幸せグラフ(桜ちゃんの証明)

@ramia294

第1話

「お父さん。恋愛って何?」


 お父さんに聞いてみました。


 私は桜。お父さんとは、血が繋がっていません。私のお父さんは、生まれてすぐに、事故で亡くなりました。そして、お母さんが、再婚。新しいお父さんが出来ました。

 私たちは、仲良し親子です。


 「恋愛の相談か?恋愛を分解すると、恋と愛だろ」


 お父さんらしい説明が始まりました。おそらくお父さんは、恋の経験は少ない。もしかしたらお母さんだけ?

 

「横軸に時間を縦軸に心拍数のグラフを作る。どんな人でも会う前後で心拍数は、上がる様に人間は、出来ている。心拍数の変化率が、最も大きい人が、そのうち桜にも出来る。たぶんそれが恋」


「ふ~ん。じゃあ愛は?」


「横軸に時間を縦軸は…。多分、一日の中でその人の事を考えた時間量のグラフを作る。相手と知り合ってから現在までのグラフの軌跡と横軸との面積の総和が、愛したという事かな」


「ふう~ん」


 お父さんの言う事の半分も分かりませんが、適当に返事しておきました。


「好きな人でも出来たかな?」


「ぜんぜん。でも友達との話題は、恋愛の話が多いの。興味があまり持てなくて。私って、おかしいのかなと思って」


「その気が無いのに、交際する方が、相手に悪いと思うけどね」


 お父さんは、モテなかった様です。

 話題を変えて来ました。


「例の物、試作2号出来たよ」

  

 私は、自転車で、通学しています。

 ここは、登り下りの坂道がある街外れ。

 お父さんの研究所兼我が家は、街の中心からずいぶん離れています。

 ペダルを踏むと、足が鍛えられるからと平気だよと言ってますが、真夏や、真冬は確かにたいへん。


 そこで、お父さんが作りました。


『ウキウキタイヤ』


 このタイヤは、自転車に装着、回転しだすと、重力から切り離されます。

 お父さんによると、登り坂を軽々走れるはずとの事。

 我が家の財政事情。

 電動自転車のバッテリーが、盗まれて以来

普通の自転車しか乗らないと頑張っている私のために作ってくれました。

 

 1号機の実験。

 悪い予感が、しました。

 お父さんが、自転車を漕ぎ出すと、自転車は、浮いてしまいました。どんどん漕ぐと、どんどん高くまで空に浮かびます。足を止めるとゆっくり降りてきます。

 

「キャ、ハ、ハ!」


 私は、大喜び。

 お父さんは、大慌て。

 ノンビリと春空を流れる雲も、ヒバリも笑っています。


 自転車は、上下しますが、前には進みません。

 大失敗。


 2号機が出来たようです。


『ラクラクペダル』


「ペダルは、動けば動くほど、軽くなっていく。これなら前に進む」


 お父さんは、乗ってみました。

 軽くペダルを踏み込むと、ペダルが、猛スピードで回転。自転車は、スタートダッシュ。

 前回の失敗を踏まえて、実験室には、マットがありましたので、助かりましたが、とても怖くて乗れません。

 またまた実験は、大失敗。


 私とお母さんは、無事だったお父さんの青い顔とケガの無い事を確認すると、こみ上げてくる笑いを我慢出来ませんでした。


 お父さんの作る物は、ほとんどが、失敗作。それでも懲りないお父さんを見て、私は育ちました。


 お母さんは、言いました。


「お父さんの恋愛論。恋は片思いも恋だけど、愛には、対象が必要よ。肝腎なところが抜けているわ。だいたい考えるって如何にもお父さんらしい。こういう時は、思う、相手を思うって言うのよ。あんな人だからね。これから大人になっていく桜が、足りない部分を見つけて教えてあげなさい」


 その時、私は、何の事だか、分かりませんでした。


「ウキウキタイヤ。もしかしたら売れるかも」


 そうつぶやいたお母さんは、さっそく誰かに電話をしています。


 それから、たくさんの大人の人が、我が家を訪ね、街の中心のもっと大きな場所に、お父さんの研究所兼我が家が、引っ越しました。

 





 



 









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