何らかのキノコ

エレジー

第1話

若かりし20数年前のプロボクサー時代の話。



ジムに近いからと、東京都足立区のとある治安があまりよろしくない地域に住んでいた。



夜になると族車はうるさいわ、ヤンキーがやたらうろついていた。



住んでいたアパートから駅までなかなかの距離があったので、自転車でバイトや学校に通っていた。



そんなある日。



電車に乗る為に自転車で駅まで行った。



肉体労働系のアルバイトを終え、そのままジムでハードワークをこなし、ヘトヘトになって駅に着き、自転車に向かった。



いつも止めている公園の横の電柱の側。



街灯に照らされている愛車のフォルムがなんかおかしい。



近付くにつれ、その全貌が明らかになる。



私は愕然とした。




















サ、サ、サドルがない!!




















めちゃくちゃ疲れていた私。



とても歩いて帰る気分にはなれなかった。



の、乗らなしゃーないか・・・



私は意を決して、サドル無しの自転車に跨がっ・・・いや、跨がったら刺さる!



私は寸でのところで、気付き立ち漕ぎで走りだした。



ってか、これ何の罰ゲームやねん!



歩くよりシンドイわ!



とまぁこんな地域だった。



私が住んでいたのは2階建ての古い木造アパート。



1階に3つ、2階にも3つ部屋があった。



私の部屋は1階の1番奥。



真ん中は1度も会った事はないんだけれど、やたらと女を連れ込んでは朝の3時や4時からアンアンおっ始める。



私は、試合1ヶ月前から禁欲生活に入る。



壁が薄いアパートでアンアンやられた日にゃ・・・どんだけ股関に手を伸ばそうとした事か・・・。



でも、試合に勝つ事とオ〇ニーを天秤にかけたら・・・自ずと試合に勝つ事が優先だから、生殺しのような時間だった。



そして、その隣には、これまた何人家族やねんというくらい子供が6、7人いた。



2階には多数の中東系の外国人が3部屋とも住んでいた。



夏場なんかジムの練習が終わり、夜9時半くらいに帰ってくると2階の窓からその外国人がジッとこちらを見ていた。



コンバンハ!と片言で言ってくる事もあれば、無言でジッと見てくる事もあった。



(こえ~よ!)



内心気持ち悪かった。



そしてある夜、私がいつものように練習が終わり部屋に帰って数分経った頃。



時間は22時前くらい。



コンコン!



ドアを叩く音。



(誰やねん、こんな時間に。)



ガチャ!



私がドアを開けると、2階の180㎝くらいの外国人が1人立っていた。



私は一瞬身構えた。


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