⑷ 希望への現実

「社長、もう原料に混ぜ物をするのを止めませんか。店舗当たりの客足もだんだん落ちてきているんですよ。このままじゃ」


「何を言っているんだ。大町君。指定原料もちゃんと使っているじゃぁないか。売上だって伸びているし、第一、あそこの原料だけじゃあ、もう足らなくなるんだぞ」


「しかし、確実にお客様の声としては、味が前に比べておちたという意見が多いのです。リピート率が下がる一方です」


「客足が落ちているのは、他に原因があるのじゃあないかね。それを防ぐのが君の仕事じゃないか。最近の新商品に魅力がないせいもある」


 俺は、直談判にきたのだが、とりつく間もなかった。それに、麗子との離婚のこともあって、印象も悪かった。


 その日の午後、辞令が貼りだされた。予期していたが、早すぎる。全店の中で最低の売り上げを記録する店への移動だった。しかも、今の倍の売り上げにしろとのおまけ付きだった。まわりの仲間たちは、同情と励ましを言ってきた。麗子との離婚のこともみんなは知っているので、あまり、深入りはしないだろう。だけど、この状況は以前にもあったような気がしていた。


 とにかく、独りで会社を出て、居酒屋で考え込んでいた。「間違ったのか、俺は。どういう立ち回りが良かったのか」

 理恵のことも考えていた、どうして昨日から一緒にいるんだろうと。その居酒屋を出て何軒かまわったと思う・・それで、この公園にきたのだが・・・


- - - - - - - - - - ★ ★ ★ - - - - - - - - - -

 黒猫がどこからか現れて

「夢を見てきたか、それを現実にして、これからも生きていくんだぞ、新しい日常が待っているからな」


- - - - - - - - - - ☆ ☆ ☆ - - - - - - - - - -


エピローグ


俺は、寝込んでしまっていたみたいだ。


「新一さん、新一さん、大丈夫? 起きて! 探したわよ。こんなところで寝込んでしまって。赤松社長から私に連絡があって、中野社長に辞表を出させるって、あの件のことよ。それで、明日、新一さんを連れてこいって。会社のことはあなたに全部まかせるつもりだって。社長は親会社の赤松社長が自分がやるんだって。私にも、執行役員としてサポートしろだって。それと、私達、早く結婚しろ、仲人してやるからってだって、良かったわね」


 一気にしゃべってこられて、あんまり理解できなかったが、理恵とは、まだ、 俺は  結婚してなかったのか あの猫も夢だったのか


 完

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

黒猫現る 少しの夢を見させる 青年編 すんのはじめ @sunno

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る