第19話 初代たち⑨
AYAは、表では、かりんとは今まで通りに普通に接していた。
かりんは、あまりSNSには現れないようにしていた。葛藤があり、平然とAYAや他のフォロワーたちと絡むことが難しいと感じていたからだ。
勘の良いミイミが、かりんにDMで何かあったのか、と探りを入れたのは、木曜日のことであった。
「『ねえねえ、何かあったの?昨日も一昨日も来なかったじゃない。AYAと関係ある?』」
鋭いところを突かれて、かりんはミイミに全て話してしまおうか、どうしようかと咄嗟に悩んだ。
悩んでもあと一日でAYAと共に行動するか否か返事をしなければならない。日曜の開催で、土曜には待ち合わせの連絡を取りたいと思い、金曜日に返事をすると言ったのであった。
自分の心をどうやったら見抜くことが出来るのだろう。かりんは、土曜に待ち合わせ時間や場所の連絡を取りたいと思っていたのだから、AYAと一緒に行きたいのでは?でも、それはAYAが女の子だと思っていたからで……と、自問自答を繰り返している。
「『あのさ……ミイミはどう思う?AYAって女の子だよね?……男の子じゃ……ないよね?』」
かりんは、本人から正直に告白されたのにも拘わらず、頭の片隅で疑っていた。それなので、まだ悩んでいる最中であるのだ。
「『え~っ!AYAが男~!?』」
「『ミイミはどっちだと思う?』」
「『ちょ、ちょい待ち!AYAがネカマだっていうこと?』」
「『?ネカマ?って何?』」
「『ネット上で男性が女性のふりすることだって。えええ……AYAかぁ……?AYAが……?』」
「『違うの。ミイミはどう思う?って聞いてるだけなんだけど……』」
ミイミは、AYAが『自分』を使っていること、話をしていて違和感が無いこと、家事全般について詳しいこと、芸能人の噂話にも明るいことなど、SNSでやり取りしている自分との会話を思いだしていた。
「『う~ん……確かに『私』とは言わないけどさぁ、女の子だと思うよ。私は去年……いや、もっと前かな?相互フォロワーになったけどさあ、女の子と思って話をしてるけど。結構、あの子家事全般やってんのよ。私に◯◯くらいやりなさい!って上から目線で言うんだからぁ。無理だっちゅーの!てか、したくないし』」
かりんは、やはりミイミの言う通りにやはりAYAは女の子なのでは、と考える。
が、本人が制服は詰め襟だと話していた。それが嘘か誠か分からない。
「『なんで?どうしてかりんはAYAが男かもしれないと思ったん?」』
ミイミは逆に何故かりんがそう思ったのかが不思議だった。どこをどう捉えたら、男だと思えるのだろう、と。
「『え……あ、なんとなく、かな。AYAってどういう子かな、って思ったら、先月ここで知り合ったばかりだから……逢ってみたいけど、なんか、怖いかな、って。良く知らない子だし。初対面だし』」
「『そんなの逢ってみなくちゃ分からないでしょーが?私だってかりんと逢ってみたいよ~!関東住みでしょ?私も一応関東住みだかんね、みんなと行き逢いたい!』」
ミイミにそう言われて、かりんはハッとした。
リア友たちの中には、趣味レベルのオフ会を経験している者がいた。
それと変わりはないはずだと思う。女子であろうが男子であろうが、同じ受験生というカテゴリーの中の仲間同士である。
「『うん、私もみんなと行き逢いたい!逢ってみたい!そうだね、予行演習だと思ってAYAと一緒に大学に行ってこようかな』」
「『そうだよ、そうしなよ。もしかしたらさぁ、二人ともそこが第一志望になってさ、そんで合格したら同じ
「『そ、そんなの気が早いよ~!まだまだ絞り込めないから行ってみるんだもの。第一、合格出来るとは限らないし」」
「『何言ってんの。受かる気になんなきゃダメっしょ!例えばだって。人間の可能性は無限だからねぇ?何が待ち受けてるか、分かんないよ~!ホラ、私が実証済みじゃん?』」
ミイミの最近の不思議な現象体験について、かりんは薄気味悪さを感じていた。その本人が悩んでいることに比べたら、これくらいは悩む内には入らない。
「『そういえば、最近はどうなの?大丈夫?』」
「『あー、うん、落ち着いてるかな。有難う。まあ、ちょっと夢見が悪いくらいだけどねえ……』」
「『夢?悪い夢でも見るの?』」
「『うん、悪い夢っていうか、ヤケにリアル過ぎる夢なんだよね……起きてからどっちが現実か分からなくなっちゃうくらいリアルなの!もう、寝ても疲れが取れなくってさあ』」
「『え……若いのに……』」
「『ちょっとちょっと、そこ?疲れるのはリアル過ぎだからよ!老化じゃないって!おかんじゃないんだから!』」
「『だって疲れが取れないって言うんだもん。大変そうだな、って』」
「『取れないったらないよ~!二重の生活してるのと同じだもの。私の唯一の安らぎの時間が大学目指して勉強してる私が夢の中で勉強してんのよ!有り得ないっしょ!睡眠時間を返せ!って!』」
「『え……睡眠学習なの!』」
「『それな、睡眠学習じゃないから。それだったらいいけどさあ、全く知らない授業内容やってんのよ!無意味なんだよ!てか、私は短大か専門か迷ってんのにさあ』」
ミイミのリアル世界での奇妙な現象は落ち着いたというのに、今度は奇妙な夢が現れているという。
「『……なんだか、ミイミの方が大変そう』」
「『私もそう思う』」
「『頑張っ……てとは言えないなあ。うーん。気を確かに、も違うし?疲れが取れるといいね』」
「『ホント、勘弁して欲しいっちゅーねん!」』
「『お大事にね。明日はそっちに行くからね』」
「『そうして!なんかAYAが寂しそうだから。みんなから『かりんはどうした?』て質問攻めなんよ。私もだけどねえ?」』
「『ごめん……ちょっとね……でも、ミイミが来てくれたお陰で吹っ切れたよ!有難う!』」
「『あ、そう?悩んでたんだ?んじゃよかったよかった。じゃあ明日ね!」』
「『うん、有難うね!」』
かりんは、AYAと一緒にオープンキャンパスへ行ってみようと、この時決めたのであった。
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