桜の子

エレジー

第1話 エピローグ

私は、16歳の頃から夜の世界に出入りしていた。



なので、同い年の友達は、私はとっくに経験済みと思っていたのか、いろんな恋愛相談なんかをしてきた。



でも実は、キス以外は未経験だった。



夜遊びしてた割には、考え方が古風だった私。



付き合って1か月くらいでキスをして・・・なんて考えなので、それまでに別れたりしていた。



キスにたどり着いたのも17歳。



それも、先輩に連れて行ってもらった近所のスナックのホステスさん。



「今日はホームランやわ!お姉さんと付き合わない?」



私についたホステスさんは、私の耳元でセクシーに囁いた。



そのホステスさんは、私より10コ上の27歳。



なぜか“ホームラン”という表現が強く印象に残った。



多分、客層を見ても、ジジイばっかりだったので、ピッチピチの17歳の少年が来たら、そら、年下キラーの女性だったら、たまらんだろうと思う。



単純にとても嬉しかった。



電話でのやり取りの後、デートすることに。



私は、ある施設に預けられていたので、普通の高校生のように、日曜日などの休日はなかった。



学校がない日でも、電話番、仕事等、日中の休みはなかった。



ホント、今の時代じゃ考えられない。



なので、私の自由時間といえば、学校から帰ってきて、夜10時くらいまで仕事をし、そこから朝6時までの間。



だから、自然とデートも夜。



待ち合わせ場所に現れたホステスさんを見て驚いた。



店の中は薄暗くてわからなかったが、スゴい厚化粧だった。



予約していたオシャレなダイニングレストランで夕食をとり、カラオケのあるバーに行った。



そして、そのホステスさんの家の側まで送った時に、いきなりキスをされた。



ホステスさんの荒い息遣いとヌメヌメとした粘膜の印象しかなかった。



こんなもんか・・・。



その後は、続かなかった。



私は、プロボクサーになる為の練習に明け暮れていたので、童貞を卒業するとかは二の次だった。



19歳でプロになり、無事にデビュー戦もKO勝ちし、ふと考えた。



20歳を目前にして、まだ、童貞・・・これはカッコ悪いな。



そう考えだすと、それまでの古風な考えだと、20歳を越えてしまう・・・。



私は、一大決心をした。



当時、テレクラがはやっていて、私も興味があった。



勇気を出して、1人で行ってみた。



東京の池袋にあるテレクラ。



狭い個室に入ると、無機質に置かれた電話とソファーだけ。



読む気もなかったけど、受付にあった雑誌を手に取った。



客が多いのか、電話が鳴っても、すぐ取られてしまう。



本で調べていた通り、受話器を取り、フックを定期的に押したり離したりした。



カチャ・・・カチャ・・・カチャ・・・カチャ・・・アっ!



慣れないと、せっかく電話が取れても、惰性で押してしまい切ってしまうという自爆。



しかし、人間、順応性があるもので、しばらくすると慣れてきて、何本か取れ出した。



最初の頃は、せっかく繋がっても、ガチャ切りされたり、話しの途中で、何の前触れもなく切れたりと訳がわからなかった。



そして、1人の女性と繋がり、会話もテンポよく、適度に笑いもとれ、会う流れになった。



池袋駅の側にある高島屋のライオン像前で待ち合わせた。



別に、自分に自信があるわけではないのだけれど、先に待っているから、顔を見て気に入らなかったら帰っていいよと誘った。



その方が、女性も安心するだろうと思ったからだ。



「あの~コブシさんですか?」



待っていた私に、1人の女性が話しかけてきた。



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