雪の降る山荘

主道 学

第1話

 シンシンと雪の降る闇夜に男女が歩いていた。

 ここは山奥で、二人は暖を取れるところを探していた。


 男は空腹だった。


 女の方は足早に暖を取れるところを探している。



 やがて、二人は心底疲れた様子だったが、無事に寂れた山荘を見つけた。


「いらっしゃい。こんな夜更けに来てくれてありがとう。でも、何もないところだけど、暖は取れるから」 

 二人を山荘のオーナーが出迎えてくれた。

 

「何か食べ物を」


「……そちらの方は?」

「油揚げでいいわ」


 女の方はあまりお腹が空いていないのだろう。


 二人は部屋を借り二階へ上がると、階段横にある窓に目を止めた。凍てついた外は、今も雪が降りしきっている。


「丁度、こんな日だったわね」

「ああ……」

「村には随分と反対されたがね」

「とにかくこの山を越えれば」

「ああ……」


 二人はビュウビュウと風の音が鳴り響く廊下を渡り。

 202の部屋番号を確認した。


 部屋はこじんまりとしているが、暖を取るには申し分なかった。


「あなたに会えたのは、本当に良かったことなのかしら?」

「それは、ぼくもわからないんだ」


 会話が途切れた。

 二人はしばらくの間。

 何も喋らなかった。


 202の部屋のドアがノックされる。

 オーナーが食事を持ってきてくれたのだ。

「生憎と、食料は備蓄のものしかないんだ」

「構いませんよ」

「そちらの方にも良いかと……」

 盆には、赤いきつねが二人分載っていた。


「ああ、一つ言い忘れいた。この山にはなんでも狐が化けた美しい女の人が彷徨っているんだって。ただの迷信だと思うけど、その化け狐には用心した方がいいかも知れない。噂だけど、人に嘘を吐いて道に迷わしてしまうんだって」


「ええ。でも、その逆よ」

「ぼくにとっては、命の恩人だったな」


 

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