ページ3 ドキドキ

 人生五度目の転校で天才が集まる城ヶ峰学園にやってきた三々樹謙介。今まで持っていた「天才」のイメージとは違い、優しく接してくれるクラスメイト達。生徒会長の仙巌道寺充の提案で放課後にみんなで学校案内をしてくれることになったのだが、食堂に着いた途端、紗倉がいきなりの告白!?。




「謙介君、私好きなんです。」


「えっ!?。」


ここに来て紗倉のいきなりの告白に慌てふてまくる謙介。


「好きなんです、ここのサンドイッチが。」


「ん?、サンドイッチ。」


妄想に浸っていたら現実に引き戻された。まるで気持ちよく空を飛んでいたら猟師に撃ち落とされた鳥の気分だ。


「はい、タベゴロの一番人気の城ヶ峰学園特製サンドイッチです。シンプルな素材なんですが懐かしさと暖かさを感じて好きなんです。」


「は、はぁー。」


突然の告白も自分への愛のメッセージでは無かったことに猛烈な残鶯を感じている今日この頃。


その後も学校案内は続いたがそれにしても広いところだなと改めて思った。学校案内は二時間にも及んだ。




―翌日―


「と言うことで三々樹氏には生徒会長に立候補してもらう事になった。」


登校してすぐに謙介が充に言われた一言。


「えっ?。」


「と言うことで三々樹氏には生徒会長に立候補してもらう事になった。」


「二回も言った。」


彼の言っている事がよく分からなかった。疲れているから聞き間違えたのかな。


「今、生徒会長に立候補って言った?。」


「あぁ、そう言った。」


『色々ツッコみたい箇所が多すぎて思考回路がショートしそうだ。なぜいきなり僕が生徒会長に立候補する展開にいつなったんだ。』


「いや、無理だよ。僕、誰かの前に立って何かをするのって苦手だし、第一人前が苦手なんだよ。」


そう僕は人前が苦手だ。それは多くの現代人に当てはまることだと思うが、僕はそんな中でも群を抜く人見知りだ。運動会や体育祭もあまり人と関わらず、目立たない競技を選んでいたし、文化祭もステージ発表には参加せず、大道具や小道具なんかの裏方に徹していたくらいだ。そんな僕が生徒会長なんて無理に決まってる。


「いや、三々樹氏は自分のことをわかっていない。三々樹氏にはまだ見えていない可能性があると私は思っている。」


僕に見えていない可能性?そんなものある訳ないだろ。


「それに君とは良い戦いが繰り広げられそうだ。」


僕は彼のその一言に疑問を感じた。


「それってどういうこと?。」


「それについては俺から補足させていただきます。」


謙介達の話を聞いていた道義が横から割って入ってきた。


「実は充は一年生の頃から生徒会長戦に出馬していて今の所二戦全勝の記録を持っているんだ。」


道義の説明に瑞帆も付け足す。


「うちの学園は新学期が始まる四月に生徒会選挙が行われるんだけど会長一名、副会長二名、議長一名、書記二名、会計二名、会計監査二名の合計十名で構成されてるんだ。」


「その中でも学園開校以来毎年会長への立候補者が必ず二名いて決選投票になるのがうちの伝統なんだ。」


四月に生徒会選挙が行われるなんて珍しいな なんて思っている場合じゃない。


「それはわかったんだけど、なんで俺が生徒会長に立候補することになってんの。」


謙介の一番の疑問に充が答える。


「それはだな、三々樹氏。君が推薦されたからだよ。」


『誰かわかんないけど何してくれてんだよそいつ!』心の中でそうツッコむ謙介。


「選挙に出馬するには立候補又は推薦者公認による推薦候補の二つの方法がある。三々樹氏は推薦候補で選挙に出馬することになった。」


転校してきてまだ二日目の謙介を誰が推薦したんだと疑問に思う。


「推薦したのはもちろんこの俺だ。」


『お前何してくれてんだよ!』再び心の中で充にツッコむ。


「なっ、なんで僕を推薦したの?。」


「それはもちろん君と戦ってみたかったからだよ三々樹氏。」


なぜそこまで誰かと競いたいんだこの人は。真面目すぎるが故の彼の本心がよくわからない。


「まさか、過去の選挙も無理やり誰かを推薦して競ったの?。」


「おーさすが三々樹氏、察しが良いな。その通りだよ。」


その無理やり推薦させられた人はさぞ地獄だったろうにな。


「ちなみに一度出馬を申し込んだら取り消しはできないからそのつもりで。」


いや、嘘だろ!。生徒の主張をガン無視した成約だな。


「出馬するにあたって応援演説をする相棒を見つけないといけない。」


人の話を聞かずにどんどん進めていく充。


「ちなみに私の相棒は西條君だ。」


よりにもよって道義君が相棒なんてこれもう積んでるじゃん。


「はっ!」


危ない危ない、仙巌道寺君の熱意に押されて僕も勝つつもりになっていた。ここは負けた方が良いから程よく、適当に。


「三々樹氏、やるからには全力で戦おう。」


そういう訳にもいかないみたいだ。謙介が応援演説を誰にしようか悩んでいると紗倉が手を上げてこう言った。


「はい、私謙介君の相棒やります。」


―To Be Continues―






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