義足の太朗

@musa9

第1話


太朗くんは事故で片脚とお母さんを失ってしまいました。

お母さんはとても優しい人でした。

でも、新しい義理の母はとても片脚の太朗くんに厳しい人でした。いつも片脚の太朗くんを罵倒したり折檻したりと、それはもう目も当てられません。


ある日、片脚の太朗くんがおうちで留守番をしているとセールスマンがやってきました。


ドア越しに片脚の太朗くんが言いました

どなたですかー?親ならいませんよー。


セールスマンがこう言った

私が売るのはあなたの未来です。きっと喜んでいただけること請け合いです!


ちょっと何言ってるかわからないけど、とりあえずドアを開けてみた。


すると現れたのは、いかにもセールスマンと思しき姿の卓越したセールスマンでした。


ママとパパはいつ帰ってくるの?1人で淋しくなーい?今おじさんねー、皆んなのおうちを一軒一軒まわってるんだよねー、とニコニコ顔で卓越したセールストークが始まりました。


片脚の太朗くんは少し恐怖心をいだきましたが、勇気を出して聞いて見ました。


おじさん未来を売ってるんでしょ?僕にもその未来ちょうだいよ!


片脚の太朗くんと卓越したセールスマンの交渉は3時間にも及びましたが遂には卓越したサラリーマンが折れ片脚の太朗くんに未来を格安で譲ることになりました。


片脚の太朗くんは大喜びです。

譲り受けたのは、なんと太朗くんにピッタリフィットの義足だったからです。


涙を堪えながら去るセールスマンと入れ違いに厳格な義理の母が帰ってきた。


厳格な義理の母が義足の太朗を見るなり怒鳴り散らした。


太朗!あんた勝手にそんなもの買って!そんなお金があるなら日頃の感謝にサザエのおはぎでも私に買って来なさいよ!

義足があるんだからもう1人で行けるわよね、早く行きなさい、遅くなったら怒るわよ!


義足の太朗は家から締め出されてしまい、トボトボと歩いてサザエのおはぎを買いに行きました。


そうだ今日は優しいお母さんの命日だ、優しいお母さんにも買って行こう。


義足の太朗くんはサザエのおはぎの詰め合わせを2つ買い家路に向かいました。


義足の太朗くんが帰る途中、道端で白い犬がその場でたたずんでいました。どうやら誰かを待っているようにも思えます。


義足の太朗くんは優しいお母さんのことを思いだしました。


太朗、野良犬には気をつけてね、近づいちゃ駄目よ、危ないから。


義足の太朗くんは気づかれないようにそっと通り過ぎようとしましたが、義足の太朗くんは見てしまいました。その白い犬はなんと片脚が無かったのです。


義足の太朗くんは再度優しいお母さんの言葉を思い出しました。


太朗、人や動物には優しくするのよ、何か困っていそうだったら助けてあげるのよ。


義足の太朗くんは悩みましたが、白い犬に近づき自分の義足を白い犬に付けてやりました。


白い犬はとても喜びました。おはぎをひとつ食べさせてみると、犬はさらに喜びました。


片脚の太朗くんは這いつくばって帰るしかありません。早く帰らないと厳格な義理の母に折檻されてしまいます。


片脚の太朗くんは急ぎます。

すると白い犬が片脚の太朗くんの後をついてくるようになりました。


その忠実な犬は片脚の太朗くんを主人と認めたようです。


片脚の太朗くんがほふく前進を続けていると、道端でうずくまる猿がいました。


片脚の太朗くんはうずくまる猿に近づき様子を伺っていると、急に暴れはじめました。


どうやら片脚の太朗くんの腰あたりにあるサザエのおはぎが目当てのようです。


片脚の太朗くんはおひとついかが?と差し出すと荒ぶる猿はサザエのおはぎ一箱を全部とって食べてしまいました。


ガッカリした片脚の太朗くんは涙を浮かべながらほふく前進を続けます。


荒ぶる猿はなんだか申し訳なさそうな表情で片脚の太朗くんと忠実な犬の後ろをついてきました。


すっかり夕暮れです。折檻確定です。今日はご飯抜きかもしれません。


すると、そこに見慣れた鳥がこちらを見ていました。


鳥さんごめんねもうサザエのおはぎはもうないんだ、と片脚の太朗くんは猿の方をチラッと見ました。


申し訳なさそうな猿が申し訳なさそうにしています。


見慣れた鳥は何かを察したかのように片脚の太朗くん、忠実な犬、申し訳なさそうな猿の後に着きました。どうやら見慣れた鳥は空気を読む鳥だったのです。


外はすっかり暗くなり、ようやく家の玄関にたどり着いた、その瞬間、鬼の形相をした義理の母が現れました!


太朗!オマエ何時だとオモッテルンダー!私のサザエのおはぎはどこだー!ハヤクヨコセー。


片脚の太朗くんは身震いし身体が動きません。

でも仲間たちが一緒です。太朗くんは勇気を振り絞って叫びました。


このサザエのおはぎはお前のなんかじゃない!優しいお母さんのだ!!


その時、背後にいた、忠実な犬、申し訳なさそうな猿、空気を読む鳥が一斉に鬼の形相の義理の母に飛び掛かりました。


ワンワン!

ウッキー!

チュンチュン!


ギャー、私は動物の毛アレルギーなのよー、タスケテー。


鬼の形相の義理の母は一目散に岡山の実家に帰りましたとさ、


めでたしめでたし





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