まって少し怖い。でも、ほくがずっと一緒にいてくれるなら大丈夫かな。


「もう、ほく邪魔。」


「え?なにが?」


「なにがじゃないでしょ。」


休み時間のたびにほくに空き教室へ連れてかれて、ずっと抱きついてこられる。ずっと一緒にいるってこういうこと?


「わざわざ空き教室来なくても大丈夫だから。」


「北斗、美蘭のこと甘やかし過ぎでしょ。笑」


結衣と寛太にもこの光景を見られて恥ずかしすぎる。

でも、2人とも先輩とのことを心配して空き教室にまで着いてきてくれて、本当に優しい。


「もう、授業始まるから戻ろ。」


「そうだね。北斗も美蘭から離れて。」


「あ、美蘭今日学校休んで遊ぼって言ってたよね?やっぱ、俺と遊ぶ?」


「もう、ほく戻るよ。」


最近、結衣と寛太にも少しずつ家でのほくが出てきている。笑 2人はもう気にしてないみたい。


「美蘭、俺トイレ行ってくるから、結衣と教室で待ってて。すぐ戻ってくる。」


「分かった。」


昼休みになり、屋上に行こうとしたけど、ほくに言われて結衣と教室でほくを待つ。


「北斗遅くない?」


「遅いよね。ちょっと探してくる!」


ほくがなかなか戻ってこないので、探しに行くことに。


「あ、亮太くん、ほく見なかった?」


「あ、北斗なら下駄箱で見たよ。」


「下駄箱?分かった!ありがとう。」


ほくを探していると亮太くんとすれ違ったので聞いてみると、下駄箱でほくを見かけたらしい。なんで下駄箱にいるんだろう。


「あ、いた。」


下駄箱に行くと、ほくを見つけた。それと、女の子…?


「好きです。付き合ってください。」


「ごめんね。付き合えない。」


ほくが女の子に告白されていた。高校になってほくが告白されているところ初めてみた。なんで下駄箱にいるの?すぐ戻ってくるって言ったのに。告白されてるし。なんか、モヤモヤする。


「あれ、美蘭?」


「うん。」


「どうした?」


「すぐ戻ってくるって言ったじゃん。トイレ行ってたんじゃないの?」


「トイレ行ってたけど、その後呼び出されたから下駄箱に行った。」


「ふーん。ずっと一緒にいるって言ってたのに。」


「みぃ、怒ってる?」


「怒ってない!」


なぜかイライラしてほくに当たってしまう。ほくは悪くないのに。何この気持ち…。


「あ、北斗、美蘭!はやくご飯行こ!」


「うん。行こ。」


屋上に行き4人でご飯を食べる。屋上は相変わらず、私たち以外誰もいない。


「あ、そうだ。今日委員会の集まりあるよね?」


「えっ、そうだっけ?」


「うん。北斗、学級委員もあるでしょ?」


「うん。」


「えぇ。知らなかった。図書委員会ってなにするの?」  


「分かんない。とりあえず、今日の放課後図書室に行かないといけない。」


今日委員会があるみたい。全然知らなかった。初めての委員会だ。


「美蘭、終わったら教室いるから、来て。」


「分かった。」


「美蘭、なんか北斗に冷くね?笑」


「私も思った。笑」


「べ、別にそんなことないよ。」


みんなにもバレてる。いつも通りにしなきゃ。


「ほく、さっきは怒ってごめん。」


「いいよ。俺こそごめん。」


教室から帰る時ほくに謝る。許してくれたみたい。


「美蘭、図書室いこ!」


「うん!いこう。ほく行ってくるね!」


「行ってらっしゃい。後でね。」


「うん!」


放課後になり、図書室へ行く。早く帰りたい…。


「あれ、美蘭ちゃん?」


「圭太くん!?図書委員だったの?」


「そうそう。美蘭ちゃんもなんだね。」


林間学校で、告白してくれた圭太くんに話しかけられる。圭太くんも図書委員会だったみたい。


「図書委員会では、昼休みに交代で貸し出しや返却の手続きをします。大体、2週間に1回くらいのペースで順番が回ってくるので、忘れないようにしてください。」


『はーい。』


「では、以上で委員会を終わります。」


「美蘭ちゃん、またねー!」


「うん!ばいばいー!」


委員会が終わり、教室に戻る。結衣は部活に行った。女子バスケ部に入ったみたい。


教室に戻るとほくはまだいないみたい。宿題をやりながらほくを待つことにした。


「えぇー!そうなの!面白い。笑」


「でしょ。笑」


理沙ちゃんとほくが話してる声が聞こえる。ほく笑ってる?


「あれ、美蘭ちゃん!北斗くん待ってたの?」


「う、うん。」


「そうなんだ。北斗くんめちゃくちゃ面白いね。笑 」


「俺、面白くないって。笑」


「じゃあ、私そろそろいくね、美蘭ちゃん北斗くんばいばい!」


「理沙ちゃん、ばいばい!」


「じゃあね。」


理沙ちゃんも部活に行った。ほくが他の子の前で笑ってた。私だけの前でしか笑わなかったのに。


「美蘭、帰ろっか。」


「うん。」


「どうした、美蘭ちゃん元気ないの?笑」


「やめて。」


私を見てほっぺをつまんできた。なんか、イライラしてしまう。今日、ほくに怒ってばっかだ。


「もう、美蘭ちゃん今日怒りっぽいー。」


「うるさい。ほくきらい。」


「え。どうした?まじで。」


「なにもない。」


ほくに怒ったら、驚いてた。もうどうしたらいいか分からなくて帰り道は終始無言。何この気持ち。


『ただいま』


「2人ともおかえりー!」


家に帰り、麻美ちゃんに会った後ほくの部屋に行く。会話はない。もうどうしたらいいか分からないから結衣にメッセージを送り相談する。

結衣に「ほくといるとイライラしちゃうんだけど、どうしたらいい?」と送った。


ピコンッ。


部活が終わった結衣から返事が来る。「え、どうして?喧嘩したの?」と。「喧嘩はしてないけど、ほくが告白されてたり、理沙ちゃんと笑い合ってるとこみたらモヤモヤしてほくに当たっちゃった。」と返事をした。


ピコンッ。

結衣からまた返事がきて見てみると、「それ、嫉妬じゃない?美蘭も北斗のこと好きになったの?」。


「え、?」


「みぃ、どうした?」


「いや、なんでもない。」


私がほくのこと好き?結衣は恋愛的な意味で言ってきたんだよね。驚いて、声が出てしまった。ほくに聞かれたけど、急いで誤魔化した。


結衣にはとりあえず、明日相談に乗ってもらうことにした。


「ねぇ、みぃ」


「なに?」


「なんか怒ってる?俺なんかした?」


「してないよ。」


「じゃあ、なんでそんな感じなの?」


「いつも通りだもん。」


「違うだろ。」


ほくに少し冷たい感じで言われて私も怒りながら返事をしてしまった。ほく呆れてるかな。


「みぃ、ちゃんと話して。帰りの時からだよね。」


「うん。」


「俺なんかしちゃったかな?」


「うん。」


「話してくれる?」


今度は、優しく原因を聞き出そうとしてくれる。あんなに冷たくしちゃったのに。


「ほく、笑ってた。」


「え?いつ?」


「理沙ちゃんといる時。」


「笑ってたっけ?それがどうかした?」


「笑ってたもん。みぃといるときしか笑ってなかったのに。理沙ちゃんが好きになったの?」


「違うよ。」


「ほく理沙ちゃんといるほうが楽しいんじゃない?」


こんなの明らかに嫉妬だよね。ほくは何にも悪いことしてないのに。呆れられちゃう。


「みぃ、そんなことで怒ってたの?笑」


「そんなことじゃないもん。」


「ごめん、ごめん。笑 理沙ちゃんのことはなんとも思ってないよ。俺、みぃのことが好きだから。理沙ちゃんとはみぃの話してたから笑ってたのかも。」


「みぃの話?」


「うん。みぃの小学校とか中学とかの時のことを聞かれてそれを話してた。」


私の話をしてたんだ。全然知らなかった。なんか少しモヤモヤが消えた気がする。


「美蘭ちゃんもしかして嫉妬してる?笑」


「してない!」


「可愛すぎるんだけど。」


床に座っているとほくに後ろからハグをされる。耳元で、嫉妬してるか聞かれたけど、否定した。でも、嫉妬してるのはバレバレみたい。


「みぃかわいいねぇ。」


「うるさい。」


「ちゅーしていい?」


「だめ。」


「えぇー。はやく俺のこと好きになってよ。幸せにしてあげる。」


「な、なんないから。」


さっき結衣にほくの事が好きなんじゃないかと言われたので、ほくに好きになってと言われて動揺してしまった。


「みぃ可愛いー。嫉妬しちゃったの?笑 あーやばい。」


「もう、暑いから離れて。」


「無理。俺、ずっとみぃが好きだから嫉妬なんかしなくていいのに。」


「重いって。」


ほくがずっと抱きついて離れてくれない。重い…。しかも、めちゃくちゃからかってくる…。


「2人ともご飯よー!」


『はーい』


麻美ちゃんに呼ばれて、やっとほくが離れてくれた。


「なんか、北斗機嫌良さそうね。」


「まあね。笑」


「2人とも学校楽しい?」


「楽しいよ!結衣と寛太と一緒だし、新しく友達もできたの!」


「よかったわね。美蘭は明るいから心配いらないわね。北斗はどう?笑 友達できてる?」


「ほくもできてるよ!亮太くんていう子と、駿くんっていう子と友達になったよ!」


「あら、よかったわ。美蘭がいて本当に良かった。」


麻美ちゃんほくのこと少し心配してたみたい。ほくにも友達できてよかった。


「みぃ、風呂いこっか。」


「うん。」


ほくとお風呂に入る。嫉妬してるのがほくにバレてからほくはずっとニヤニヤしてる…。


「ほく、みぃ明日結衣と帰り遊ぶから、先帰ってて。」


「えぇ。結衣、部活は?」


「明日は休みみたい。」


「俺もついてっていい??」


「ダメ。」


「えぇ。俺、みぃのカバンの中とか入れるよ?」


「無理だから。」


「俺、1人で帰れない。」


「帰れるでしょ。」


「無理。」


「ケーキ買ってきてあげるから。」


「分かったよ…。あと、ちゅーもして。」


「それは無理。」


「なんで?俺、みぃとちゅーしてみたい…。」


「無理。」


「今ちゅーしてくれたら、遊び行っていいよ。」


「しないから。」


ほくがちゅーしてと駄々をこねてくる。めんどくさいなぁ。ちゅーは付き合ってる人同士がするものでしょ?


「ねーーー、美蘭ちゃん、マジでお願い。ちゅーしてくれたら、俺なんでも言うこと聞く。」


「無理だから。ほくうるさい。」


「俺、明日一日いい子にするよ?」


「もうー、うるさいなぁ…」


ほくにキスした。ほっぺだけど。うるさ過ぎて、もう諦めた。ほくは口にキスするのを期待してたみたいだけど、さすがにそれは無理。


「え!!何今の!チューしてくれたの?」


「うん。」


「もう一回して。」


「もうダメ。」


「えぇ。嬉しい。ほっぺだけど。ほっぺだけど…!」


「口は無理。」


「でも嬉しい。みぃありがとう。」


ほくがめちゃくちゃ喜んでた。可愛い。

ほくにおでこにキスされた。


「へへ。みぃ好きだよ。」


「はいはい。明日1人で帰ってね。」


「…はい。」


お風呂から上がりいつも通り映像を見た。明日もなんともないみたい。よかった。


「ほく、おやすみ。」


「ん。おやすみ。」



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