第7話 変化
日々時間が過ぎ行く中、気付けば一学期が終わろうとしていた。
え、ミナミの恋は?試験は?って、
そんなにすぐには人の性格は変わらない。
ミナミが頑張って話かけるもタクトは返答するだけで、すぐに会話が終わってしまう。
そこへユキも参戦するが、結局はユキとミナミの会話に変わってしまうからだ。
教室で周りのみんなが試験の点数を競い合ってる中、タクトは気にとめることもなく一人の空間を作っている。
しかし、そんなタクトだが、すこしだけ変化が生まれてきた。
今までタクトはWEB小説を読んでいても楽しいや面白いなどの気持ちはあっても、小説の言葉に感銘を受けたことはなかった。
そんな中、一つの異世界物の作品に書かれている言葉を読んだ瞬間、胸が締め付けられ今までのことが走馬灯のように廻ってきた。
その小説の言葉にはこう質問されていた。
「何のために人は生まれてきたと思う?」
もちろんタクトも考えてみた。
「俺は何のために生まれてきたんだろうな?意味なんてあるのかな?それに、そんなこと言えばあいつなんか…、中学で事故に合うために生まれてきたとでもいうのか」
そんな思いが浮かんだ瞬間、タクトは拳を握りしめ目の前の机を叩いていた。
タクトがこんなに感情を表すなんていつぶりだろうか。
そんな感情の中、《条件付きスキル》の小説の続きを読んでいくとタクトの体は自然と力が抜け、椅子に背をもたれながら天井を見つめていたのだ。
その小説の言葉を噛みしめ、過去の自分、現在の自分、未来の自分の姿を考えた。
もちろん考えても結果なんてでない。でないからこそタクミはその小説の作者さんにコメントを送ってみたいと初めて考えた。
そう思いついた瞬間には、その作者さんに彼女の事故のことや自分の今の状況を打ち込み、コメントを送っていた。
翌日、学校が終わって電車の中でタクミは、コメントの返信がきていることに気付いた。恐る恐る作者のコメントの返信ページを開いた。
そして、そのコメントを読んだ瞬間にタクトは気付けば涙していた。
携帯の画面にはこう綴られていた。
「コメント有り難うございます。私の言葉が心に響いたと聞いて大変嬉しく思います。また、貴方や彼女の辛い話を記載していただき有り難うございました。
ここからは私の言葉ではなく、主人公のアスラン君の言葉として話をさせていただきますね。
貴方の彼女へ想う気持ち、彼女にも届いていると思いますよ。
事故にあって人生が終わってしまった彼女、時が経つにつれて普通は多くの人に忘れられていくと思います。しかし、貴方という人の人生を変えたという事実が、この世の理としてずっと残っていくでしょう。
そんな中、彼女が今の貴方を見たらなんて言うでしょうね?
《私のことをずっと想ってくれて有り難う》とでも言うと思いますか?
私は彼女のことを知りませんが、貴方が愛した方ならきっと心配するのではと考えています。
今の貴方は彼女に向かって胸を張れますか?
あえて僕は今の君にキツイ言葉を述べさせて下さい。
自分だけが辛いと思うな。その辛さを乗り越え、彼女に有り難うと言えるような素敵な男性になって彼女を安心させてやれ。
想いを紡いだ今の貴方は、彼女の一つの可能性を無にかえすのか?
将来、君は彼女がいたからこそ、こんな素敵な自分になれたって言う…可能性を。
最後に、もしかしたら彼女は僕と同じように異世界に転生してたりしてね…。
アスランより」
タクトは作者の言葉を噛みしめる度にとめどなく溢れる涙を拭いながら家に帰ったのであった。
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