第22話 事情

 俺がその事を告げてから

「じゃあ、これからは出来るだけ感情を抑えない様に素で話そうよ」

「う、うん。頑張ってみる」

「でも…ランは貴族としての生き方しか知らないの?」

「ううん…多分、他の貴族と比べたら少しは平民と関わりがあるから…」

「あっ!!」

 町の人達を思い出しながら話してたら、アリーから驚いた声が聞こえた。

「?どうしたの?」

「いや、ランの事情を忘れてたの」

「あぁ、そんなの気にしなくてもいいのに…」

 アリーが罪悪感を感じた様にポロっと、口に出した後

「それに私にだっていろいろ事情があるから…」

 と、そんな事を言ってきた。それに気付いた時には

「あっ!!やっば」

 アリーの言葉に引っ掛かりを思い出して、

「…事情?」


 でも俺は何も聞かなかった風に装って

「なんだか知らないけど、言えるようになったら教えて」

「う…うん、いいの?」

 アリーの顔を見ながら

「だって、まだまだ言えない何かがあるんでしょ?」


「う…隠してる訳じゃなく、ランになんて言われるか不安なの。否定されるか受け入れてくれるか」

「なんで?それは聞いてみないと分からないよ」

「そ、そうだよね。もう少し気持ちが落ちついたら話すね」

 そんなアリーの不安そうな顔を見ながら

「分かった。覚悟が決まったら聞くよ」

「あ、あの…今は無理だけど宿に着いたら…」

「えっ!いいの?別に今すぐじゃなくても…」

「う、うん。この事はいつかはランに話さなきゃいけないと思ってたから…」

「…此処ここでは駄目っていうこと?」

 そんな疑問に

「誰にも聞かれたくないから」

「分かった、今は聞かないよ」


 その日の夜…、小さな町の宿で

「ここで平気?それとも、今はやめとく?」

「うん、多分この場所なら…それに今なら決心が鈍らないと思うから」

「じゃあ、アリーの事を教えて…」

 それから話し始め

「まず、私自身は純粋な人間ではないの」

「えっ!そうなの?」

「う、うん…私の母はエルフだから…人間とエルフのハーフなの」

 びくびくと俺の顔色を伺いながら、思っていた反応じゃなく目を丸くしていた。

「エルフって言ったら魔法が得意な種族だよね?」


「…まぁ、普通はそうだけど…普通はハーフでも魔法が使えるんだけど…私はハーフだけど魔法が使えなった」

「その事…父親は知ってるんでしょう?」

 俺は当然知ってると思いながら

「ううん、母が隠してたから…母自身エルフであることを嫌がってたから」

「もしかしてその目の色も…」

「そう、片目はエルフの色なの」

「…グリットさんもエルフなんだったら隠しても意味ないと思うけど…」

「母は小さい頃グリット叔父さんの家族に拾われたみたいなの」


「じゃあ、アリーの家族の中でその事を知ってる人は…」

 母親以外はいないってこと?

「グリット叔父さんは知ってるけど…後はいないかな…。父は魔法が使えない私は呪われてると周りに言ってたから…」

「母親は味方してくれなかったの?」

「うん…そもそも、種族が違うだけで迫害されるから。私も母も見た目は人間に見えるから良かったけど…」

 たからアリーは周りを警戒してるのか…

「ほら、エルフって耳が長いイメージがあるでしょう?」

「う、うん…」

「私も母も耳が人間と同じだから見た目では…ばれなかったの。まだ違う理由も有るけど…」

 最後の方は小声で聞こえなかった。

 その言葉を聞いて真っ青になった。そ、それって…ばれてたらどうなってたんだろう?


 


 

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