2.オリエンテーション
「美蘭、起きて」
「ん。」
「起きてないだろ。」
「んー。」
「はい、起きて。」
「…おはよう。」
「おはよ。みぃ、体調悪い?」
「え?悪くないよ?」
「そっか。」
「北斗、美蘭ご飯よ~。」
『はーい』
「みぃ行くぞ。」
「はぁーい。」
今日は入学2日目。何するのかな?自己紹介とか?
「2人ともおはよ~。」
『おはよう』
「早く食べて、支度しちゃいなよー。」
『はーい』
「ほく、今日学校でなにするの?」
「自己紹介とか、部活紹介とか色々。」
「部活かぁ…。ほく、部活入るの?」
「入らないかな。」
「そっか。」
部活は、やっぱり別行動をしないといけなくてほくを守れないから入部するのは難しい。ほく本当は何か部活入りたいのかな。
「ほく、髪!」
「はいはい、何にする?」
「んー…。おまかせで!」
「なにそれ。適当にやるよ。」
「うん!」
いつも通りほくに髪を可愛くしてもらう。
「できた。」
「ありがとう!!かわいい!」
やっぱりほくは上手。
『いってきます』
「いってらっしゃい!」
学校に着くと…
「美蘭おはよー!!」
「結衣おはよー!!」
「美蘭、部活入る?」
「部活は入らないことにしたの。」
「そうなんだ。寛太と北斗は?」
「俺はサッカー部かな。中学もやってたし。北斗は?」
「俺も部活入んないかな。早く帰りたいし。」
「えっ。お前、なんか部活やれよ。運動神経めちゃくちゃいいんだからさ。」
「めんどい。」
みんな部活入るのかぁー。
「ホームルームはじめるぞー。」
担任の山岡先生は顔がめちゃくちゃ怖いけど、優しそう。よかった。
「まずは、1人ずつ自己紹介をする。出席番号1番から順に。はい、青木から。」
やっぱり自己紹介あるよね。
「はい、次一之瀬」
「はい。一之瀬北斗です。趣味は特にないです。よろしくお願いします。」
ほくの自己紹介は、少しザワザワしてた。女の子達はほくのことが気になっているみたい。
そんなことより、私の番がどんどん近づいている…。
「はい、次二宮」
「はい。二宮美蘭です。趣味は、音楽を聴いたり、映画をみることです。よろしくお願いします。」
無事に終わった。よかった。
気が抜けたら、なんか頭が痛くなってきた…。
「はい、自己紹介全員終わったな。2限と3限は、体育館で部活動紹介があるから、間に合うように行ってください。国際学科の座る場所が書いてあるからそこに自由に座って。」
『はーい』
1限が終わった。頭痛が治らない。
「…ほく。」
「どうした?」
「頭痛い」
「やっぱりか。」
「え?なんで?」
「朝、体調悪そうだったから。」
「え、自分じゃ全然わかんなかった…」
「次、部活動紹介だし保健室いく?」
「とりあえず体育館行く。」
「そっか。無理そうだったら言って。一緒に行くから。」
「分かった。」
頭痛いけど、まだ我慢できそう。
「はい、じゃあ横4列になるようにすわって。自由でいいから。」
国際学科は、体育館の左端に座る。座るとこは自由なので、私、ほく、結衣、寛太の順で1番後ろに座った。床に座らなくてはいけないので、少し冷たい。
「美蘭、大丈夫?」
「うん、ほくありがとう。」
「えっ、美蘭体調悪いの?」
「うん、少し。」
「寝ちゃいな。」
「そうだそうだ。寝ちゃえ寝ちゃえー!」
「寛太、うるさすぎ。」
「結衣、俺に当たり強すぎ、、。」
みんな、優しい。このメンバーと高校一緒でよかった。
「美蘭、俺にもたれかかりな。寝ていいから。」
「うん…。」
ほくにもたれかかる。なんか、少し良くなった気がする。ほくにくっついていると体調が良くなっていくのはなんでだろう。安心して寝ちゃいそう。
「美蘭、起きて。」
「ん。あれ、もう終わっちゃった?」
「今休み時間。次文化部の紹介。」
「美蘭トイレ行ってこい。」
「はぁーい。結衣いこ。」
「おっけー!」
完全に爆睡してた。しかも、ほくの膝の上で。ブレザー教室に置いてきたから、ほくのブレザーを掛けてくれてたみたい。頭痛いのも結構良くなってきた。
「美蘭、結構爆睡してたね。笑」
「めちゃくちゃ寝ちゃったよ。先生にバレてないよね…?」
1番後ろの端っこに座ってよかった。多分先生にバレてない。
「ただいま。」
「おかえり。」
「頭は?」
「まだちょっと痛いけどだいぶ良くなった!」
「そっか。」
ほくがすごく心配してくれている。
「はい、次は文化部の紹介をします。」
中学に比べて文化部だけでもいろんな種類の部活があるんだなぁ。
「はい、以上で部活動紹介を終わります。では、国際学科から順に教室に戻ってください。」
終わった。結構長かったなぁ。次の時間は何するんだろう?
「はい、みんな揃ったな。3限は、証明写真を撮るから、会議室に行ってください。終わった人から教室に戻って静かに自習しててな。」
証明写真を撮るのか。会議室にいかなきゃ。
「はい、じゃあ出席番号1番の人から撮りまーす。終わったら、速やかに教室戻ってください。」
『はーい』
「っあっ。ごめんなさい。」
ボーッとしてたら、前の女の子に当たってしまった。
「あ、こちらこそごめんね。」
「いえいえ。」
「私、りさです。よろしくね!」
「美蘭です!よろしくね。」
前の女の子、理沙ちゃんと話した。仲良くなれそう。
「美蘭ちゃんは、中学校どこ?」
「西中だよ」
「え!じゃあ、北斗くんと同じ?」
「ほく?うん、そうだけどなんで??」
「私東中なんだけど、北斗くん中学の時からめちゃくちゃかっこいいって噂されてたよ!」
「そうなの!?」
「美蘭ちゃんは、北斗くんと仲良いの?」
「うん。いいかな。家が隣なの。」
「え!羨ましい。もう、何人か北斗くんに告白したみたいだよ。」
「えっ!そうなの!?」
ほくがモテるのはしってたけど、そんなに…?てか、いつのまに告白されてたんだろう。全然気づかなかった。
「あ、次私の番だ。美蘭ちゃんまた話そうね。」
「うん!話そ!」
理沙ちゃんに続いて私の写真撮影も終わり、教室に戻って自習を始めた。
授業終了10分前。
なんかどんどん頭が痛くなってきた。さっき治ったと思ったのに。あとで保健室行こうかな。
チャイムが鳴る。
「よし、じゃあ、終わり。今日は弁当食べて帰りのホームルームして終わりだ。弁当は好きなとこで食べてくれ。」
『はーい』
「ほく、」
「どうした?」
「頭痛い…治んない…」
「保健室行こうか。弁当持ってきて。」
「結衣、ごめん、保健室で食べてくる」
「了解!美蘭大丈夫?」
「うん、なんとか。」
保健室へほくと行く。
『失礼します』
「あら、美蘭ちゃんと、北斗くん。」
この人は、保健の先生。入学前に2人のママと私達で一緒に事情を説明し、保健室にいつでも2人で来ていいよと言ってくれた。
「どうした?体調悪い?」
「はい。頭が痛くて。」
「そっか、熱はなさそうだね。入学式とか色々あって疲れちゃったのかな?とりあえず、お弁当だけ食べちゃおっか。そうしたら、ベッドで寝てていいよ~。」
『ありがとうございます。』
保健の先生も理解をしてくれて本当にありがたい。
「みぃ、食べれる?」
「うん。お腹すいた。」
頭痛いけど食欲はある。ご飯を食べて早くベッドで寝たい。
「ごちそうさまでした。ほく、ベッド。」
「はいはい。いこっか。」
ベッドは1人用だから当たり前に2人で寝ると狭い。でも、そんなこといってられない。
「みぃ、おいで。」
「うん。」
ほくのハグは安心する。
「ほく、ありがとう」
「うん」
「ほく、優しい」
「うん」
「ほく、告白されたの?」
「…うん。」
「断ったの?」
「うん。」
「そうなんだ。」
ほくが告白されてたのは本当だったみたい。すごい。
「みぃ、起きて」
「ん。」
「帰りのホームルームいけそう?」
「うん。良くなった!」
「行こっか。」
「先生ありがとうございました。良くなりました。」
「はーい、またいつでもおいで~。」
教室に向かって歩いているとやたら視線を感じる。みんなほくを見てる。でも女の子だけじゃなくて、男の子もこっち向いてる。北斗みんなに人気だな。
「美蘭、めちゃくちゃみられてるな。」
「え、ほくでしょ?」
「いや、男は美蘭みてる。」
「え、なんで?」
「さぁ。」
なんでみられてるんだろう。北斗の隣いるから?
「あ!美蘭きたー!大丈夫?」
「だいぶ良くなった!」
「良かった。もう聞いてよー。」
「どうした?」
「さっきね、何人かの男の子から連絡先聞かれたの!」
「結衣モテモテじゃん!」
「違うの、浮かれてたら、全員美蘭の連絡先目当てだったの。もう、嫌になっちゃう。」
「え?どうして美蘭の?」
「美蘭かわいいから、みんな狙ってるんだよ。」
「えぇ。そんなことないでしょ。」
「あるある、美蘭はもっと自分に自信持ちなよ。」
自信かぁ。全然ないなぁ。髪もほくに巻いてもらうくらい女子力ないしなぁ。
「美蘭ちゃん体調大丈夫?」
「理沙ちゃん、もう大丈夫だよ!ありがとう。」
「美蘭ちゃん、北斗くんと保健室いってたの?」
「うん。体調悪くてほくに連れてってもらった。」
「2人ってもしかして付き合ってる?」
「えぇ。付き合ってないよ。」
「そうなの?!ずっと一緒にいるから付き合ってるのかと思った。一体どういう関係なの?笑」
「幼馴染だよ。親同士が仲良くてほとんどずっと一緒にいるの。」
「そうなんだぁ。羨ましい。」
理沙ちゃんも北斗のこと気になってるのかな?ほくやっぱ本当にモテるなぁ。
「はい、じゃあホームルーム終わり。気をつけて帰れよー。明日テストだからなー。」
『はーい』
「結衣、理沙ちゃんばいばいー!」
『ばいばーい!』
「ほく、帰ろ」
「うん。」
「っあ。傘忘れた!!!今雨降ってる?」
「降ってるよ。なんで忘れたんだよ笑」
昨日雨降るから傘持ってこって言ってたのに、忘れた…。ほくが持っててよかった。
今日も疲れたなぁ。明日からテストで午後まであるし。がんばろう。帰ったら寝たい。
『ただいま』
「おかえりー!あれ、美蘭顔色悪いね。」
「うん、保健室でちょっと寝て良くなってたけど、また頭痛くなってきた…。」
「そうなんだ。ちょっと寝てな。また、夜ご飯の時呼ぶから。」
「はーい。」
ほくの部屋でまた寝よう。今日は、ずっと頭痛いなぁ。やっぱり、入学したてで疲れてるのかな。
「みぃ、おいで。」
「うん。」
どうしよう。めちゃくちゃ痛い。涙が出てきた。
「みぃ、どうした?」
ほくがめちゃくちゃ焦ってる。久しぶりに泣いてるからかな。
「痛い?」
ほくが優しく頭を撫でてくれる。その優しさにもっと泣けてくる。
「みぃ、ゆっくり深呼吸して。」
ちょっと、落ち着いてきた。でも、泣いたから余計頭痛くなってきた。すごい痛い。
「水飲む?」
「…うん。」
水がうまく飲めなくて、少しこぼしてしまった。ほくが拭いてくれる。ほく、お母さんみたい。
「寝よっか。痛いけど、横になって目つぶろう。」
「うん。」
ほくがぎゅーしながら背中をトントンしてくれる。
「北斗、美蘭、ご飯よー!」
「…ん。ご飯…?」
あの後、すぐ寝ちゃったみたい。
「みぃ、頭どう?」
「ちょっとマシになったかな。」
「そっか。ご飯食べよ。」
「ほくおんぶ。」
「はいはい、おいで。」
ほくにおんぶして貰って一階までいく。
「ほく、みぃ重い?」
「重くないよ。」
ほくは、やっぱり優しい。
ご飯を食べ終わって、お風呂も入ってあとは寝るだけなんだけど…。
「みぃ、頭痛い?」
「うーん。」
「どうする?今日はやめとく?」
明日のほくの映像を見ておかなくちゃ。映像で見えるのは、大部分が次の日なんだけど、そのまた次の日の朝まで見える。だから、明日の朝見ればいいんだけれど…。
「今日見る。明日の朝見たら学校行けなくなっちゃう。でも、体調悪いから怖い。」
明日はテストだから絶対休めない。だから、今日映像を見ないと。でも、体調悪い時に映像見るともっと体調悪くなって苦しくて、息ができなくなる。それが怖くて、見るのに億劫になってしまう。
「分かった。美蘭が準備できるまでずっと待ってるからいつでもいいよ。夜中でも。」
「うん。ごめん。」
「とりあえず、ちょっと寝る?」
「今寝たら、起きれない気がする…。」
「そっか。じゃあ映画でも見ようか。」
「え!見たい!この前借りたやつみよ!」
「そうしよっか。」
ほくが、映画を見ようって。嬉しい。
「みぃ、おいで。」
ほくの脚の間に入り、後ろからほくがハグしてくれる。映像を見るのが怖くてたまらないけどほくといると大丈夫な気がしてくる。
「美蘭ちゃん、えらいね。」
「馬鹿にしてるでしょ。笑」
ほくはたまに美蘭ちゃんって呼んでバカにしてくる…。もう。
「美蘭ちゃん、かわいいね。食べちゃおうかな。」
「やめて。」
ほくがたまにふざけてるとやっぱり北斗パパに似てるなって思う。笑
学校の子がふざけてるほくみたらびっくりするんだろうな。いつものクールなほくからは想像できないよね。笑
「美蘭ちゃんに彼氏できたらどうしよう?俺、死ぬ。いや、彼氏を埋める?」
「うるさいなぁ。映画集中できないから。」
もう、ほくがふざけるから全然映画見れない。
「美蘭ちゃんほっぺぷにぷに。」
「もー!やめてよ。」
ほっぺたをむぎゅーっとしたり、吸ったりしてくる。吸ったり…。ほっぺにちゅーしてくるというより、吸われてる…。
「かあーーーいい。」
マスコットかなんかだと思ってるよね。
「あれ。」
「どうした??」
「頭痛いの治ってる!」
「ほんと?」
「うん!今のうちに見よう。」
ほくがふざけてたら治ってた。すごい。ちょっと怖いけど今しかない。
「みぃ、おいで。」
「…うん。」
「っは。はぁ。ん。」
苦しい。息ができない。でも、いつもと同じくらいのキツさ。
「みぃ、吸って。」
「すぅーーー。」
「吐いて。」
「はぁーー。」
「どう?」
「うん、大丈夫。」
なんとか落ち着いてきた。
「寝よっか。おいで。」
「うん。」
「みぃ、ありがとう。」
「うん。」
「おやすみ。」
「おやすみ。」
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